高橋龍太郎の「ニッポン現代アートの価値」第五回 草間彌生
2021年11月15日発行『ONBEAT vol.15』掲載
精神科医の現代アートコレクター、高橋龍太郎の収集したいわゆる“高橋龍太郎コレクション”は、今や現代アート界の大物となった草間彌生、村上隆、奈良美智らの貴重な初期作品や、後に代表作となった作品を多数含み、日本の現代アートを語る上で欠かせないものである。卓越した慧眼を持つ高橋がそのコレクションの逸品を語る本企画の第5回目は、草間彌生を紹介する。
草間彌生は闘い続ける
1998年、草間彌生の30年ぶりの油絵具によるネット・ペインティングの新作展に出かけた。それまでもネットの作品を描き続けてきたが、全てアクリル絵具によるものだった。草間にも60年代の油絵具の作品を復活させたいとの熱い想いがあり、単なる復刻以上に力が入った作品ができたと聞く。私はそこで作品《No.27》を購入した。その瞬間私には30年前の反体制運動に関わっていた大学時代の自分が一気に甦ったのだ。