Photo: Hiroshi IWASAKA/ ©CISSEY MIYAKE INC
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE デザイナー・宮前義行
A-POC ABLEはファッションか?アートか?
聞き手・文=林信行
2023年10月17日発行『ONBEAT vol.19』掲載
宮前義之氏は、2011年ISSEY MIYAKE の4代目デザイナーに就任。
2019年春の2019-20 AWシーズンまでバリコレクションで新作を発表し続けてきた人物だが、コロナの2021年に新ブランド、 A-POCABLE ISSEY MIYAKEを立ち上げ、 そのデザイナーに就任。さまざまなアーティストと協業したプロジェクトを発表し始めた。 宮前氏にその背景を聞いた。
イッセイ ミヤケは、 元々、アーティストとの協業が多い企業だという印象があるが、いくつかある同社のブランドでも、特に精力的に外部アーティストとの取り組みを行っているのが宮前義之率いるA-POC ABLE ISSEY MIYAKEだろう。 そもそもブランドコンセプトがアーティストなどの異業種企業との協業を前提としている。 ”A Piece of Cloth(一枚の布)”の頭文字をとった「A-POC」。 これは服一着の全パーツがあらかじめ編み込まれた布を作るというイッセイミヤケが1998年に生み出した画期的な服作りの方法だ。 宮前義之は、この技術に衝撃を受け入社を決断した。 その後、同社の4代目デザイナーに就任し活躍したが、宮前が「A-POC」 の技術をもっと発展させたいと思っていたことを三宅一生が見抜き「コレクションの短いサイクルではなく、しっかり時間をかけて開発してみるか」 とその思いを後押しし
たという。
「A-POCABLE ISSEY MIYAKE」 というブランド名は三宅自らが名付けた。これをどんなブランドにするかを考えていた宮前が頼ったのがアートだった。 アートが面白いのは「アーティストたちは従来の固定観念から解放してくれた人たち」 と評する宮前。 「見方が1つに固まってしまいそうな時代に (中略) もっと世の中には
いろいろな見方や多様な考えがあると示してくれる。そう言うことを服作りに取り入れていきたい。」と考えた。「自分1人の視点ではなく、いろいろな視点が入ることによってイッセイミヤケのものづくりがもっと発展していく。そういう方が僕も面白い。」 宮前はそう考え、異分野 ・ 異業種のさまざまな人とコミュニケーションしながら創造することをこのブランドの核にした。正式にブランドを立ち上げる前、 最初に組んだのが横尾忠則だった。