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【本誌アーカイブ】高橋龍太郎の「ニッポン現代アートの価値」第六回 会田誠(vol.16)

高橋龍太郎「ニッポン現代アートの価値」第六回 会田誠
2022年6月21日発行『ONBEAT vol.16』掲載

 

高橋龍太郎 撮影:Elena Tyutina


精神科医の現代アートコレクター、高橋龍太郎の収集したいわゆる“高橋龍太郎コレクション”は、今や現代アート界の大物となった草間彌生、村上隆、奈良美智らの貴重な初期作品や、後に代表作となった作品を多数含み、日本の現代アートを語る上で欠かせないものである。卓越した慧眼を持つ高橋がそのコレクションの逸品を語る本企画の第6回は、会田誠を紹介する。

「社会的善よりも芸術的不真面目さ」

「処女作にはその作家の全てが表れる」という言葉がある。なかなか核心を突いた表現で作家の本質を言い当てているような気がするが、これを美術家に当てはめると何をもって処女作品にするかという困難も付きまとう。(文学者であれば「活字になった最初の作品」を処女作とするなど少しわかりやすい)

2018年2月「顔と抽象—清春白樺美術館コレクションとともに」というタイトルで私がキュレーションした展覧会が、清春芸術村の清春白樺美術館で開かれた。そのとき会田誠と対談し、抽象を巡る話になり、「自画像」というテーマを与えられた卒業制作の話になった。

会田誠は卒業制作として、4冊の新潮文庫をパネルに貼り付けて「自画像」として提出したという。後にメディアで卒業制作として、初心者レベルの作品がいつも紹介される恥ずかしさに耐えられないからこうしたと語っていたようだが、ここには、後にコンセプチュアルなアートを展開する会田の萌芽が見られると同時に巧みな自己韜晦の精神が溢れている。  

 

《笑顔》 1997年 高橋龍太郎コレクション

 

2012年森美術館で開催された「会田誠展:天才でごめんなさい」で展示された《自殺未遂マシーン》のとりわけこの子供用のバージョンを当時訪れたソフィ・カルがいたく気に入り、自分の作品と交換しようと提案したというエピソードを思い出す。外国人の評論家や作家にとって会田の描く絵画作品の多くは(特にその毒のある表現や少女愛の側面など)受け入れにくものだが、コンセプチュアルアーティストとしての会田誠はかなり評価が高いのだ。

今でこそ《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》《ジューサーミキサー》《大山椒魚》など会田誠の大作が私のコレクションの重要部分を占めているが、最初のコレクションは、ここにある《笑顔》という作品である。  

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