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【本誌アーカイブ】林信之の「22世紀に残すべき価値」 第四回 伝統工芸進化を模索する最先端研究所のとりくみ(vol.20)

林信之の「22世紀に残すべき価値」
第四回 伝統工芸進化を模索する最先端研究所のとりくみ
2024年4月19日発行『ONBEAT vol.20』掲載

 

林信之

 

日本の伝統工芸は単に美しいだけが価値ではない。日本の歴史、文化、技術、美意識を体現してくれている貴重な存在だ。日本の陶芸を愛した元フランス大統領のジャック・シラクやスティーブ・ジョブズをはじめ、染織、漆器、金工、木工などどのジャンルの伝統工芸にも多くの海外のファンがいる。一方で「用の美」を追求し発展してきたにも関わらず、今日の生活習慣には合わず需要も後継者も不足し、長く衰退の危機にさらされてもいる。これまで事態を好転させようと、官民でさまざまな取り組みが行われてきたが、今回は最新テクノロジーで工芸に新たな息吹を与えようとする2つの試みを紹介したい。  

 

世界に影響を与えた伝統工芸

グスタフ・クリムトやエミール・ガレなど近代西欧の芸術家にも大きな影響を与えた日本の工芸は、今日でも世界の多くの人々を魅了してやまないが、1984年をピークに生産額は下がり、衰退の一途を辿っている。生活様式の変化や安価な類似品の普及、それに伴う市場の縮小、さらには後継者不足や技術・知識継承の難しさと言った課題に経済成長の低迷や2011年の東日本大震災、2024年の能登半島地震といった大規模自然災害が追い打ちをかける。

しかし、恵まれていることもある。陶磁器、染織、漆器、金工、木工を中心に、歴史ある伝統工芸がこれだけ豊富に残っている国は世界でも珍しい。それだけに海外にも日本の伝統工芸を高く評価し応援してくれる人が多い。 ・そのため国内だけでは支えられなくなった工芸品の魅力を海外に伝える取り組み、国内外のクリエイターと組んで新たな工芸品を生み出す取り組み、産地を盛り上げるイベント、クラウドファンディングのような作品作りに必要な資金を集める資金調達の取り組みなど、日本の伝統工芸を応援する官民学のさまざまな取り組みが日々行われている。

今回は、そうしたあまたある取り組みの中から、日本を代表する2つの研究機関による取り組みを紹介したい。  

 

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