沓名美和氏

2023年1月28日(土)~2月13日(月)まで「Study:大阪関西国際芸術祭 2023」のプログラムの一つとして、沓名美和氏キュレーションのもと、「二次元派展」が大阪府立中之島図書館にて開催中だ。

「Study:大阪関西国際芸術祭 2023」とは

2025年に世界最大級のアートフェスティバル「大阪関西国際芸術祭」の開催を目指し、「アートとヒト」「アートと社会」の関係性や、アートの可能性を検証し学ぶ(Studyする)ためのプレイベントだ。

第2回となる今回は、関西に縁あるアーティストの展覧会をはじめ、国内外のギャラリーが出展し誰もが作品購入を楽しめるアートフェア、そしてアートの可能性を引き出すべくテーマ性を持ったカンファレンスの実施、さらにはレストランを会場に、期間限定で食とアートのコラボレーションを実現するアートダイニングなど、芸術祭会期の17日間、アートを『みる』『買う』『食す』『学ぶ』、多彩なプログラムを実施する。

「二次元派」の「二次元」とは、日本のゲームやアイドル文化、”可愛い” 価値観、若者のカルチャーやファッションなど、より広い意味での “日本らしさ” を指す言葉だ。2020年頃から中国を中心とする東アジアのカルチャーで、「二次元(二维)」という言葉が喧伝されるようになった。

そんな「二次元」的な世界観を持つ日本人アーティストの作品が、ここ数年、SNSをきっかけに東アジアで爆発的な人気を獲得している。しかしそんな現状を多くの日本人はいまだ知らず、また体系的に論じる土俵も確立されていない。

そこで約20年に渡り東アジアの現代アートシーンを間近に見続け、今日の日本現代美術の変遷を検証してきた沓名美和氏キュレーションによる「二次元派展」では、現在のポップカルチャーに根差した新しい表現者たちと、彼らを取り巻く日本のアートシーンの現在地、そしてアジアの若者に共通する感性や時代感覚を読み解くことを試みている。

沓名美和氏 コメント

芸術祭やビエンナーレ、トリエンナーレなどの大きな役割として、時代をどう切り取るかがあると思います。私は今までアジアを中心に外側の視点から日本を見てきましたが、その中で非常に共感したアートとして、村上隆さんが提唱し、欧米に向けて発信している「スーパーフラット」という概念があります。

「スーパーフラット」以降、アニメーション、漫画、サブカル、そしてボーカロイドからファッションまで、そういった文脈を持つアートに非常に共感が集まる現象を見てきました。これは近年とくに見られる現象ですが、それは一体どういう文脈から起こっている現象なのか検証しようとする中で「二次元派」というものを立ち上げ、取り組んできました。

今までの現代美術史の中で何がどう接続されてきたのか、またどうして今日のアートシーンが起こったのか、合わせて見ていただくことも非常に重要だと考えたので、年表なども作って掲示しています。

今回は総勢、17名のアーティストに出ていただきました。

2階には、サブカルからカルチャーへというコーナーを作っています。2000年代後半にネットカルチャーやそこから派生するサブカルチャーに接続してきたアートを論じる、カオスラウンジというグループが出てきたのですが、そこで勉強されていた宏美さんにキュレーションをお願いして、主にサブカルと接続しているアーティストを展示しています。

またニューヨークを拠点に活動していて、主に「カットアンドペースト」という独自の手法で作品を制作している山口歴さんの作品から、《OUT OF BOUNDS》シリーズを展示しています。これはブラシストローク自体が立体的な形になって出てきた作品です。彼はストリートカルチャーやヒップホップなど、「HYPE」と表現される文脈の中から、自分がかっこいいと思う形をニューヨークで追い求めてきたアーティストで、近年アジアで多くの共感を得ています。

山口歴 《SHADEZ OF BLUE NO. 6》©︎ 2022-2023 MEGURU YAMAGUCHI, ©︎ 2022-2023 GOLD WOOD ART WORKS

BYNAMさんはポートレートのシリーズをメインとして、普段はトップスターやマリリン・モンローなど、そういった時代を象徴するような人たちを描いていますが、今回はトランスジェンダー、性の境界がない人たちをテーマに作品を作っていただきました。

BYNAM 左から《Standing 1》、《Standing 2》、《Standing 3》 2023

仲 衿香 コメント


普段私は、SNSのアイコンや街中にある道路標識など、現代にある記号をモティーフに絵画を制作しています。今回は大阪でやらせていただくということで、この土地に根差したモティーフで作品を制作したいと思い、11月頃に視察に来て、自分の足で歩いてモティーフを探しました。

例えば「ザ・大阪」だなと思ったグリコや「くいだおれ太郎」の人形や、その近くにあった道路工事のマークのようなものを描きました。また、もう一作品は、会場である大阪府立中之島図書館のホールに掲げられている世界の偉人の名前から、唯一の日本人である菅原道真の文字を作品にしました。

これらの作品は、タイトルがGoogle Mapの座標になっていますので、ぜひ検索してモティーフのある場所を見ながら鑑賞してもらえればと思います。

ちなみに私の作品の特徴の一つとして、アクリル絵の具を厚塗りにすることがありますが、そうすることで、元の画像に少しズレが生じて、認知のズレが少し生まれると思うんですね。これは、なぜ現代の記号を描いているかということにもつながっています。今生きている方々はなんの迷いもなくスッとモティーフが入ってくると思いますがこれが10年後、100年後だと、鑑賞者がこの絵を見ても何が描かれているのかわからないかもしれません。そうなると見えてくるのは、モティーフではなくて物質性などかもしれないですし、そういう長期スパンで作品の見え方がどうなっていくのかを考えて制作しています。

山口真人コメント

もともと僕は、現代の肖像画として、インスタやTikTokなどのSNSにいるような女性を描いていました。活動をしていく中で、たまにステッカーなどを販売しているのですが、メルカリやヤフオクですごい高値で販売されるようになっているんです。本来、アートとして作品を作って、その派生としてステッカーを作っていたのですが、買う側からしてみるとどちらがオリジナルなのかわからない、そんな状況が生まれてしまったのです。この作品はそれをシニカルに捉えて、ステッカー自体をオリジナルの作品のようにキャンバスに描いてしまおうと作った作品です。

僕はSNSなど、現代のエッセンスを切り取って、作品を作っているので、こういう歴史のある場所に展示していただけると、コントラストが出てありがたいなと思っています。

「二次元派展」の会場となる大阪府立中之島図書館は、間もなく120歳を迎える。明治以前の大阪の資料を中心に、大阪のいろいろな資料をすべて網羅し、さまざまに移り変わる時代をずっとこの地で見てきた歴史のある建物だ。そんな会場だからこそ、今の日本のアートシーンを切り取った「二次元派」の作品群の個性が際立つ展示になっている。

また、二次元派は、2023年2月10日(金)~2月12日(日)グランフロント大阪で同時開催されるアートフェアにも参加する。本展と合わせてぜひ足を運んでほしい。

松山しげき 《Self-portrait for multiple accounts #08》2023

宏美 《神様とのつきあい方 高梁川扁》 2022

下村悠天 《⊥ #48》2023

開催概要

開催日:2023年1月28日(土)~2月13日(月)
時間:11:00〜19:00(最終日は〜17:00) ※最終入場は閉館30分前
住所:大阪府大阪市北区中之島1丁目2−10 本館2F多目的スペース1、3F多目的スペース2
アクセス:京阪電車 京阪本線「淀屋橋」駅 1番出口より徒歩4分
京阪電車 京阪中之島線「大江橋」駅 6番出口より徒歩4分
京阪電車 京阪中之島線「なにわ橋」駅 1番出口より徒歩4分
大阪市営地下鉄 御堂筋線 「淀屋橋」駅 1番出口より徒歩4分
共通パス:必要(電子決済に限り、現地販売あり)
※車いすの方は、建物西側正面大階段両脇の出入口から入館し、図書館の係員にお申し出ください。

詳細はこちら

二次元派アーティストトーク
日時:
2023年1月28日(土) 13:00〜14:00
登壇者:沓名美和、きゃらあい、下村悠天、宏美会場:大阪府立中之島図書館

▼Study:2023キュレータートーク
日時:2023年1月28日(土)19:00〜20:00
登壇者:南條史生(キュレーター/美術評論家/森美術館特別顧問)、加須屋明子、沓名美和、丹原健翔、パヴェウ・パフチャレク、藪本雄登(プロダクション・ゾミア)(以上、本芸術祭キュレーター)、鈴木大輔(株式会社アートローグCEO)
※登壇者は変更になる可能性があります
会場:船場エクセルビル 2F

▼「二次元派」展を通して考える日本ポップアートの現在地(仮)
日時:2023年2月11日(土)13:00〜13:45
登壇者:沓名美和、松山しげき、山口真人
会場:グランフロント大阪 北館B2Fコングレコンベンションセンター

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