国立新美術館にて「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」が開幕した(~11月3日まで開催)
同展には、東京と密接な関係にあるマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品など90タイトル以上のコンテンツと、500点以上のマンガ原画やアニメやゲームの制作資料などが集結。国内最大級のMANGA総合展となる。
会場の中心には、東京の街を1/1000の縮尺(幅約17m×長さ22m)で再現した、大迫力の都市模型が展開され、その周りを東京を舞台としたアニメ・ゲーム・特撮作品の映像などが囲む。
それらの作品の中で、東京という都市がどのように表現され、また現実の都市・東京がどのように虚構の影響を受けてきたのか、<虚構>の東京と、<現実>の東京の相関関係を見ることで、多様な作品が生み出されてきた背景の一端に触れることができる。
◆展示構成
イントロダクション《1/1000巨大東京都市模型》
Sec1.破壊と復興の反復
日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品では、未曾有の天災や未知の生命体の襲来などによって首都・東京が壊滅的な打撃を受ける描写がよくなされる。半ば定番にもなっているそうした描写の背景には、東京という都市が実際に幾度も破壊され、そのたびに奇跡的な復興を遂げてきたという歴史があると言える。本セクションでは『AKIRA』や『ゴジラ』シリーズ、『ヱヴァンゲリヲン」シリーズなど「破壊と復興」をテーマにした作品が並ぶ。
戦後60年以上にわたりシリーズが作られ続けている《ゴジラ》は、東京に破壊と復興の反復をもたらし続ける存在でもある。その破壊の仕方は、単なる侵略者ではなく、神話の中の荒ぶる神のようにも見え、災害大国・日本の住民のリアルな感覚を感じることができる。
SF漫画の金字塔ともいえる《AKIRA》は、核爆発級の被害を受けた後、復興の最終段階にある「ネオ東京」が描かれる。本作では、震災や大火による破壊と、それに続く復興を繰り返してきた東京そのものの歴史を、物語の構造に重ねて読み解くことができる。
《エヴァンゲリオン》シリーズは、”使徒”と呼ばれる謎の生物との死闘だけではなく、死闘の合間にある都市や主人公たちの日常が描かれ、東京の歴史を早回ししたような構成になっている。会場では《エヴァンゲリヲン新劇場版:序》制作資料(複製)などが展示されている。
Sec.2 東京の日常
都市の破壊と復興という非日常の合間には、市井の人々の日常生活がある。本セクションでは「プレ東京としての江戸」「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」「世紀末から現在まで」と3つに分類された作品を通して、人々の生活の場としての東京の姿とその変遷を垣間見ることができる。
「プレ東京としての江戸」では、《さくらん》など、東京の源流となる江戸の街を紹介。マンガ特有の表現の力により、当時の生活のリアリティを構築し、物理的には喪失した東京の歴史の奥深さを感じとることができる。
大衆文化として流通した浮世絵には、当時人気を博した役者や遊女だけではなく、江戸時代の人々の暮らしぶりが描かれており、今なお当時を描くマンガなどにインスピレーションを与えている。
「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」では、《サクラ大戦》や《るろうに剣心》、《はいからさんが通る》など江戸から東京へ移り行く時代を描いた作品が並ぶ。《はいからさんが通る》では、急激に近代化が進んだ当時の環境が、当時西洋風を指向する人を表した「はいからさん」のニックネームで呼ばれるヒロインを核に表象されており、作品の魅力の柱をキャラクターが担う形で構築される、日本のマンガの特徴をよく表している作品といえる。
「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」では、《あしたのジョー》《シティハンター》《ルパン三世》《東京エデン》《美少女戦士セーラームーン》など戦後復興から高度経済成長、過密都市などを描いた作品が並ぶ。これらの作品は読者の同時代的なリアリティや願望を基盤として、同時代を舞台とする物語を描いており、同時代の東京の姿や、東京に住む人々の生活を多角的に捉えることができる。
「世紀末から現在まで」では《ソラニン》《時をかける少女》《3月のライオン》《リバースエッジ》など日常の小さな闇と小さな幸せを描いた作品が並ぶ。これらの作品群からは、バブル崩壊後、東京のリアリティが、きらびやかな都市風景から日常の営みへとシフトしていったことが伺える。
日本の停滞に伴い、東京の特権性が衰弱すると、相対的にこうした個々の街の個性やストリートカルチャーが、物語を想起させる舞台装置となった。会場では、《新宿スワン》《龍が如く》などの渋谷・新宿・秋葉原など街の個性(キャラクター)が際立つ作品が並ぶ。
Sec.3 キャラクターvs都市
最後は現実の都市空間に召喚されたキャラクターたちが並ぶ。《こちら葛飾区亀有公園前派出所》《君の名は》などに見られる聖地巡礼の文化や、《ラブライブ》と神田明神のコラボレーションなど、作品の中の都市が、観光資源としての価値や機能を持つこともある。また《初音ミク》とNewDaysキャンペーンのコラボレーションなど、キャラクターはPRマスコットとしても存在する。本セクションでは、そうしたキャラクターと生身の人間とが共存する東京の、アンビバレンツな魅力を体感できる。
◆開催概要
開催日:2020年8月12日(水)~ 11月3日(火・祝)※事前予約制
開館時間:10:00~18:00 (最終入館は30分前まで、当面の間、夜間開館なし)
休館日:毎週火曜日 ※9月22日、11月3日を除く
住所:東京都港区六本木7-22-2 国立新美術館 企画展示室1E
当日入館料:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円