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【本誌アーカイブ】生駒芳子の服飾・芸術・伝統工芸 第一回 森 万里子(vol.20)

生駒芳子の服飾・芸術・伝統工芸 第一回 森 万里子 2024年4月19日発行『ONBEAT vol.20』掲載

 

 

 

生駒芳子はファッションジャーナリスト、アートプロデューサー、伝統工芸開発プロデューサーとして、ファッション、アート、伝統工芸、デザインから、社会貢献、クール・ジャパンまで、カルチャーとエシカルを軸とした新世代ライフスタイルを提案し続けてきた。さまざまなジャンルにおいて豊富な経験を持つ生駒ならでの視点で捉えた注目のクリエイターやトピックを紹介する新企画の第一弾は、アーティストの「森万里子」を生駒自身のインタビューで紹介する。

森万里子 photo: Kazuyoshi Shimomura Copyright Mariko Mori Studio


森万里子が見た「光」とは?


1993年、第45回ヴェネチア・ビエンナーレが開催された時、私はヴェニスを訪れ、日本館を代表する草間彌生を、オノ・ヨーコが訪ね、二人が握手を交わすという歴史的な対面シーンを目の当たりにし、ヴェネチア・ビエンナーレがもたらす魔法を感じたのだが、その機に、もう一つの魔法を目にしたことを忘れない。
ヴェネチアの島にはいくつもの橋がかかっていて、会場を回る際にそうした橋をいくつも渡るのだが、太鼓橋のように丸く膨れ上がったある橋を渡ろうとしたそのとき、橋の上に、一人の女性が佇んでいるのが見えた。日本人女性あるいは東洋の女性のようだが、とてもモードなファッションに身を包んで、宙を見上げるその眼はどこか遠くを見ているよう。まるで遥か彼方から降り立ったかのように、彼女は佇み、凛としたオーラを放っている。印象に残ったその人はその後、気鋭のキュレーターが主催するパーティでも何度か見かけた。
日本に戻ってから、まもなく、その人が森万里子というアーティストであることが判明した。私のパートナーで、インディペンデント・キュレーターの飯田高誉は、いつも新しい才能を発掘して展覧会で紹介する仕事をしているのだが、ある時、彼が海外の美術雑誌で発見した日本人女性の作家「森万里子」の記事を紹介してくれたのだ。そして彼女の初期の代表作のひとつ《New Collection》を見たとき、「あ、あのとき、橋の上に佇んでいた女性だ!」と記憶の中で印象が一致し、胸が躍った瞬間を今でも覚えている。
この時から4半世紀、今や地球を舞台にして活躍する森万里子が、今年ヴェネチア・ビエンナーレ開期中にふたたび降り立ち、最新作品を出展する。その彼女に、出発前に、貴重なインタビューをする機会を得た。

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