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【本誌アーカイブ】長谷川祐子の「ハイパーサブジェクトアートレポート」 第三回 アートと新しいエコロジー(vol.15)

長谷川祐子の「ハイパーサブジェクトアートレポート」
第三回 アートと新しいエコロジー
2021年11月15日発行『ONBEAT vol.15』掲載

 

長谷川祐子

 

国内外のビエンナーレや美術館で数々の企画を手掛け成功に導いてきたキュレーターの長谷川祐子。「多くの主観が集まった複合的な主体、あるいは主題としてまとめ切れないほど変化流動するトピックを「レポートする」という長谷川の意図が込められたこの連載企画、その第三回は「アートと新しいエコロジー」を主題とする。  

 

Aki Inomata 《貨幣の記憶(カール・マルクス)》 2018年~(進行中) 真珠貝

 

マルチヒューマンな“未来支度”のために

この連載では、私が実際に関わる展覧会やプロジェクトを通して、サスティナビリティや、コロナ禍のネットワークでのコミュニケーションが私たちに与える影響、そして再び自分たちの身近なものを見直し始めた結果、ハイライトされてきた地産地消やコミュニティの新しい在り方など、ポスト資本主義の方向性について語ってきた。今の機会を捉えて、私たちはじっくりと、しかし少し急ぎ足で考え、アクションプランを立てていかなければならない。2020年12月から始まったという「風の時代」は、風通しの良さやフットワークの軽さで、私たちの変化へのターンを後押しをする追い風を吹かせてくれるのだろうか。そのとき私たちは、どこまでの未来を想定してプランを立てていけばよいのだろう。

最近、私が館長を務める金沢21世紀美術館で、2024年の開館20周年に向けて、各年の計画と方向性を決めた。日常の見直しであった今年に続き、来年度は過去や歴史から学ぶ Transhistorical。その翌年度は現在ある新素材やテック、ネットワークなどを駆使し、アーティストやクリエイターに創造を試みてもらう。これはエコシステムへの批判や可能性への挑戦を込めた現代版 「百工比照(ひゃっこうひしょう)」となる。そして2024年は、これらの準備過程をふまえて、今私たちを取り巻く新しい状況や環境—エコロジーの中でアートがどのように存在しうるか、変わりうるのか、関わりうるのかを問う総合的な「アートと新しいエコロジー」を見せる年となる。そしてそれは2004年に「21世紀の美術館」として生を受けたこの美術館が指し示すアートの未来のヴィジョンともなるはずだ。  

 

小野寛志 《明日の津波》 2020年

 

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