2021年6月6日(日)~6月12日 (土) まで、渋谷のオルタナティブスペースelephant STUDIOにて、Yuta Okudaの個展「With Gratitude」が開催される。
1987年、愛知県で生まれたYuta Okudaは、日本とイギリスでファッションデザインを学んだ後、アパレル企業でのファッションデザイナー経験を経て、2016年に独立。アーティストとして絵画制作などの活動をはじめた。
2021年現在、 Yuta Okudaは「with gratitude」というテーマで主に「花」をモチーフに絵画を描いている。 コロナ禍の今、 当たり前だと思っていたことがそうではなくなったと感じたことをきっかけに、 感謝の気持ちを一輪一輪に込めているそうだ。
モチーフについては、 「自己をサルベージする中でたどり着いた、 幼少期の記憶がもととなっている」と語る。 サルベージとは直訳すると救出、 救助などを意味するが、 自己を探究する姿勢をこの言葉で表現しているのであろう。 「祖父が庭師だったこともあり、 幼い頃から植物や生き物を描くことが自然だった」こと、 また「生や死について考えるうちに、 生態系の食物連鎖に思いをはせるようになり、 そのはじまりが花であると思った」ことが関係しているようだ。 今はまだ自己サルベージの過程と語るが、 その中において表出し、 このコロナ禍に選び取ったモチーフが「花」なのである。
その画面に目を向けると、 まず目に入ってくるのは赤や黄、 金など、 鮮やかな色彩である。 しかし、 驚かされるのはそのマチエールだ。 そこにあるのは絵具の物理的な偶然性によって生み出された不規則な凹凸であり、 同時に、 Yuta Okuda自身の手の痕跡、 身体動作の結晶なのである。 そこに細い線を描き足していくことでひとつひとつの花にしていくのだそうだ。 近くでみると花びらは下を向いたり裏返ったりしているのだが、 一見すると花々は正円に近い形態で、 正面性が強く感じられる。 また、 背景や茎を直線的に描き、 正円形の花々と組み合わせることによる平面構成的な画面も特徴だ。 デザイナー出身のYuta Okudaならではの感覚から生み出されるのであろう、Yuta Okudaも「花を描いてはいるが特定の花というわけではなく、 花に見えなくてもいい」と語っている。
単に具象としての花を描いているわけではない。 いくつもの記憶の中の視点のそれぞれを、 平面という空間に交錯させているのである。 そしてその交錯が、 コロナ禍というきっかけで生み出された行為であることも忘れてはならない。
また、土産物などの動物の置物にペイントをした作品も見どころのひとつだ。「リサイクルショップなどで価値がないとされているものに、 自らがペイントすることで付加価値が生まれることに喜びを感じる」と言う。 たしかに、どこにでもあったはずの置物が、 Yuta Okudaのペイントによって鮮やかに生まれ変わっている。
「立体を制作するのは展示をイメージするため」であるそうだが、 それも自己サルベージの中でデザイナーを経験したことを肯定し、 それが結果として空間デザインの欲求として表れたものであろう。
Yuta Okudaの自己サルベージは尽きることがない。ぜひこの機会にYuta Okudaの世界を体感してほしい。
◆本展プロデュース:WATOWA GALLERY
現在の日本のストリートカルチャーやファッション、 あるいは独創的かつ先進的なテクノロジーやジャパニーズフィロソ
◆開催概要
開催日:2021年6月6日(日)~6月12日 (土)
※アポイント制、こちらのリンクよりご予約ください
時間:12:00~19:00
住所:東京都渋谷区渋谷2-7-4 elephant STUDIO 1F-2F
入場料:¥500から自身で金額を決定するドネーションシステム
※500円をミニマムに、 入場料を自身で決定し、 それが若手アーティスト支援のためのドネーションとなるシステム
※6月10日(木)は無料
問合せ先:info@watowa.jp
Instagram: @watowagallery