東京ステーションギャラリーで、7月17日より9月6日まで「東京ステーションギャラリー「開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―」が開催中。
昨年100年目を迎えた造形学校「バウハウス」は、1919年ドイツの古都ヴァイマールに、建築家ヴァルター・グロピウスにより開校された後、わずか14年でナチスの弾圧を受けて閉鎖されたものの、造形教育に革新をもたらし、今日にいたるまでアートとデザインに大きな影響を及ぼしている。実験精神に満ち溢れたこの学校では、ヴァシリー・カンディンスキー、パウル・クレーなど時代を代表する芸術家たちが教師として指導にあたり、優れたデザイナーや建築家が育ち、画期的なデザインが生まれた。
本展では、そんなバウハウスの授業の中でも、入学した学生が最初に受ける基礎教育で、教師たちが試みたユニークな授業内容を紹介する。また、そこから発展した様々な工房(金属、陶器、織物、家具、印刷・広告、舞台など)での成果や資料など約300点を展示。加えて、日本からバウハウスに留学した水谷武彦、山脇巌、山脇道子、大野玉枝の4名による作品と資料を初めて一堂に集めて紹介する。
◆展示構成
1.学校としてのバウハウス
「すべての造形活動の最終目標は建築である」
グロピウスによるバウスハウスの設立宣言は、この言葉から始まる。ここには造形芸術の各ジャンルを区別して考えるのではなく、建築の下に統合しようとする強い意志が示されている。バウハウスは、旧来のアカデミー教育を全面的に否定し、科学技術が発展する時代に即して、社会に目を向けた造形活動を行う、建築家やデザイナーといった新たなタイプの芸術家を育成し、世界を変革していこうという高い理想を抱いていた。その主張は、学校の教育カリキュラムの図にも反映されており、図には基礎教育、工房教育、建築教育の三段階で構成されている。入学した学生は、基礎教育として様々な素材や構造を把握する能力や、対象をみて分析し表現する能力など、特定の分野に偏らない芸術の基礎となる包括的な教育を受けたのち、希望する工房に入り専門的な教育を受け、最後に建築教育を学ぶ。
本章ではバウハウスの教育で核となる理念などについて垣間見ることができる。
2.バウハウスの教育
バウハウスでは教師たちそれぞれの芸術的発想と哲学から独自に授業を組み立てた、ユニークな授業が行われていた。単に決まったやり方をマスターさせるのではなく、学生たちに試行錯誤させ、気づかせ、考えさせる授業が行われた。
本章では、イッテンやモホイ=ナジ、アルバース、クレー、カンディンスキー、シュレンマー、シュミットの7人の教師の授業や、学内で非公式に開かれた「色彩ゼミナール」などについて、実際に授業課題で制作された学生たちの作品などをもとに紹介する。
3.工房教育と成果
バウハウスの工房では、ドイツの伝統的なマイスター制度に則り、教師はマイスター(親方)、学生はレーリング(師弟)、そして職人試験に合格するとゲゼレ(職人)と呼ばれた。工房では造形マイスターと技術マイスターによる一工房二マイスター制で教育され、生徒たちは「バウハウス展」で作品を発表した。また同展は、学校としての教育実践の場としてだけではなく、新たな時代にふさわしいデザインを生み出す実験場としての意味合いも強めていった。
本章では、家具や金属、陶器、織物、壁画、印刷・広告、版画、舞台、建築など、バウハウスのさまざまな工房の活動や、その活動が周囲の変化に伴い、組織自体も変容したバウハウスのダイナミックさや柔軟さを垣間見ることができる。
4.「総合」の位相
旧来の美術教育において芸術家たちはそれぞれが違いに孤立していたが、バウハウスでは全ての造形活動をそうグオするというビジョンのもとに、独自の教育プログラムを実践。特に工業化が進んだ当時、技術と芸術を積極的に結びつけ、バウハウス展では実験住宅を建設、建築の工業化の方向性が示された。また、その室内の家具調度を各工房が行うなど、バウハウスが目指す総合力を具現化したと言える。
本章では実験住宅の様子や、家具・調度、さらにバウハウス展開催時に上演された舞台などを紹介する。
5.バウハウスの日本人学生
国際的に注目を集めたバウハウスは、さまざまな国籍の学生が集い、学ぶ場となった。日本人も例外ではなく、4名の学生が登録されている。
最後に本章では、その4名の学生の作品や、その後の4名の活動により、どのようにバウハウスの教育内容や造形感覚が日本に広まったのか、紐解いていく。
◆開催概要
開催日:2020年7月17日(金) 〜 9月6日(日) ※日時指定予約制
休館日:月曜日(8月10日、8月31日を除く)
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで、最終入館は30分前まで)
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1 東京ステーションギャラリー
電話:03-3212-2485
入館料:一般1,200円、大学生・高校生1,000円、中学生以下無料