2023年12月9日(土)~2024年5月25日(土)まで、MYD Galleryにて瀧本幹也(写真家)× 山口誠(建築家)の展覧会「MONOSPINAL」が開催!

MONOSPINAL(モノスパイナル)ー。
山口誠の設計によって東京・浅草橋に姿を現したこの建築は、外観を9層の斜壁に囲まれ、中の様子を窺い知ることはできない。空へと向かって広がる逆勾配型の斜壁は、高架線路や雑居ビルが密集する街において周囲からの音、光、風をコントロールし、建築に高い自律性をもたらしている。

瀧本幹也は、この容易には説明し難い建築を見たとき、自らの写真で捉えてみたいという衝動に駆られたという。MONOSPINALが持つ幾何学的な線と面に着目し、それを手がかりとして、4×5インチフィルムの大判カメラで切り取っていくことを試みた。本展では、そこで生まれた10点の写真作品を掲出する。

“部分” にフォーカスしたこれらの写真は、情報が削ぎ落とされ、無機的に描かれた絵画のようである。しかしよく見ると、撮影時に緻密に計算された光の影響で斜壁の質感が残されており、それが生きている建築であることを教えてくれる。

建築を撮るという行為は、建築家が二次元から三次元に起こしたものを、再び二次元に変換する作業だと瀧本は語る。そのとき、写真家の建築への眼差しが表れる。本展を訪れた人は、建築家と写真家の関わりによって再構築されたもう一つのMONOSPINALに出会うことになるだろう。

僕は瀧本さんの写真のファンで、瀧本さんの展示はだいたい見に行っています。《SURFACE》という海の波の引き際を撮った素晴らしい写真があるのですが、その写真を僕自身も所有させていただいています。今回撮っていただいた建物が今年の7月にできたときに、瀧本さんにお声掛けをしたら興味を持ってくださって、撮っていただけることになりました。僕としてはファンだった瀧本さんに撮っていただけて、すごく幸せだなと思っております。こういう機会を得て、皆さんに見ていただけるいい機会ができて良かったなと思っています。

建築家:山口 誠

建築家は図面から3Dに起こす仕事をされているので、いつもそれが羨ましいというか、立体的に何かしたいなっていうふうに思うことも結構あるんです。残っていくものを作れるっていうのは憧れでもあります。建築家の頭の中にあるものを掘り出そうみたいな感覚で撮っています。
まだ途中段階でしたが一度7月に建築中の建物を浅草橋に見に行きました。最初見たときの奇抜なデザインで、他でこういった建築物は見たことがなかったので、ちょっと度肝を抜かれた感じがしました。昔バウハウスを撮った時の手法を取り入れて、新しい軽やかな感じで撮ってみようかなと思いました。斜めのラインが揃ってるなど説明を聞けば聞くほど建築的じゃないというか、グラフィックデザインみたいな感じで、このサイズでこれだけのクオリティを出すというのは、かなり異常なことをやってるんだなと興味を持ちました。なのでデジタル的でないとこうはできないなと思いました。撮影もデジタル処理は一切せず、全てアナログでいこうと思いました。建物自体は、ぱっと見はデジタルっぽく見えるのですが、実はすごく職人芸というか、そういう気概を感じました。

写真家:瀧本幹也

上から見ると四角形の建物ですが、東面と南面の壁の長さが違います。これはアルミの押出で作っている板で、全て85mmなんですが、右が15mm。あわせて100mmが基準になっています。東面と南面で長さが違うのに、100mmピッチで切っていくとズレちゃうじゃないですか。ですが、なぜ合っているかというと、東面だと15mmだけど、南面だと15.5mm。北面も実は違う長さですが、例えば、14.5mmっていうふうに調整をして、ぱっと見は同じピッチでできているようにつくっています。今その説明はしましたが、あまり建築ではできないのでそんなことしないんです。それをなんとか清水建設につくってもらったんです。清水建設というのは僕が思うに、日本で一番技術力が高いゼネコンだと思います。清水建設ならそういうことができるだろうというのを見込んでお願いしました。彼らも僕のしつこさに「やりましょう」と言ってくださいました。デジタルで間隔は決めていますが、調整は恐ろしく大変なんです。僕は細かいことを事前に瀧本さんに話していなかったのですが、実際ここに行くと、精度が高く、それが恐らくアナログで作られているんだろうなというエネルギーを僕は感じられると思うし、それを瀧本さんにも感じていただけたのはそういうことなのかなと、嬉しいなと思ったんです。この精度は普通の建築ではないので、その辺りを見ても、町並みを見ても、こんなふうにできているものはありません。デザインの問題もありますが、そういう精度を建築では作れないからなんです。今回はそれをやってもらえたらいいし、それを瀧本さんにも気が付いていただけたという感じです。

建築家:山口 誠

瀧本 幹也(写真家)
1974年生まれ。代表作の『BAUHAUS DESSAU ∴ MIKIYA TAKIMOTO』では、現代デザインの基となったドイツの造形学校バウハウス・デッサウを構成的にとらえ、抽象絵画のような独特な視点で表現した。また『LAND SPACE』では長きにわたりこの大地に育まれてきた自然の壮大さと、人類の手によって生み出された先端文明である宇宙産業の造形美との相似形に着目し「LAND」「SPACE」という一見対極に見えるふたつの視点から、なぜか地球を俯瞰しているかのごとき感覚を与えた。写真と映像で培った豊富な経験と表現者としての視点を見いだされ、是枝裕和監督の映画『そして父になる』『海街diary』『三度目の殺人』では撮影監督を務め、独自の映像世界をつくり出した。主な展覧会に「CHAOS」(Galerie Clémentine de la Féronnière、パリ、2018)、「CHAOS 2020」(妙満寺、京都市、2020)、「PRIÈRE」(大阪市中央公会堂、大阪、2021)、「隈研吾展」(東京国立近代美術館、東京、2021)があり、『CHAOS 2023』(OGATA Paris、パリ、2023)および、『MONOSPINAL』(MYD Gallery、東京、2023)にて新作を発表。
https://mikiyatakimoto.com/

山口 誠(建築家)
1972 年千葉県生まれ。
東京芸術大学大学院建築専攻修士課程修了。
2001 年に山口誠建築設計事務所、2007 年に山口誠デザイン設立。
国内外でプロジェクトを手がけ、高い作品性は世界的な評価を得ている。
MYD Gallery 主催。「借景 – 隣り合うマチエール」をテーマに公文健太郎氏と旅を続けている。
https://ymgci.net/
https://www.mydgallery.jp/
https://shakkei.jp/

開催概要

会期:2023年12月9日(土)~2024年5月25日(土)
営業時間:平日 10:00~19:00(予約制)、土曜 12:00~17:00(予約不要)
プレスプレビュー:2023年11月26日(日) 16:00~18:00
休廊日:日曜日、祭日
会場:MYD Gallery
住所:東京都港区南麻布2-8-17鳥海ビル1F

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