廣川玉枝個展
「皮膚のデザイン」が開催中
文=ONBEAT編集部、写真=藤田紘那
2006年に SOMARTA を立ち上げて以降、時代を超えて長く行き続ける「普遍の美」を追求するものづくりを目指して、「身体における衣服の可能性」をコンセプトに、無縫製ニット「スキン シリーズ」の研究開発に取り組んできたデザイナー・廣川玉枝。
「スキン シリーズ」は、人類が生まれ持って生まれた皮膚を「第一の皮膚」と捉えた時、そのものの存在に近い「第二の皮膚」を目指してデザインされた衣服のシリーズだ。
時代や地域を超えて観察されるボディペイント、タトゥや刺青などは、特別な想いや願いを身体に装飾することであり、こうした身体表現を廣川は「人類が本能的に良くする、成りたい姿形を想い描く『身体の夢』の現れ」であると捉え、第一の皮膚に近い「第二の皮膚」をデザインすることで、人類が古来から夢見る願いを叶えられると考えた。
無縫製ニットの技術を用いて作られた機能性と美しさを兼ね備えた「スキン シリーズ」は、皮膚のように伸縮し身体の伸びやかな動きを妨げないため、レディー・ガガをはじめとする国際的に活躍するアーティストやコンテンポラリーダンサーなど、身体の動きで魅せるパフォーマーの衣装として愛されている。
また、TOKYO2020 オリンピック・パラリンピックのスポーツウェアのデザインをアシックスと協業して手掛けたことも話題となった。高温多湿な日本の夏に開催されることを踏まえ、そのような環境下でも選手を熱や紫外線から保護できるよう、各部位に適した通気口を配置するべく編地を大きくしたり、逆に紫外線から守るべき部位は編地を詰めたりした。
また、廣川は人間が生まれ持った「第一の皮膚」、その上に纏う衣服としての「第二の皮膚」以降にも、椅子などの家具、車や飛行機などを「第三の皮膚」、家やビルといった建築物や空間を「第四の皮膚」と捉え、衣服にとどまらない広範囲な分野でのデザインを展開している。
今回の展覧会では、来場者が実際に「スキン シリーズ」を体験できる機会を設けるべくデザインされた、作品の中に入り込める新作《SOMA-HOUSE》が展示されている。
軽くて丈夫な段ボールの骨組みと、力を支える木材で作られた組み立て式の構造になっており、移動可能な「着る空間」のプロトタイプとなっている。
展覧会の開催期間中、関連イベントとして11月4日の14:00-15:00には、アーティストトークが行われる予定だ。
廣川氏とトークするのは、弊誌『ONBEAT』でも連載を担当しており、『ONBEAT vol.16』で廣川氏と対談を行ったジャーナリストの林信行氏(こちらから『ONBEAT vol.16』で行った二人の対談の詳細ページをご覧いただけます)。
申し込みが必要だが参加費は無料。
「スキン シリーズ」の展示を中心に、あらゆるものを身体に見立ててボーダーレスなデザイン活動を行う廣川の「皮膚のデザイン」の思考を紐解き、その創造の軌跡を追う展覧会に、是非足を運んでほしい。
開催概要
会期:2024年10月5日(土)~12月22日(日)
会場:藤沢市アートスペース
休館日:月曜日(10/14,11/4は開館、翌10/15,11/5は休館)
開館時間:10:00~19:00 (入場は18:45まで)
観覧料:無料