奈良美智 Harmless Kitty 1994 東京現代美術館蔵 ©Yoshitomo Nara
鈴木芳雄の「知新温故」 第三回 芸術家と猫 2023年5月5日発行『ONBEAT vol.18』掲載
原因があって、結果があるというのが時間の流れだ。しかし、美術の歴史に限っていうと、新しいものが出てきて、昔あったものが評価されたり、新たな見方を発見したりするのが楽しい。20世紀のピカソがいなかったら、19世紀のセザンヌはこんなに評価されなかったかもしれないし、ホックニーの絵が好きになったことがきっかけで、彼より100年くらい前に活躍したボナールのことをもっと知りたくなる。時間を行ったり来たりするのは見る人の自由だ。さて今回は芸術家と猫から出発する
古今東西の芸術家たちを魅了し続ける“猫”
子どもらしくない子ども。奈良美智の描く子どもを大人たちはそう思って見ていないだろうか。子どもなのに機嫌が悪いとか。そりゃあ、子どもだっていつもいつもニコニコしていられない。子どもなのに反抗心剥き出しだとか。そもそも、社会の仕組みを作っているのは大人なのだから、子どもの側には言いたいことがあるのだ。逆に、自分が子どもだった頃、反抗したり、文句を言いたかったけれど、そんなことをすると叱られたり、そもそもうまく主張できなかったし、大人を言い負かせられなかったから、飲み込んでいただけなんだ、本当は奈良作品の子どもみたいにストレートに言いたかったよ、言うべきだったよと大人になって思った人が奈良作品を支持してる?