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【本誌アーカイブ】長谷川祐子の「ハイパーサブジェクトアートレポート」 第五回 ブラックファンタスティック(vol.17)

長谷川祐子の「ハイパーサブジェクトアートレポート」
第五回 ブラックファンタスティック
2022年11月3日発行『ONBEAT vol.17』掲載

 

長谷川祐子

 

国内外のビエンナーレや美術館で数々の企画を手掛け成功に導いてきたキュレーターの長谷川祐子。「多くの主観が集まった複合的な主体、あるいは主題としてまとめ切れないほど変化流動するトピックを「レポートする」という長谷川の意図が込められたこの連載企画。その第五回は「ブラックファンタスティック」を主題とする。  

 

「ブラックファンタスティック」再考
アフロ・フューチャリズムの新たな発展系

近未来から過去を含めて全ての情報が目の前に広がっている現在、そして西洋近代という強固な文化のテンプレートがいまだはめ込まれたままの現在、未知のヴィジョンに向かう想像力はどのようにして奪回できるのだろうか?前回のヴェネツィアビエンナーレからガーナ館がクールだということは、うわさに上っていた。今回のビエンナーレのガーナ館に出品していたアフロスコープ(Nana Isaac Akwasi Opoku 以下ナナと呼ぶ)は同地出身のアーティスト兼デザイナーであり、アフリカ人としての多様な世界観と宇宙観に根差した作品を作っている。ナナはアフロフューチャリズムの風合いを持つシュルレアリスムのスタイルを特徴とする。表現行為を通して彼が目指すのは、植民地化されてしまった想像力を「脱植民地」化することだ。彼の詩はそれを端的に物語っている。

もし、自分が誰であったかを思い出したら、私たちは誰になれるのだろう? / もし、自分がどこから来たのかを思い出したら、どこに行けるのだろう? / もし、自分のさまざまな過去を知っていたら、どんな別の現実や未来を創造できるだろうか?  

 

Nana Isaac Akwasi Opoku 《We Smile Despite The Past We Carry》 Nana Isaac Akwasi Opoku 《Intergala Retribution》

 

本論で語るアートは「ファンタジー」が、植民地化されてしまい矮小化された想像力を拡張し、肥大化させる媒介、エネルギーとなることを実証している。作家のローズマリー・ジャクソンは、「ファンタジー」をリアリズムの境界を越え、生物と無生物、自己と他者、生と死の間の厳格な区別を払拭する形式であると説明する。彼女によれば幻想的なものは文化的秩序を元に戻し、再構成するものであり、同時に変化への暗黙の願望を表しているのだ。そこにあるのは「反転」であり、世界の構成を新しい関係に組み替え、明らかに新しい、「異なるもの」を作り出すことなのである。無論、芸術史の中で全く異なる世界観、夢幻的で特異な形態からなる超越的な視覚的物語を想像することで、既存の現実観を脱構築するということは何度も繰り返されてきた。特にここでアフリカが注目されているのは、彼らの世界観や宇宙観が多元的で、多様であり、遊び心に満ちているためである。優れた想像力は切羽詰まった緊張感のある時代のパラダイムシフトから生まれてきた。クロニクル時間軸で見れば16世紀、19世紀、1920年代、1960年代。ジオポリティクス空間軸で見れば、植民地支配や移動による文化の混交、リミックス、フュージョンなどである。

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