2023年4月15日(土)~2023年5月14日(日)まで、京都市内各所で「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」が開催中!

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭だ。千年の長きにわたって伝統を守りながら、その一方で先端文化の発信地でもあり続けてきた京都。その京都がもっとも美しいといわれる春に開催される。
日本および海外の重要作品や貴重な写真コレクションを、趣のある歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展開し、ときに伝統工芸職人や最先端テクノロジーとのコラボレーションも実現するなど、京都ならではの特徴ある写真祭を目指している。

第11回目を迎える今年は「BORDER」をテーマに、京都⽂化博物館別館、⼆条城⼆の丸御殿台所・御清所、両⾜院、出町桝形商店街など19カ所を会場に、15のメインプログラムを展開している。

嶋臺(しまだい)ギャラリーでは、スイス人フォトグラファー、ロジャー・エーベルハルト「Escapism」を開催。

最新作シリーズ〈Escapism〉(エスカピズム/現実逃避)は、クリシェ的な(よく聞く)観光名所をめぐる旅であり、スイス文化の特異性を知るための糸口でもあり、また、リチャード・プリンスやシェリー・レヴィーンらのアプロプリエーション(流用・借用)からアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンシュタインらのポップアートまで、美術史上のさまざなムーブメントを想起させる作品でもある。

スイスのレストランやバーでコーヒーを注文すると、小さな茶色のプラスチック容器に入ったコーヒーフレッシュが必ず添えられて出てくる。このクリームの容器には薄いアルミ箔の蓋がついていて、それを剥がしてコーヒーにクリームを注ぐのだが、この蓋に写真が印刷されるようになったのは1968年のこと。

クリーム容器の蓋に印刷された写真の多彩なジャンルの中から、エーベルハルトは特に風景写真にフォーカスしている。小さな蓋に印刷された風景写真をさらに再撮影するという手法で、高解像度のカメラを使用して超クローズアップで撮影している。スタジオで撮影した写真は、緻密なデジタル処理によって完璧な画像に仕上げられる。最終的には、過剰なまでに大きく引き伸ばしてプリントし、元々のクリーム容器の蓋の写真に新たな解釈を加えた作品が完成する。

「Escapism(エスカピズム)」とは、現実を直視しないこと、すなわち、現実世界や社会生活に幻滅し、そこから逃げ出そうとする態度のことを指す。
現実逃避はパンデミックの外出制限の間にロジャー・エーベルハルトのプロジェクトの中心的なテーマとなっていく。エーベルハルトの〈Escapism〉(現実逃避)では、非常にスイス的な伝統──すなわち、コーヒー用クリーム容器の蓋を収集すること、そしてそこに印刷されているイメージを鑑賞し、愛でること──を作品の題材として取り上げている。

引き伸ばされたプリントでは、CMYK印刷の網点のパターンが鑑賞者の立ち位置によって現れたり消えたりする。インクのドット(網点)一つ一つが生み出すグリッドは、イメージの工業性を際立たせる。アンディ・ウォーホルやロイ・リキテンシュタインの作品とも相通ずる要素だ。ドットのパターンはまた、鑑賞者を夢想的な逃避から現実の世界へと容赦なく引き戻す力も持っているのだ。

アーティストプロフィール

ロジャー・エーベルハルト / Roger Eberhard
1984年生まれ、スイス人写真家。
ブルックス写真大学(カリフォルニア州サンタバーバラ)にてBFAを、チューリヒ芸術大学にてMFAを取得。
現在、チューリヒを拠点に活動。
世界中を巡り、領土や国境、グローバリズムといった現代社会の問題をテーマにドキュメンタリー的な視点で作品を制作している。
2011年にチューリヒで出版社「b.frank books」を設立し、現在もアーティストのための出版プロジェクトを継続している。
〈Human Territoriality〉(人間の縄張り意識)シリーズは2020年のSwiss Design Awards(スイス・デザイン・アワード)にノミネートされ、その一部を収録した作品集(Edition Patrick Frey社刊)は2020年の「The Most Beautiful Swiss Books」(最も美しいスイスの本)に選ばれている。
C/O Berlin(ツェーオー・ベルリン、ベルリン)やビクトリア国立美術館(メルボルン)をはじめ、世界各国で作品を展示。
Robert Morat Galerie(ベルリン)にて作品が取り扱われており、Galerie Mai 36(チューリヒ)でも展示を行っている。

キュレータープロフィール

ステファノ・ストール / Stefano Stoll
「Images Vevey(イマージュ・ヴヴェイ)」の創設者兼ディレクター兼チーフキュレーター。
Images Veveyは「ビエンナーレ」「アワード」「展示スペース」「出版」の4つの活動を柱としている。
2年に1回開催されるビエンナーレ形式のImages Veveyは2008年のスタートで、街路や公園、湖、建物のファサードなどの屋外空間や、美術館、ギャラリーなどの屋内空間、さらには意外性のある展示会場など、ヴヴェイ市内の各所において、写真を用いたサイトスペシフィックなインスタレーションを行っている。
写真関係ではヨーロッパで最も長い歴史を持つ奨学金のひとつである「グランプリ・イマージュ・ヴヴェイ」を主催するほか、現代写真に特化したオルタナティブスペース「ラパルトマンーエスパス・イマージュ・ヴヴェイ」を創設し、そのキュレーションも担当している。
現在は出版部門の強化に取り組んでおり、「イマージュ・ヴヴェイ・ブック・アワード」などの革新的な出版プロジェクトの支援に力を入れている。
AICA(国際美術批評家連盟)会員。
文化政策やビジュアルアート、写真に関する執筆活動も行い、様々な国際的なイベントで審査員や座長を務めている。

開催概要

開催日:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:4月20日(木)・27日(木)、5月11日(木)
会場:嶋臺(しまだい)ギャラリー
住所:京都市中京区御池通東洞院西北角
アクセス:地下鉄烏丸線または東西線「烏丸御池」駅1番出口から徒歩すぐ
入場:大人 800円、学生 600円(学生証の提示)

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