撮影:藤田紘那
絹谷幸二×土方明司 特別対談 文 = 藤田博孝 2019年3月20日 発行『ONBEAT vol.10』掲載
若くして頭角を現した絹谷幸二は、長きにわたり日本画壇を牽引し続けてきた。一昨年は京都国立近代美術館で大規模な個展を開催、昨年は日中平和友好条約締結40 周年を記念した個展を北京の清華大学芸術博物館で開催するなど、近年ますます活動の幅を広げている。本特集では絹谷幸二の秀作を、画壇からの信頼も厚い土方明司氏と画家本人との対談とともに紹介する。
絹谷幸二×土方明司 特別対談
土方:絹谷先生は、ご自身の天空美術館のほか、京都国立近代美術館や北京清華大学での個展、髙島屋での展覧会、北海道立近代美術館での展覧会など、本当に目覚ましい活躍をなさっていますが、先生の次から次へと新しいものを生み出していく創造力は、いったいどこから生まれるのでしょうか。
絹谷:やはり、私が生まれ育った奈良という街が関係しているように思います。奈良という古い都にいらっしゃる仏様たちの教えを自分なりに咀嚼して考えることは、私の創造の糧であると言えます。また、私は歴史というものは輪廻・循環しているように思うのですが、そうした「時の循環」について思いを馳せることも私の創造力の一助となっています。

《日月春春湖上富士》2018年
例えば私のライフワークの一つであるフレスコ画ですが、大変古い画法でありながら、現代にこそ必要なヒントが隠されていると思います。フレスコ画の原料である石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とし、その中に地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を抱え持っています。地球造山活動の頃に生まれた石灰岩が、何十億年も隔てた現代の地球環境問題を指し示し、また私たち人類に生存を保障しているのです。