2023年4月15日(土)~2023年5月14日(日)まで、京都市内各所で「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」が開催中!
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭だ。千年の長きにわたって伝統を守りながら、その一方で先端文化の発信地でもあり続けてきた京都。その京都がもっとも美しいといわれる春に開催される。
日本および海外の重要作品や貴重な写真コレクションを、趣のある歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展開し、ときに伝統工芸職人や最先端テクノロジーとのコラボレーションも実現するなど、京都ならではの特徴ある写真祭を目指している。
第11回目を迎える今年は「BORDER」をテーマに、京都⽂化博物館別館、⼆条城⼆の丸御殿台所・御清所、両⾜院、出町桝形商店街など19カ所を会場に、15のメインプログラムを展開している。
誉田屋源兵衛 黒蔵では、山内悠の「自然 JINEN」With the support of FUJIFILMを開催。
山内悠は屋久島に 9 年にわたり何度も通い、毎回単身で約1カ月を森の中で過ごした。大自然の中で自分の中にある不安や恐怖心に気づき、自然との距離を感じたことからこの旅は始まる。
猿やほかの動物は何事もなく活動しているのに、なぜ人間である自分は恐れを抱くのか、この感覚は何なのか。昼夜問わず森の中を歩き続け、自身の内なる恐怖心や感情と向き合う中、山内はさまざまな巨木に出会い 、その存在によって外界へと意識が引き戻された 。
その巨木を撮影することで「樹と自分自身がつながり、自然と自分との境界線が曖昧になった」と山内は語る。自分自身も何も恐れる事のない自然の一部なのだと悟った瞬間だった。境界を引いていたのは実は自分だったのだと気付き、いかに自分の意識が作り出した幻想(表象)の中に居たかを実感するようになった。そして、このような内(自身)と 外(外界)の行き来を何度も繰り返した森での最後のとき、闇夜にヘッドライトで照らされて現れた恐怖を煽る森の樹々が、夜明けには光に照らされた神々しい存在へと変化するさまを目の当たりにした。そのとき、ずっと抱えていた恐怖心は消えていた。目の前に在る現実とは何なのか、山内はその疑問をずっとカメラを通して問いかけてきたが、それは自らの内にある世界の投影であることを写真が見せてくれたと語る。
「自然(しぜん)」という言葉は、明治期以降「Nature」の訳語として人間の対義として用いられるようになったが、日本には古来より「自然(じねん)」という考えがあり、「おのずからしかる」と読むように、人間をも含む全ての現象は、ありのまま、あるがままの状態である事を意味している。
こうして生まれた本作「自然|JINEN」は、山内が体感した心の状態と森との関係性が異次元なイメージとして写真に投影されている。その自ずと変化して行くありのままの光景には、私たち人間の存在のありか、それ故の世界の闇と光を見ることができるのではないだろうか。
アーティストプロフィール
山内 悠 / Yu Yamauchi
1977年兵庫県生まれ。
自然の中に長期間滞在し、自然と人間の関係性から世界の根源的なありようを探求している。
独学で写真をはじめ、スタジオアシスタントを経て制作活動を本格化。
富士山七合目にある山小屋に600日間滞在し雲上の来光を撮り続け、山での暮らしから宇宙へ意識が広がる体験の中で制作した作品『夜明け』(赤々舎)を 2010年に発表。
2014年には、『夜明け』の制作時に滞在していた山小屋の主人に焦点をあて、山での日々から人間が包含する内と外の対話を著した書籍『雲の上に住む人』(静山社)を刊行。
2020年には、5年をかけてモンゴル全土を巡り各地で形成される時間や空間、相対的な現実や多元的な世界構造などを探求した作品『惑星』(青幻舎)を発表した。
そして2023年、屋久島に9年間通い、毎回単身で森の中に1ヶ月近く過ごしながら自然と人間の距離感を探り続けた作品「自然 JINEN」を発表する。
長野県を拠点に国内外で展覧会を開催し続けている。
開催概要
開催日:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:4月19日(水)・26日(水)、5月10日(水)
会場:誉田屋源兵衛 黒蔵
住所:京都市中京区室町通三条下ル 西側
アクセス:地下鉄烏丸線または東西線「烏丸御池」駅 6番出口から徒歩4分
入場:大人 800円、学生 600円(学生証の提示)