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今年8月、株式会社デジタルガレージが主宰したTHE NEW CONTEXT CONFERENCE 2021で、「人類と地球環境の調和」をテーマに語られたアーティスト・小松美羽の記念碑的スピーチを振り返る。同カンファレンスで初公開された新作《NEXT MANDALA~魂の故郷》とスピーチを通じて、小松美羽のアーティスト像に迫る。

撮影:東 達也

私は自分の役割を果たすために生きています。その役割の一つは、薬のように心や魂を癒す芸術を作ることなので、創造と制作の日々を何よりも大切にしています。

毎日、描く前に私は瞑想とお祈りをします。私にとって瞑想は、1点に集中することで自我を無くし、そこから多くの物事を創造するための方法です。作品を描く際にも、これから筆を入れる対象にまず1点集中します。そうして自我をなるべく抑え、無邪気な精神状態となると、描くべきもののヴィジョンが見えてきます。「第3の目を開く」という言葉がありますが、私はそのヴィジョンが見えてくる意識の状態を「ミニシアター」と呼んでいて、そこで見えたものに描く指針を教えてもらいながら描いていきます。瞑想を経て、非物質的なエネルギーを物質的に変換していく作業が、私の制作活動だと言って良いかもしれません。

私たちは人間の活動が地球環境に大きな影響を与える「人新世」(アントロポセン)という地質年代に生きているとも言われています。とりわけ第ニ次世界大戦後に飛躍的に環境への負荷が増大した現代は「大加速時代」(グレートアクセラレーション)と言われ、私たちは地球の資源が無限ではないという事実に向き合わざるを得なくなりました。科学の進化により、地球は広大な宇宙を構築している1つに過ぎないと身近に認識するようになりました。

しかしどうでしょうか、大加速時代に比例するように地球のシステムは崩れ始めました。現代はこんなにも物や情報で溢れているのに、人々が置かれた状況は平等とはいえず、貧困や差別がなくならないのは何故でしょうか?自然や地球の資源を犠牲にしてきたにも関わらず、私たちは「幸せであること」について各々の答えを見出せているのでしょうか? 「幸せであること」の答えを見出すためには、各々に課せられた役割や使命・天命によって人それぞれ違う課題と向き合っていくことになるでしょう。

だからこそ、自分の心や感受性や魂が本当に何を求めているのかを知っていくことが大切です。私の場合は、日々の瞑想とお祈りによって、描くことが自分の役割だと再確認し、その目的を果たすため毎日を生きています。

私が本格的に瞑想を行うようになったのは2015年からで、タイの自然豊かな森林の中にある、神聖な鍾乳洞に行ったことがきっかけでした。鍾乳洞の中で瞑想を始めると、自然の中にいる多くの神秘的な存在を認識することができました。しばらくすると、教会に響く讃美歌のような音が聞こえてきて、私は荘厳な世界に招き入れられたように感じました。そこで私は精霊たちが放つ光線や、神獣たちの今を生きる姿を見ました。人が悪魔的な態度を取らず、自己を無邪気に解放することで、こんなにも母なる地球は寛容に多くのことを学ばせてくれるのだと知りました。

そう、地球は母なる地球なのです。深い祈りの中では、人種や国境を越えて、地球そのものを故郷だと感じるのです。そういった経験もあり、今回、私は“Earthshot”と言うテーマと向き合えたことは、まさに天命であると確信しました。

そして、このテーマに取り組むための場所は、高野山しかないと思ったのです。弘法大師空海が山犬に導かれて高野山を開山されたように、私も古くから伝わる神獣さんや大いなる存在に導かれていったように思います。高野山という土地は世界遺産として知られ、今から1200年前に弘法大師空海が開山された場所です。自然と人とが融合し、毎日多くの人がお祈りをし、瞑想をする所としても知られています。実際に私が高野山に訪れた際には、自然やそこに住まう動物や神聖な存在たちがこんなにも人に近いところに居られることに驚いたのを覚えています。また、山々に囲まれた地形は「八葉の峰」と呼ばれ結界の役目を果たしているため、精神を無防備に開放して瞑想を深めることができ、絵を描くには最適な場所でもありました。

高野山三宝院で瞑想する小松美羽。撮影:永坂嘉光

2021年7月3日、私は“Earthshot”と向き合い描くべく、金箔のキャンバスと絵の具を高野山にある別格本山三宝院に持ち込み、制作をスタートさせました。私はもともと人それぞれが信じる宗教や精神性を否定せず、敬意を持ってそれらから学んでいく姿勢をとっています。世界各国に存在する神話や祈る心の源流を学ぶために、私はこれまで色々な宗教と霊性に触れ合ってきましたし、今後も学び続けたいと思っています。

空海さんもまた、もともと高野山の土地にあった神社を大切にお祀りし、神道と仏教が共存するあり方を大事になさいました。そのためでしょうか、高野山で初めて瞑想したときからたくさんの創造的なアイディアが溢れてきました。高野山の自然や空間を起点に、宇宙からのエネルギーを仲介者のように受け止め、創造の形に変換することができたので、驚くほど早く作品を制作することができました。それはまるで、宇宙エネルギーと私が融合することで宇宙から俯瞰して地球を見ているかのような体験でした。

 

私のこれまでの作品の中に、地球を正二十面体で区切ることで、国境や視覚的物体に囚われずに地球を俯瞰する《エリア21》 という作品があります。正二十面体の20にプラスされた1は、天や宇宙を意味しています。4年前の個展では、21番目の神獣さんを一対の陰陽としてライブペイントで描きました。その作品は、まるで全宇宙に拡がるインドラの網のように、それぞれが繋がりながら拘束されず、自由に包摂されていく様を表現したものであり、それまで歩んできた自分の道のりの集大成のようでもありました。

《エリア21》展示風景:小松美羽展「神獣~エリア21~」2017年

《エリア21》展示風景:小松美羽展「神獣~エリア21~」2017年

今回、高野山で描き切った絵は、その《エリア21》をも含んだ、より彼方からの視線を意識した作品です。描いている最中は、大きな力に背中を押されているような感覚で、不思議なくらいの早さで絵筆が進み、私の自我を無視し、私の法則に囚われない物となりました。それはまるで曼荼羅のように生きとし生けるものが純粋に天へと向かっていく一つの道のようでもありました。

制作現場となった高野山別格本山三宝院「まんだら庭」に置かれた作品《NEXT MANDALA~魂の故郷》。撮影:永坂嘉光

私はかねてから、いろいろなものを組み合わせ、まとめあげてデザインする力のことを、「大和力」と呼んで、創作上のモチーフとして来ましたが、今回の高野山での制作過程と出来上がった作品から、これこそ今の時代に求められている大いなる調和の力なのだ、ということを学びました。「大加速」(グレートアクセラレーション)から「大調和」(グレートハーモナイゼーション)へ。それが今回私が絵を描かせていただいた役割の意味なのです。高野山で出来上がった絵と、さらに会場で三角のキャンパスに描いた2枚のライブベイントを重ね大調和することで、絵はやっと完成に導かれました。

《NEXT MANDALA~Home of Soul》「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2021」にて。撮影:東 達也

《NEXT MANDALA〜Home of Soul》 「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2021」にて。左から株式会社デジタルガレージ 代表取締役 林 郁、同社共同創業者 伊藤穣一、小松美羽、真
言宗総本山教王護国寺⻑者 飛鷹全隆大僧正。

私にとってライブペイントはパフォーマンスではなくご神事であり、祈る形であり、瞑想でもあります。その場に集まったエネルギーや土地の力、全てのご縁、そして運命に敬意を持ってキャンパスに向かいます。未来の子どもたちのためにも、肉体が求めている快楽を幸せだと信じるのではなく、私やあなたの魂が本当に求めているものに寄り添い、自分自身に与えられた使命を全うしながら、人と人、自然と宇宙との大調和を実現する時代にしたいものです。私は祈りと絵筆を通して、そのプロセスに貢献できることを願っています。

ー「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2021」での小松美羽のスピーチ「NEXT MANDALA~魂の故郷」より抜粋

愛と幸福の連鎖 181.8×227.3cm  潇当代美术馆 蔵

小松美羽が2018年に日本橋三越で開催した個展「大和力を、世界へ」展は、延べ12日間で来場者数が約3万人、総売り上げは3.4億円を越えた。これにより、現代アート作品を扱うことに積極的でなかった日本のデパートでも現代アート作品が売れることを証明し、その後の日本のアート界の流れを変えた。

2019年にはHTC VIVE ORIGINALSと共同制作したVR作品《INORI=祈祷》が、日本の現代アーティストが手掛けたVR作品としては初のノミネート作品となり、第76回ヴェネツィア国際映画祭VR部門のコンペティション作品として正式招待されるという快挙を果たした。その後も、2020年には24時間テレビ『愛は地球を救う』のチャリTシャツのデザインに起用されるなど、小松美羽はお茶の間でも認知されるほどの存在となった。

かつて美術評論家の伊東順二は、小松を「時代の寵児であるがゆえに誤解もされるだろうが、しかし、本質的には、今の、全てが傍観者になろうとする時代にそぐわない資質を持つ彼女の感性の鋭さが、時代の真の姿を見せることを可能にすることに期待している」と評した。世界がいま大きな転換期を迎える中で、小松美羽が私たちに見せてくれた《NEXT MANDALA~魂の故郷》は、私たちが気付くべき「時代の真の姿」なのかもしれない。

いずれにせよ、小松美羽が挑んでいるのは美術史の範疇を越えた人類史なのだということを、本カンファレンスの取材で実感した。

ONBEAT編集部

『ONBEAT vol.06』『ONBEAT vol.15』では小松美羽を特集