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【本誌アーカイブ】インタビュー 洋画家・絹谷幸二(vol.5)

撮影:藤田紘那

インタビュー 絹谷幸二 インタビュー&文 = 藤田博孝 2016年6月11日 発行『ONBEAT vol.5』掲載

2008年に35歳以下の若手芸術家を顕彰する絹谷幸二賞を毎日新聞社主催にて創設し、2010年には東京芸術大学名誉教授に就任するなど、近年特に後進の育成に力を注ぐ一方、自身の創作活動においては、ますますその独創性溢れる絵画表現を深化させている絹谷幸二氏。アトリエで熱く語られたその思いの丈を圧倒的な作品群と共に紹介する。

絹谷幸二インタビュー

こちらの先生の富士の作品の、画面からはみ出してくるようなエネルギーと色彩に目が釘付けになりますね。現代日本人の多くは古色蒼然とした色彩に日本古来の伝統を感じるのではないかと思いますが、絹谷先生の作品に溢れる色彩は、実は日本人の精神の古層に流れる縄文的エネルギーの発露であり、むしろこれこそ日本の色彩だと言いたいですね。

─そうなんです。要するに、鎖国をした徳川の軍事政権時代に日本人は抑えつけられた。いわゆる「徳川三百年」です。ちょっと前までの中国も国防色の服を着ていた頃は、抑えつけられていたわけですね。色彩を庶民に持たすと元気になるんです。だから徳川家も、自分の大奥は金襴緞子、襖絵は狩野派の金銀の絵、それから極彩色の日光東照宮とか。そういう色彩を徳川家は持っているわけです。ただし庶民はできるだけ地味にやれと。大体、軍事政権になると色彩を抑えるんですよね。北朝鮮も今そうですね。大体同じ服装をしていれば、誰でも個性がなくなって、鉄砲弾になりやすいんですよね。今でこそ、祭りというとのぼり旗を立てていますけど、徳川幕府はそれを禁止したんですね。神社でそれを許したのは深川神明宮と神田明神だけなんですよ。

《黄金背景 富嶽旭日・雷神(左)(風神)(右)》2015年


民衆が威勢よくやるのは駄目だということですね。江戸幕府は「鳴物停止令」という、打楽器など鳴物の使用を一定の状況下で禁止するお触れも発令していますよね。

─威勢よくやられると、(政権が)転覆させられるかもわからない。そういう(日本国民に対する)躾が三百年あるわけ。

三百年も続くと、その躾が沁みついてしまいますね。

─そうです。私も若い頃、東京芸大の学生の頃は地味な絵を描いていたんです。ただ、その後イタリアに留学し、街に色彩が溢れているのを目にした時、「青丹よし 寧楽の都は咲く花の 薫ふがごとく 今盛りなり」と、万葉の時代に歌に詠まれた自分の故郷・奈良の極彩色であっただろう姿が重なって、「イタリアと奈良って同じじゃないか」と思ったんですね。

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