NOSTALGHIA 2017 神奈川県横浜市 撮影:白石隆治(STUDIO DIO)
日本の建築家 前田紀貞
文= 前田紀貞
2019年11月5日 発行『ONBEAT vol.11』掲載
絶えず優れた建築家を輩出してきたと言われる日本。そんな日本の建築家たちを紹介していく連載企画の第一弾は、「空気の質を計画(デザイン)する」という前田紀貞を紹介する。
建築の原理原則
昨今の成熟社会の中、物事の「原理原則」なるものへの希求は薄まり「感覚的判断」の方へ世の関心が振れているように思われます。建築界もご多分に漏れず、そこで「建築の原理原則」などと大上段に口にしてしまうことは、まるで時代遅れであるかのように受け取られてしまう節すらあります。
僕は学生の時分、「建築は職業ではない。生き様である」と叩き込まれました。もはや40年以上前のことでありますが、今でもその「原理原則」を愚直に守り続けていると信じています。真に豊かな建築行為というのは、派手な意匠を演じ上げることなどでなく、実は誰もが見飽きてしまったと思い込んでいる日常の取るに足らぬ出来事を、改めてキラキラな新品として感じられるよう世界を裁ち直そうとする、そんな魔法なのだということです。