長谷川祐子の「ハイパーサブジェクトアートレポート」
第一回 ライゾマティクス
2020年12月22日発行『ONBEAT vol.13』掲載
国内外のビエンナーレや美術館で数々の企画を手掛け成功に導いてきたキュレーターの長谷川祐子。「多くの主観が集まった複合的な主体、あるいは主題としてまとめ切れないほど変化流動するトピックを「レポートする」という長谷川の意図が込められたこの連載企画。その第一回は坂本龍一やビョーク、Perfumeなどとのコラボレーションでも知られる「ライゾマティクス」を主題とする。
ヴァーチャルとフィジカルの入会地(コモンズ)を求めて:
ライゾマティクスの挑戦
今回は連載 「Hyper Subject Art Report」 の最初の回である。 Hyperという言葉を編集部からリクエストされたのに応じて、hyper objectといエコロジー理論(環境哲学者ティモシー・モートンによる)の用語に インスパイアされている。Hyperとは超えるという意味で、hyper object 私たちの知覚能力を超えて存在する物質一放射能汚染やマイクロブラスティックなどを指す。一方Subjectは主題や主体を指す。それを超 えるとなると、神の視点ではなく、多くの主観が集まった複合的な主体、あるいは「主題」としてまとめきれないほど変化動するトピックなどというイメージをこの言葉に込めてみた。
今VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代にあって、COVID-19はそれに追い打ちをかけている。私たちは先が見えずまごついている。そこにあって、今まで堂々とまごついていたもの、曖昧さや複雑さをその本質としてきたのがアートなのである。