市川透
全てにおいて破格な現代陶芸界のシャーマン
2023年10月17日発行『ONBEAT vol.19』掲載

《迦具土》 2023年
陶芸家市川透は、備前焼をベースにしながらも、良質な胎土に独自調合した鉱物と酸化金属を組み合わせ、色彩、造形、質感ともに破格な作品を創造する。市川は備前の土を通して森羅万象とつながり、そこで得たイメージを手練の技で具現化する現代陶芸界のシャーマンである。死を覚悟した武士の如く揺るぎない魂を持つ証として、「全てを貫く1本の線」が自身のトレードマークだと語る市川の、ある種サイキックともいえる制作の原点を、作家本人が語った。
はじめに一私にとって作品作りは、魂の叫び、私という存在の魂の叫びです。私の創作は、深夜、あたりの生活音と光が消えかかる頃、月と星の光、潮風の囁きを感じながら備前の胎土を原土から扱い、まずは土作りをするところから始まります。備前の土に手を入れた瞬間、土中に生きる微生物の囁き、思い、歓喜、叫びが波動となり、私の魂と宇宙を一体化していきます。目には見えないミクロの微生物の世界から。私が創作する場、近隣の山、海、そして地球、月、星、宇宙へと私の魂が森羅万象へと繋がっていく、そのような過程で宇宙の真理に触れ、インスピレーションを受け、私の作品は産声を上げていきます。

《spectacle》 2023年
中国の古代思想に『五行陰陽説』があります。火は燃えて炎となり、燃え盛った炎は灰となり、灰となったものは土となり、土に還っていく、その循環の中で我々は生きているという思想です。土と私の心は片時も離れることがなく、土を通して自身の生まれた理由、生きる意味、真実の愛、宇宙の真理を探索、希求し創作に全身全霊を傾けています。私の創作意欲の源は、土と自分自身が一つになれるところから全てが始まります。ある時期から肉を断ち、動物愛護、環境問題にも関心を持つようになった理由は、全てと繋がる土中で微生物が、日々私に伝え教えてくれる想いに寄り添った故です。これからも土と私の魂、宇宙の共作に終わりはなく、視覚的な美のみならず、宇宙の真理と共感共振し愛と調和の波動を感じて頂く作品を更に創作していきたいと思っております。明日は今日の積み重ねであり今日は過去の貴重な体験の積み重ね。これからの市川透は今までの市川透があってこそ。今の自身の魂の根源、陶芸家になる布石を少し遡らせていただこうと思います。