Visiting Art Collectors
vol.05 神谷敬久
2023年10月31日発行『ONBEAT vol.20』掲載
注目のアートコレクターたちに話を聞く連載企画 “Visiting Art Collectors”。その5人目は、デザイン会社 SUPER PLANNING を立ち上げ、数々のポップな雑貨やキャラクターを手掛けてきた神谷敬久氏。影響を受けたポップアートの蒐集やギャラリーの運営にとどまらず、自ら現代アーティストとして活動する神谷氏に、言葉を越えたイメージの力について語ってもらった。
小学校低学年の時、親戚のお兄さんに連れられて『眼下の敵』という洋画を見て以来、欧米の文化が好きになりました。音楽でいえば、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・ バンド』や、リチャード・ハミルトンがジャケットデザインをした『ザ・ビートルズ』(通称:ホワイトアルバム)。こうして映画や音楽、アート、デザインを通じて欧米文化に傾倒するのですが、全てはテキストではなくイメージで捉えていました。私より上の世代は、辞書を引いて勉強して海外を知ってきたのだと思いますが、1960年代に学生時代を過ごした私たちの世代は、網膜からイメージをどんどん取り入れて欧米に憧れるようになった人が多いのかもしれません。それは結局アメリカの巧みなマーケティングなのでしょうが、戦後生まれの私たちには「鬼畜米英」の実感はなく、憧れでしかありませんでした。
1970年代にかけて、東京では川久保玲さんが原宿の「フリーマーケット HELP!」の中の小さなブースでお店を始めたり、倉俣史朗さんが当時青山キラー通りにあった EDWARD’S の本社ビルを手掛けたりと面白い動きがたくさん起きていました。私はアパレルセレクトショップの販促をやっていて、取引先だった Van Jacket や EDWARD’S には、錚々たるデザイナー・アートディレクターの方々がいました。そうした方々から学んでいく中で27歳の時に独立を決め、故郷である浜松でデザイン会社「スーパープランニング」を立ち上げました。