名和晃平「Sentient」がSCAI THE BATHHOUSEにて開催中(2025年7月12日[土]まで)!

 

展示風景 撮影=藤田博孝

文=藤田博孝 協力=SCAI THE BATHHOUSE

東京のSCAI THE BATHHOUSEにて、3年ぶり6度目となる名和晃平の個展「Sentient」(「意識・感覚のある」の意)が開催中だ。

テクノロジーと生態の変化が加速する現代を背景に、名和晃平は過去20年間にわたるミクストメディアの実践を通じて、知覚と情報を相互にもたらすオブジェの作用を探求してきた。「PixCell」をはじめとしたシリーズも、人工素材とコード化された記号、デジタルデータと彫刻的フォルムの間で生じる再帰的な交換に目を向け、ファウンド・オブジェの表層を変質させるマテリアルの考察から生まれている。本展では、こうした探求をさらに掘り下げ、名和の実践がもたらす物質的な介入を通じて、オブジェの存在論に新たな問いを投じるという。

本展を構成するのは、それぞれ独立した台座に置かれ、複層的な対話を織りなす約20点の彫刻作品。 名和の彫刻の素材は、70年代のブラウン管テレビ、節句を祝う飾り馬、ギリシャ彫刻の石膏像といった静物にとどまらず、燃焼し続けるロウソクや、展示中週替りで生け替える生け花など多岐にわたる。 作品の表面は、苔や菌糸のような絨毛を付着させた 「Velvet」や、3Dスキャンなどで得たデジタルデータを元に彫刻化する 「Trans」など、 名和のこれまでの彫刻シリーズを特徴づける技法が用いられ、 それがオブジェの意味を不安定にし、記号としての可読性に揺らぎを生じさせる。(プレスリリース参照)

展示風景 撮影=藤田博孝

 

展示風景 撮影=藤田博孝

 

展示風景 撮影=藤田博孝


展示作品《Cells in the Grotto》 は、リゾームに覆われた洞窟のような造形の内部に異なる天然・人工物を封じ込めた大小さまざまなガラス球が置かれている。 フレーク状の雲母、結晶化した鉱物、 青くフィルムコーティングしたカブの種、ヒマラヤ岩塩やよもぎなど、多種多様な色彩や形状をもつ要素がカプセル化され、地球環境の危機と複雑に絡み合う生態系を暗示する。 同時に、不調和に見えるオブジェの配置は、神話的・象徴的なイメージを想起させ、コントロールできない外的要因に導かれる集合の特性を浮び上がらせている。(プレスリリース参照)

名和晃平 《Cells in the Grotto》 2025年 ミクストメディア 455 x 955 x495 mm 撮影=表恒匡

 

「名和の実践によってオブジェの記号としての可読性は解体され、 異なるマテリアルと技法を加えることでそのフォルムが変容していきます。 この組み換え可能なアッサンブラージュにおいて、オブジェはその物性とコード化された意味の狭間をさまよい出ます(プレスリリースより)」。そうした個々の彫刻の集合によって「既存の価値体系を異化し、予期せぬ視点へと導く関係性の場を開いていく」という展は、SCAI THE BATHHOUSEにて好評開催中。

名和晃平

名和晃平


名和晃平(Kohei Nawa)

1975年生まれ。京都を拠点に活動。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。 2009年 「Sandwich」を創設。
名和は、感覚に接続するインターフェイスとして、彫刻の 「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸として、2002年に情報化時代を象徴する 《PixCell》 を発表。 生命と宇宙、感性とテクノロジーの関係をテーマに、 重力で描くペインティング 《Direction》やシリコーンオイルが空間に降り注ぐ 《Force》、 液面に現れる泡とグリッドの《Biomatrix》、 そして泡そのものが巨大なボリュームに成長する 《Foam》など、 彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。
近年では、アートパビリオン 《洸庭》など、建築のプロジェクトも手がける。 2015年以降、 ベルギーの振付家/ダンサーのダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品《VESSEL》《Mist》 《Planet [wanderer]》 の三部作を制作。 2018年にフランス・ルーヴル美術館 ピラミッド内にて彫刻作品 《Throne》を特別展示。 2023年、フランス・セーヌ川のセガン島に高さ25mの屋外彫刻作品《Ether (Equality)》を恒久設置。

名和晃平「Sentient」

会期:開催中~2025年7月12日(土)
時間:12:00 ~ 18:00
休館日:日・月・祝日
会場:SCAI THE BATHHOUSE
住所:東京都台東区谷中 6-1-23
WEB:http://kohei-nawa.net/ja/news/kohei-nawa-sentient/

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国内外の数々のアートプロジェクトで名和とコラボレーションをしてきた
キュレーターの長谷川祐子(金沢21世紀美術館館長)が聞き手となり、アーティストへのインタビューを敢行。
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