2024年3月2日(土)~4月8日(月)まで、Lurf MUSEUMにて高屋永遠の個展「It calls: shades of innocence」が開催中!

本展は高屋永遠が資生堂みらい研究グループとの共同研究から考案し、「化粧原料のパール剤を画材に用いた新手法」で描画した「罔象」シリーズの初公開となる。また、高屋の代表的な「青」「水」「万象」「桜」シリーズをはじめ、別府の血の池地獄から採取した泥から色材を抽出し、その地のエネルギーを取り込んだ作品まで、新作70点を展示した高屋永遠の最大規模となる個展だ。

会場入り口では弊誌、バイリンガル美術書籍「ONBEAT」編集長 藤田博孝の寄せ書きが紹介されていますので、あわせてご覧ください!

高屋にとって作品制作とは、自らのいる空間の根源、あるいは「現象の立ち現れる源」を、身体を通して立ち上げる行為。鑑賞者が作品の前に立つ時、自らを「大いなる自然の循環」の一部として感じられるような、その空間にただ佇むことができるような装置として、高屋は絵画作品を制作している。

この没入的空間の探究は、青のシリーズ(2017年~)より始まった。制作の際、「 “青” という語で表現され得る色」のみ用いるという縛りによって、繊細な色のスペクトラムの探究が求められたことで、高屋は自ら色材を練って画材を作り始める。
工業的に規定されたレディメイドな絵の具がもたらす制限を取り払うこと。豊かな階調の色彩によって独自の奥行きを実現すること。それは、鑑賞者と共有し得る空間の経験を作り出すために必要不可欠な手法であり、それによって初めて、鑑賞者を日常から切り離された精神の空間へと誘う。

こうした色の探究は、他者や国内外の土地から色材を得て、自らの外にあるもののエネルギーを作品に取り込むことにも繋がっていく。資生堂みらい研究グループとの共同研究によって、化粧品顔料である「パール剤」を画材として用いる手法を身につけると、絵画空間の密度や奥行き、繊細さはさらに増していった。そうした外部性に呼応するように高屋自身の世界も広がり、その間旅や滞在制作で訪れた熊野の那智滝、別府の間欠泉は、「大いなる自然の循環」を経験し、さらに作品探究を深めていく契機となった。

本展にて新しく発表される「罔象」シリーズは、いわゆる事物としての自然〈ネイチャー〉 の描写ではなく、まさにそうした自然の奥にある自然、古来より伝わる仏教的な意味での自然〈ジネン〉であり、混沌と無限を有した自然そのものの経験を表現しようと試みたものだ。

罔象<開闢> / ∞: emergence(2024、パール材、顔料、油、麻キャンバス、1455×1455×30mm)

高屋永遠 展覧会ステートメント
本展で示したいのは、そうした精神のダイナミズムの先に現前する「無底の底」であり、あるいは「空」と呼ばれてきたものです。それが、私が「存在」の深淵と呼称してきたものでもあります。
そこには過去もなく現在もなく未来もなく、死さえもありません。
色彩は、その領域を示すことができる唯一の手段と考えられます。
そのようにして、意味形成としての絵画を退け、新たな地平を開こうと試みています。

魂の理由 / Where the soul has arrived.(2023、パール材、顔料、油、麻キャンバス、1455×1455×30mm)

自らの画風にたどり着く転機となった「青のシリーズ」から、作家としての現在地を示す最新作「罔象」までを総覧できる展示だ。
また、本展に合わせて制作したTシャツをLurf MUSEUMの会場およびオンラインストアにて販売するほか、4回にわたり有識者を招いたトークイベントが実施される。

▼高屋永遠|たかや・とわ
美術家・画家
1992年東京都生まれ。
ロンドン大学ゴールドスミス校を卒業後、現在東京を拠点に活動。
国内外の土地や植物、化粧原料などから自作した色材を用いて作品を制作する。
繊細な色のスペクトラムの探求と豊かな階調が織りなす独自の奥行きは、鑑賞者を日常から切り離された精神の空間へと誘う。
2019年より、アーティストや美術分野で活動する個人の交流を目的としたプロジェクトWHYNOTを主宰。
継続的に、美術を通した連帯とコミュニティー形成に取り組む。

3月10日 アーティストトーク

行為者としての創作、身体性への信頼
日時:2024年3月10日(日)16:00~17:00
ゲスト: 黒沢聖覇(キュレーター/ アーティスト)
会場:Lurf MUSEUM / ルーフミュージアム 2F
参加費:無料

【ゲストプロフィール】
黒沢聖覇(キュレーター/アーティスト)
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了。
草間彌生美術館、金沢21世紀美術館の学芸員を経て、現在、アジア現代美術を軸とした私設複合展示施設の設立プロジェクトに参画中。
主な企画展覧会に、「コレクション展1 それは知っている:形が精神になるとき 」、「時を超えるイヴ・クラインの想像力─不確かさと非物質的なるもの」(金沢21世紀 美術館)、「ZERO IS INFINITY 『ゼロ』と草間彌生」(草間彌生美術館)など。
タイラ ンド・ビエンナーレやモスクワビエンナーレなど、国際ビエンナーレの企画にもキュレー ターとして携わる。
また、国際交流基金からコミッションを受けるなど、他のアーティス トと協働して作品制作も行い、国内外の展覧会に出品している。

3月16日 アーティストトーク

画法分類からとらえた絵画の境界と未来(仮)
日時:2024年3月16日(土) 16:00~17:00
ゲスト:山本浩貴(文化研究者)、 山脇竹生(理学博士・資生堂研究員)
会場:Lurf MUSEUM / ルーフミュージアム 2F
参加費:無料

【ゲストプロフィール】
山本浩貴(文化研究者)
金沢美術工芸大学講師。
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教を経て現職。
主な著書に『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中公新書, 2019)、『ポスト人新世の芸術』(美術出版社, 2022)など。

山脇竹生(理学博士・資生堂研究員)
2018年4月株式会社資生堂入社。
博士(理学)。
2022年学芸員資格取得。
化粧品原料開発に携わったのち、平面芸術の知見を化粧品開発に応用すべく新たに研究を立ち上げる。
アーティストとの共同研究、ワークショップを複数実施し、化粧品原料の新規用途開発、塗布法の探求、ミュージアム運営・企画等に携わる。
大学院時代は共鳴ラマン分光法による生体分子の構造変化の観測と、構造変化によって生み出される機能についての研究を行っていた。

高屋永遠による作品解説ツアー

会期中に高屋永遠による作品解説ツアーを開催。
日時:毎週水曜、土曜 14:00~(45分程度)
会場:Lurf MUSEUM / ルーフミュージアム 1、2F
住所:東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1
参加費:無料
※予約不要
※3月16日(土)は実施なし

開催概要

会期:2024年3月2日(土)~4月8日(月)
開館時間:11:00~19:00
休館日:不定休
会場:Lurf MUSEUM / ルーフミュージアム 1F・2F
住所:東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1
入場:無料

詳細はこちら

『ONBEAT vol.18』では高屋永遠 作品を掲載しています

 

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