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2022年10月28日(金)京都・御所南エリアに、テキスタイルギャラリー「真妙庵」がオープンした。

本ギャラリーでは、西陣織老舗・細尾12代目細尾真孝氏と、美術家であり自然布の蒐集家・研究家として知られる吉田真一郎が、19世紀(江戸~明治時代)につくられた大麻・苧麻繊維の貴重な自然布を共同で監修・選定し、紹介する。

ここで紹介される布は、吉田が代表を勤める近世麻布研究所の協力により、博物館と同等の精密な繊維検査によって糸の素材を明らかにした貴重な資料であり、手績み糸、自然染色、手機によって作りあげられた19世紀の手仕事を体現する美しい布たちだ。

真妙庵では、糸の績み方や織の手加減など、布の微視的な美しさに焦点をあて、表具されたもののほか、19世紀の裂など、さまざまな自然布を紹介している。

そもそもなぜ吉田はそれらの布を蒐集し、今回細尾氏とコラボレーションするに至ったのだろうか。細尾氏は次のように語る。

「吉田さんは、元々美術家として杉本博司さんや川久保玲さんなどと交流を持ち、活躍されていました。しかしある時、発作により倒れ、絵を描くことに対してドクターストップがかけられてしまったのです。美術家にとって死刑宣告にも近いその言葉に、吉田さんはそれならば死ぬ前に世界の現代アートを見たいと一念発起、ドイツ・ドクメンタへ出かけところ、ヨーゼフ・ボイスと出会います。しかし、そこでボイスから“お前のルーツはなにか”と問われ、答えられなかったそうです。そのことをきっかけに、帰国後、古美術の蒐集をはじめられました。吉田さん自身、そうして集めた布にいつか絵を描き、ボイスに返事をしようと考えていたのかもしれません。気づけば40年も布を蒐集し続けており、HOSOO GALLERYではその集大成として展示を行いました。その個展は吉田さんにとっても40年ぶりの個展だったため、杉本博司さんも見に来られたと聞いています。

そして今回、そんな吉田さんのコレクションを基につくった作品を展示することにしました。例えば、洋服と違って、分解すると8つのパーツにわけることができる着物は、分解して反物に戻して、他のパーツと組み合わせて使うなど、”良いものを長く使う”日本文化がよく表れているものです。しかし単に江戸時代の着物を展示するだけでは、古美術商などと変わらないため、私たちは一度着物を分解して、表具して、再構成したものを作品も展示しています」

ただし同じ大麻繊維でできた糸一つをとってみても、大麻の苧の種類、糸の太さ、撚りの有無などによって微細な差が生じる上に、織の加減や自然染色の個体差によっても表情に差異が生まれるという。

「本質的なものを求められている今、過去のものを学んでこそ、未来のヒントを見つけることができると思っていますので、かつてSupremeの店にデザイナーたちが集まり、鼓舞し合ったように、今後は真妙庵でも、月に1回ほど、吉田さんに古布のレクチャーをしていただき、いろいろなアーティストなどにインスピレーションを与えられればと考えています。」

繊維の顕微鏡の拡大図。機械で織られた現代の布とは異なる布の美しさがある。こうした織りの積み重なりが、布全体の気配を引き上げているのかもしれない。

また吉田は長年にわたり大麻繊維と糸を研究する中で、これまで手績みによる糸と手機でしか織ることができなかった100%の大麻繊維を、機械で織ることに成功した。

「良い布のことを妙と呼び、あら妙とは大麻布ことを指します。日本では大麻布は縄文時代から用いられ、武将の甲冑の下に着ることもありました。元々麻布や多摩川は大麻を水でさらしていた地でもあります。しかし今なぜ残っていないかというと、産業革命以降、機械紡績の波に乗れなかったことと、戦後GHQによって大麻の栽培が禁止されたことがあげられます。こうした大麻布のルーツについて、実際に大麻布に触れながら、学ぶこともできる場にしていきたいと思っています」

赤い部分は経年変化ではなく、経年”美化”したと細尾は語る

そんな真妙庵では、その極上のテクスチャーを持つファブリックブランドmajotae(まよたえ)の商品も販売する。この日、その第一弾としてTaiga Takahashiによるタイムレスなシャツコレクションがお披露目された。

古代より、人々の生活とともにありながら、人間の美意識を表現するために技術的・技巧的進化を遂げてきた「布」。中でも伝統あふれる京都に生まれたテキスタイルギャラリー「真妙庵」は、時代を超えた真の布(妙)を通して、私たちに新たなインスピレーションをもたらしてくれる場となるだろう。

Interview & Photo: H.F., Text: A.N.

テキスタイルギャラリー「真妙庵」

営業日:木~日曜日
時間:11:00~18:00
住所:京都府京都市中京区少将井町229-2 第7長谷ビル1階

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