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【本誌アーカイブ】インタビュー 建築家・安藤忠雄(vol.7)

撮影:藤田紘那

インタビュー 安藤忠雄 インタビュー&文 = 藤田博孝 2017年8月25日 発行『ONBEAT vol.7』掲載

この秋、国立新美術館にて同館開館10周年企画となる個展を開催する安藤忠雄。個展タイトルの「挑戦」という言葉が示す通り、常に既成概念を打ち破るような斬新な建築作品を世に送り出してきた。半世紀に及ぶ挑戦の軌跡と未来への展望に迫る同展開催を前に、独学で建築を学び、遂には世界のANDOとなった稀代の建築家が、自身の原点と現在の思いを溢れる言葉で語った。

安藤忠雄インタビュー

安藤さんは、近隣のほとんどがものづくりの仕事に携わっている大阪の典型的な下町で育ち、小学生の頃から近所の木工所や、鋳造所、ガラス工場などを遊び場にしていたと聞きます。建築家・安藤忠雄の原点を垣間見るようなエピソードですので、その頃の話からお聞かせください。

─アメリカやヨーロッパから取材を受けるときも大抵同じ質問から入ります。つまり「なぜ建築家を目指したのか」という話ですが、私の育った下町には絵画や文学、クラシック音楽などはなく、日が暮れると仕事を終えた労働者の人々が演歌を聞きながらお酒を飲むといった環境で育ったものですから、私はおよそ文化的というにはほど遠い子ども時代を送ってきました。

Wall of Hope 希望の壁 2013 Osaka City, Osaka 大阪府大阪市 Photo: Courtesy of Tadao Ando Architect&Associates 写真提供:安藤忠雄建築研究所


本来、建築というのは非常におもしろい仕事です。ところが現代の建築現場は周りを養生シートで囲ってしまい何をやっているのかわからないから、子どもも興味の持ちようがない。しかし、昔は大工さんが建物を造るときには、土を掘る、基礎を作る、土台を作る、柱を立てる、壁を作る、屋根を作る、というプロセスが外から全部見えましたので、私は子ども心に大工という職業に興味を感じていました。一心不乱に働く姿を見て、大工というのは何かとてつもなく面白い魅力を持った職業なのかもしれないという好奇心が生まれたのが、その始まりです。有難いことに奈良には東大寺や法隆寺、京都には平等院や桂離宮など、関西には歴史的にも重要な木造建築が数多くあるので、実際に見て学べたことも大きかったと思います。あの壮大なスケールの建築を、あの時代に造った人たちがいる。今でいう現場監督にあたる大工の棟梁をはじめ、左官屋や石屋、また施主や出資者など、一つの建造物に対して関わった人が大勢いたはずです。建築には施工管理も必要だし、材料や工法の知識も必要不可欠です。私は東大寺に使用された巨大な木材や石材の産地、また運搬方法を知りたいと思い、独自に調べました。一つの建造物から資材選択の理由や運搬方法、建築工法などに思いが巡り、実際に建つまでの様々な工程のおもしろさを意識するようになりました。

Water Temple 真言宗本福寺水御堂 1991Awaji Ci ty, Hyogo 兵庫県淡路市 Photo: Courtesy of Tadao Ando Architect&Associates 写真提供:安藤忠雄建築研究所

しかし進路を決めなくてはならない中高時代には、将来建築家になるという具体的な決意はまだありませんでした。

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