高橋龍太郎の「ニッポン現代アートの価値」第九回 大山エンリコイサム
2023年10月17日発行『ONBEAT vol.19』掲載
精神科医の現代アートコレクター、 高橋龍太郎の収集したいわゆる“ 高橋龍太郎コレクション”は、今や現代アート界の大物となった草間彌生、村上隆、奈良美智らの貴重な初期作品や、後に代表作となった作品を多数含み、日本の現代アートを語る上で欠かせないものである。卓越した慧眼を持つ高橋がそのコレクションの逸品を語る本企画の第9回は、大山エンリコイサムを紹介する。
QTSが次元をこえる
2013年3月、 東雲の印刷工場2階の巨大なアートスペース、TOLOTのオープニング展「トリックディメンション」が開かれた。 2023年の今、ここが開かれていれば、 「日本の現代アートを見る場所が東京にはない」
と嘆く世界のアートファンに格好の場所を提供できたであろうに、残念なことに今はなくなってしまっている。
その企画自体はかなり意欲的なもので、 大庭大介をキュレーターに、展示メンバーは金光男、 大崎のぶゆき、 小牟田悠介、 大庭大介、梅津庸一、村山悟郎、大田黒衣美、 大巻伸嗣、 松下徹、 多田圭佑、古畑智気、大
山エンリコイサム、 彦坂敏昭、池田光弘、 大野智史、佐貫巧、 高畠依子と10年後の今から省みても錚々たるメンバーで、もう一度見たくなるような展示だった。