朝香宮邸でつむぐ鉄とガラスの創造
「そこに光が降りてくる 青木野枝 / 三嶋りつ惠」
1920年代ごろフランスで全盛期を迎えていたアール・デコの様式美に魅せられた朝香宮夫妻が、自邸建設の際フランス人装飾芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計を依頼したことで知られる旧朝香宮邸。この積極的にアール・デコの精華が取り入れられた空間で、2024年11月30日(土)~2025年2月16日(日)まで、精力的に活動を続ける二人の女性作家、青木野枝と三嶋りつ惠がそれぞれの作品を展示する「そこに光が降りてくる 青木野枝 / 三嶋りつ惠」が開催されている。
青木野枝は、鉄を素材に、空間に線を描くような抽象彫刻を生み出してきた彫刻家。三嶋りつ惠は、無色透明のガラスを用いて、光の輪郭を描き出す有機的なフォルムの作品を生み出してきたガラス作家。二人が用いる「鉄」と「ガラス」は、悠久の時を経て今日にまで伝えられた自然の恵みであると同時に、旧朝香宮邸を彩る装飾としてシャンデリアやレリーフ、扉上のタンパン等にも多用されている。
本展覧会では、現代美術の第一線で活躍し続ける二人の作品が旧朝香宮邸の各所に配置され、アール・デコの装飾空間を新たな視点で照らし出す。展覧会に先立って二人は、幾度となくこの場を訪れ、建設当時の装飾空間との対話を重ね、展示プランを作り上げていったという。
青木野枝 撮影:藤田紘那 | 三嶋りつ惠 撮影:藤田紘那 |
三嶋氏は約40点の作品が並べられた展示スペースの陳列について、「ただ数を並べるのではなく、見る側の意識をなびかせるような作品を選びました。配置はあまり考えすぎず、これとこれは仲良しだよね、でも間は空けた方がいいよね、というようにポンポンと置いていきました」と語った。
青木氏は今回の展覧会のための制作や搬入時、アール・デコに憧れて朝香宮邸を建てそこに住んだ人々の気持ちと自分の制作に対する気持ちに共通点を見出したり、空間と時代について思いを巡らせることがあったと語った。
みどころ
①光がテーマのインスタレーション
鉄の溶断時に現われる鉄内部の透明な光からさまざまなインスピレーションを得てきた青木と、周りの光を捉えて解き放つガラスで作品を作り上げてきた三嶋。素材や方法は違えど、それぞれの作家が同じように光に想いを馳せながら生み出してきた作品達が、陰影に富んだ空間内で、昼は自然光に、夕方にはあたたかな室内照明に照らし出されるインスタレーションが展開されている。
②アール・デコと響き合う鉄とガラスの作品群
鉄とガラスは、旧朝香宮邸を彩るアール・デコの装飾の素材としても使われており、フランスのアーティストらが手掛けた歴史的な装飾と現代の二人の作家の作品が、時を超えて特別な競演を展開する。
③作家の今
展覧会では、両作家の新作や、本展用に収録した作家インタビュー、制作工程を捉えた映像や資料も紹介されている。
④関連プログラム
i. 哲学対話「ともに考える、対話するー光ってなんだろう?」
作品鑑賞後、テーマや作品についてゆっくりと対話しながら、考えを深めていく。
日時:12月22日(日)14:00-16:30
参加費:無料(当日友好の展覧会チケットが必要)
対象・定員:中学生以上どなたでも20名(要申込)
ii. ギャラリートーク「朝香宮邸をめぐる光、そして鉄とガラス」
本展スタッフが、出品作品や展覧会エピソードについて語る。
日時:1月23日(木)・2月6日(木)11:00-12:00
参加費:無料(当日友好の展覧会チケットが必要)
定員:10名(当日受付・先着順)
iii. さわ会ーさわっておしゃべり鑑賞会「触れて、感じて、対話する」
作品やその素材に触れ、作家の制作過程を想像しながら鑑賞を楽しむ。
企画:半田こづえ(明治学院大学 非常勤講師)
日時:2月1日(土)14:00-16:00
参加費:無料(当日友好の展覧会チケットが必要)
対象・定員:中学生以上どなたでも(視覚に障害のある方もない方も参加可能)6名程度(要申込)
iv. 青木野枝・三嶋りつ惠によるアーティストトーク
出品作家二人が登壇し、出品作品や展覧会について語る。
日時:2月15日(土)14:00-15:30
参加費:無料(当日友好の展覧会チケットが必要)
定員:70名(要申込)
開催概要
会期:2024年11月30日(土)~2025年2月16日(日)
開館時間:10-18時(入館は閉館の30分前まで)
*12月6日・7日は秋の夜間開館のため20時まで
休館日:毎週月曜日および年末年始(12月28日-1月4日)は休館
*ただし1月13日(月・祝)は開館、1月14日(火)は休館
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館
年間協賛:戸田建設株式会社、ブルームバーグL.P.