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2023年12月9日(土)~2024年2月25日(日)まで、森アーツセンターギャラリーにて「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」が開催中!

明るく、ポップなイメージで世界中から愛されているキース・ヘリング。
ヘリングは「アートはみんなのために」という信念のもと、1980年代のニューヨークで地下鉄駅構内やストリート、つまり日常にアートを拡散させることで、混沌とする社会への強いメッセージを発信し、人類の未来と希望を子どもたちに託した。
ヘリングが駆け抜けた31年間の生涯のうち創作活動期間は10年ほどだが、残された作品に込められたメッセージはいまなお響き続けている。

本展は6メートルにおよぶ大型作品を含む約150点の作品を通して、ヘリングのアートを体感できる貴重な機会だ。
社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対して最後まで闘い続けたヘリングのアートは、時空を超えて現代社会に生きる人々の心を揺さぶることだろう。

見どころ

1. 6メートルの大型作品など150点が集結

アイコニックなモチーフから、6メートルの大型作品まで、キース・ヘリングの世界観を体現する150点が勢ぞろいする。活動初期のサブウェイ・ドローイング、トレードマークとなったモチーフによる作品《イコンズ》や彫刻、ポスター、晩年の大型作品まで、ヘリングのアートを一堂に体感できる貴重な機会だ。

2. 光・闇・喧噪・色彩。ドラマチックに展開する展示空間

発光する作品、闇に浮かび上がる展示、80年代ニューヨークさながらの喧噪・・・へリングが駆け抜けた10年のストーリーとともに、展示空間は劇的に展開する。一部作品を除き、展示室は写真撮影OK。

3. 現代へのメッセージ

「アートはみんなのために」――その信念のもと、核放棄、性的マイノリティのカミングアウトの祝福、HIV・エイズ予防のためのセーフ・セックスなど、社会へのメッセージをアートで訴え続けたヘリング。なかでも最も象徴的な光り輝くベイビーは、ヘリングが死の間際まで描こうとしたモチーフだ。国を超え、世代を超えて響き続けるヘリングのメッセージに注目していただきたい。

4. スペシャル・トピック:キース・ヘリングと日本

日本に特別な想いを抱いていたへリング。数度にわたる来日が縁で生まれた貴重な作品や資料を、当時の写真とともにトピックとして展示している。

第1章 : ArtinTransit 公共のアート

1978年、ペンシルベニア州ピッツバーグからニューヨークに移り、スクール・オブ・ビジュアル・アーツに入学したヘリングは、絵画だけでなく映像やインスタレーションなど多様な美術表現を学びながら、美術館や画廊といった従来の展示空間から公共空間でアートを展開する方法を模索。なかでも、人種や階級、性別、職業に関係なく最も多くの人が利用する地下鉄に注目。「ここに描けばあらゆる人が自分の作品を見てくれる」と、地下鉄駅構内の空いている広告板に貼られた黒い紙にチョークでドローイングをし、そのシンプルに素早く描かれた光り輝く赤ん坊、吠える犬、光線を出す宇宙船は多くのニューヨーカーの心と記憶に入り込んだ。

ニューヨークはグラフィティが盛況した街で、グラフィティライターとして描いたものは、当時の犯罪大都市ニューヨークでは非常にネガティブな印象がありました。そんななかでキースは刺激を受けて、グラフィティライターたちに敬意の念を示しながらも、そことは一線を画して、自分はグラフィティライターではなく、でもやっぱり公共にアートをということをいつも考えていました。ある日、地下鉄の構内にある空いている広告板に目を付けました。黒い紙というのは、次の広告主が現れるまでに広告板に貼られた模造紙です。すごく安い模造紙を、一番安い接着剤で付けています。その上にチョークで描いてみたらすごくのりが良かったので、「あ、これだ」と思って描くんです。ただもちろん、次の広告主たちが現れるまでの短い期間ですし、やはり公共物なので落書きはしてはいけないので、駅員が来て捕まるまでの間に描き上げなければいけない。3分、4分ぐらいで描き上げて、次のまた駅に行くんです。昼間にどうしても描きたかったっていう思いもあったんです。なぜかというと、誰かとコミュニケーションをするには、みんなが乗るような日中の時間帯に描きたかったっていうのがあり、でもその反面で、じっくり描きたいっていうのもあったので、真夜中に忍び込んで描くこともありました。これが5年くらい続きます。
今まさに世界中でキース・ヘリングは人気者で、いろんなところで大きな回顧展がありますが、サブウェイ・ドローイングがこれだけ集まって展示されているのは非常に貴重です。見てわかるように、チョークで残すために描いてないのでほとんどがボロボロです。5年間描いて何千枚も残していますが、残ってるもはほとんどありません。捨てられるか、取られちゃうか、ボロボロになるか。なのでここに今7点あるというのは奇跡的で、この展覧会を逃したら一生見ることはないんじゃないかと思うぐらい、大変な思いをしてニューヨークから借りてきました。
その非常に貴重な2点をお貸しくださったタッカー・ヒューズさんは、唯一その時に剥がしてそのまま持ってらっしゃる方です。大概は途中で誰かが手放したのを購入したりとか譲り受けたりとか、あと持っていてもうまく剥がれないのでちょっとしか持ってなかったりとかするんです。一瞬で剥がさないと、剥がす人も捕まりますのでビリッてなっちゃうんです。
ここまで状態のいいサブウェイ・ドローイングを、タッカーさんは一体どうやってこんなに綺麗に剥がしたのか、すごく聞かせていただきたいです。

本展監修者:梁瀬 薫(やなせ かおる)

80年代のニューヨーカーはキース・ヘリングがいきなり現れたときに、とても感激したという感じでした。これまでのグラフィティとは違い、とてもパワフルでユニークで、ニューヨーカーもパワフルに受け入れたという感じがありました。彼が有名になったのは、いわゆるアート界のギャラリーオーナーとか評論家たちが発掘して有名になったのではなく、2万人ほどの地下鉄利用者が毎日それを見てそこから有名になりました。そういう点はとてもユニークだったと思います。ですから反応はとてもポジティブでした。
キース・ヘリングは地下鉄の車両に直接描いたのではなく、広告の空いてるスペースの黒い紙の上にチョークで描いたと。永久に残されるのではなく、公共物を損壊するということではなく、そういう感じで描いていたのでニューヨーカーにも受け入れられたんだと思います。ですから時々警察に捕まってはいたのでが、構えている方の警察も彼のアートが好きですぐに出てきたという感じでした。
私は地下鉄で通勤していたのですが、毎日見ているうちにサブウェイ・ドローイングを気に入るようになりました。次の広告が来るまでに、ほとんど1日で消えてしまうわけです。これはなんとかしなくちゃいけないと思い、午前2時に起きて帽子を被り、時間はかかりましたが、取ったものを丸めてベッドカバーに包んで大事に背負って家に帰りました。そういう形でニューヨークのダウンタウンのカルチャーシーンの一端を担ったというか、それに参加したつもりになっていました。
私は84年にキース・ヘリングに独占インタビューをしています。その時はキースのスタジオから始めて、連れて行ってくれた地下鉄の駅でインタビューを続けました。わかったことは、キースが自分のアートに対してとても真剣に取り組んでいること。彼にとってアートというのは、みんなのためのものであるという印象を受けました。

アートコレクター:タッカー・ヒューズ

第2章 : LifeandLabyrinth 生と迷路

HIVの蔓延は社会に暗い影を落としはじめていたが、ペンシルベニア州ピッツバーグの田舎から出てきたヘリングにとって、ニューヨークはゲイカルチャーも華やいでいる刺激的な場所だった。混沌と希望に溢れるこの街で解放されたヘリングは、生の喜びと死への恐怖を背負い、約10年間という限られた時間に自らのエネルギーを注ぎ込んでいく。ジャン・デュビュッフェ、ピエール・アレシンスキー、ウィリアム・バロウズ、そしてアーティストの独立性を主張したロバート・ヘンライのマニフェスト『アート・スピリット』に影響を受け、独自の表現を推し進める中で、アフリカの芸術から着想を得た表現なども確立していく。
「人生は儚い。それは生と死の間の細い線です。私はその細い線の上を歩いています。ニューヨークに住んで、飛行機で飛び回っているけれど、毎日死と向き合っているのです」 ―1986年7月7日

第3章 : PopArtandCulture ポップアートとカルチャー

米国経済不況下80年代のニューヨークは、現在以上に犯罪が多発する都市として知られており、ドラッグや暴力、貧困が蔓延していた。それでもクラブ・シーンは盛り上がり、ストリートアートが隆盛を極めるなど街もカルチャーも人々もパワーに溢れていた。アンディ・ウォーホルやマドンナ、そしてバスキアの作品もそのような状況下から誕生している。作家のウィリアム・S・バロウズも詩人で評論家のアレン・ギンズバーグも、トップモデルも著名人もミュージシャンも、みんなクラブに通っており、若いアーティストは画廊やシアター以外の場所で才能を試すことに必死だった。特にパラダイス・ガラージは人種の坩堝(るつぼ)で、ダンスも、DJの神様といわれたラリー・レヴァンのプレイも、ヘリングにとって最高のクラブであり、踊りと音楽に酔いしれるだけではなく、創作のアイデアが湧き出る神聖な場所でもあった。そのように文化が混ざり合う時代の中で、ヘリングはポップアートだけでなく、舞台芸術や広告、音楽などと関わりながら制作の場を広げていくことになる。

第4章 : ArtActivism アート・アクティビズム

キース・ヘリングは大衆にダイレクトにメッセージを伝えるため、ポスターという媒体を使用。題材は核放棄、反アパルトヘイト、エイズ予防や、性的マイノリティのカミングアウトを祝福する「ナショナル・カミングアウト・デー」などの社会的なものから、アブソルート・ウォッカやスウォッチなどとのコラボレーション広告といった商業的なものまで、100点以上にもおよぶ。なかでも、社会へのメッセージを発信したポスターは数多く、ヘリングが初めて制作したポスターは、1982年に自費で2万部を印刷した核放棄のためのポスターであり、セントラル・パークで行われた核兵器と軍拡競争に反対する大規模デモで無料配布された。アートの力は人の心を動かし世界を平和にできるものだと信じていたヘリングは、ポスターだけでなく子どもたちとのワークショップや壁画など多くの媒体を使ってメッセージを送り続けた。

第5章 : ArtisforEverybody アートはみんなのために

アートを富裕層にだけではなく大衆に届けたいと考えたヘリングは、ストリートや地下鉄での活動に始まり、自身がデザインした商品を販売するポップショップといったアート活動を通して彼らとのコミュニケーションを可能にしてきた。本章のメインとなる《赤と青の物語》は、絵画の連なりから1つのストーリーを想像する、子どもたちだけでなく大人にも訴えかける視覚言語が用いられた、代表的な作品だ。
また、赤、黄、青といった原色を使い、平面の形を立体に立ち上げた彫刻作品はシンプルで万人とコミュニケーションできるアートといえる。ヘリングは彫刻や壁画などを世界の都市数十ヶ所でパブリックアートとして制作している。そのほとんどが子どもたちのための慈善活動だ。数々の絵本が出版され、今でも親しまれているなど、ヘリングが発信したアートは大衆に届けられ続けている。

第6章 : PresenttoFuture 現在から未来へ

17点による《ブループリント・ドローイング》は「ニューヨークでのはじまりを啓示するタイムカプセル」だとヘリングはテキストに残している。一点一点には解説は付けられていないが、資本主義に翻弄され不平等さや争いがはびこる社会や、テクノロジーが人間を支配するような未来がモノクロームでコミックのように淡々と描写されている。ヘリングの多くの作品同様、ここでも鑑賞者が作品と向き合い、個々の現実に照らし合わせ、意味を考えることを作品が促している。最後の個展に出品された大作《無題》も、《イコンズ》に描かれた世界中で愛されている光輝く赤ん坊、通称ラディアント・ベイビーも、鑑賞する人の数だけ意味が生まれていく。現在を未来として描き、未来を現在として描いたヘリングの思いは、没後30年以上経った今でも歴史と共に巡っている。

キースがサブウェイ・ドローイングを始めると街中の話題となりました。日替わりで制作され、どこに描かれるかわからないドローイングを見つけることを、皆が楽しんでいたのです。私もそのひとりです。以来蒐集を始め、現在、私のコレクションは美術館や画廊に寄託されています。
私はキースの作品のなかで、サブウェイ・ドローイングが最も重要だと考えています。キース自身がそうであったように、私もできるだけ多くの方々に彼の作品を見てもらいたいと思い、今回2点のサブウェイ・ドローイングを出品しています。

アートコレクター:タッカー・ヒューズ

▼タッカー・ヒューズ / Tucker Hews
ニューヨーク生まれ。
ヒューズ・コミュニケーションズ・インク社長 / アートコレクター。
スポーツ番組やビデオ・インタビュー・シリーズなど多数プロデュース。
1983年インタビュー・シリーズのなかでキース・ヘリングへインタビューした。
2017年には世界の金融ジャーナリスト500名が投票した「米国で最も尊敬されているPR専門家」で第1位に選出されるなど多才。
キース・ヘリングのサブウェイ・ドローイングの世界最大級プライベート・コレクションを保有している。

開催概要

会期:2023年12月9日~2024年2月25日
開館時間:10:00〜19:00(金土〜20:00、12月31日~1月3日は11:00~18:00)※入場は閉館の30分前まで ※事前予約制(日時指定券)
休館日:会期中無休
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
料金:一般 2200円 / 中学・高校生 1700円 / 小学生 700円

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