激動の時代の中で、必死に生きようとした人びとの息づかい
横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで
文=ONBEAT編集部(一部オフィシャルサイト等参照)、写真=ONBEAT編集部
幕末の開港によって、横浜は東西の文化が往来する窓口となりました。西洋の文化や技術が日本に伝わり、日本の文化や伝統技術が海外に発信されました。さらに両者の衝突と融合によって、新たな文化が育まれました。「ランデブー」という言葉には「艦隊の集結地点」という意味もあります。横浜は東西の文化という艦隊が集結・対峙した場所と言えます。

「横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」展示風景 写真:ONBEAT編集部
世界を驚嘆させた眞葛焼、和洋折衷様式の横浜彫刻家具、西洋と日本の技術が融合した横浜写真。これらの品々からは、激動の時代の中で、必死に生きようとした人びとの息づかいが伝わってきます。

「横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」展示風景 写真:ONBEAT編集部
横浜で生まれ育った実業家の山本博士氏は、郷土横浜を深く愛し、その文化や歴史を伝える様々な文物を国内外から蒐集されています。コレクションは眞葛焼、横浜写真、横浜彫刻家具、洋楽器など、1000点を優に超えます。今回はその中から約200点の逸品を紹介します。西洋と東洋が出会った街、横浜。そこで生み出された特色ある品々で充たされた空間に身を置いた時、私たちは何を感じ取るのでしょうか。
みどころ
1.世界を魅了した眞葛焼、約50点を紹介
明治期の横浜では欧米向けの陶磁器などを扱う商人や職人たちが集まり、輸出産業として成長した。その中の泰斗が世界を魅了した陶磁器、眞葛焼を生み出した初代宮川香山。初期の作風は、器に立体的で精緻な花鳥などの細工を施した「高浮彫り」である。その後、明治15(1882)年頃から、描いた下絵に透明な釉薬をかけて焼成する「釉下彩」の技法を用いるようになる。シンプルな器形に洗練された色彩の優美が高い評価を得た。

「横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」展示風景 写真:ONBEAT編集部
2.横浜写真 ―世界に伝えられた横浜の風景
明治期に横浜を訪れた西洋人は、美しく彩色された日本の風景・風俗写真に目を奪われた。西洋伝来の写真技術と、日本の伝統技術である絵付け・蒔絵などが結びついて花開いたのが、「横浜写真」である。そこから当時の横浜の街と人びとの姿がよみがえる。

「横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」展示風景 写真:ONBEAT編集部
3.イギリスから里帰りした横浜彫刻家具
明治中期から昭和初期にかけて、横浜では欧米人向けの装飾性の高い木彫り家具が製作され、「ヨコハマ・ファーニチャー」として名をはせた。宮彫師たちが腕を振るい、西洋人の東洋趣味にあわせて、花鳥風月などが洋家具に立体的に彫りこまれた。輸出用であったため、国内に残されているものが極めて少ない。

「横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」展示風景 写真:ONBEAT編集部
4.幕末の歴史を伝える勝海舟の書状
山本氏は、神奈川台場地域活性化推進協会の理事長をつとめており、コレクションには、美術工芸品以外にも多数の歴史資料が含まれます。本展ではトピックの1つとして神奈川台場の古写真や絵はがきをはじめ、設計した勝海舟の書状や肖像写真を展示します。

「横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」展示風景 写真:ONBEAT編集部
ONBEATが注目するポイント
注目ポイント1:世界を驚嘆させた「眞葛焼」の圧倒的造形力
初代宮川香山が生み出した眞葛焼は、日本の伝統技術が西洋の感性と出会い、新たな高みへと昇華した代表例です。特に初期の作風である「高浮彫り」は、器の表面に立体的で精緻な花鳥などの細工を施したもので、その超絶技巧は世界を魅了しました 。本展では、その眞葛焼が約50点も紹介されます。日本の職人が、輸出という新たな舞台で生み出した革新的な表現を間近で見られる貴重な機会です。
注目ポイント2:和洋折衷の極み「横浜彫刻家具」の希少な里帰り
明治中期から昭和初期に欧米人向けに製作された「ヨコハマ・ファーニチャー」は、本展の大きな見どころの一つです。西洋の家具様式に、日本の宮彫師たちが花鳥風月などを立体的に彫り込んだもので、まさに和洋折衷の様式美を確立しました 。その多くが輸出用であったため、国内に現存するものは極めて少ないとされています。イギリスから里帰りした作品 など、失われたかと思われた横浜の「ルーツ」に再び出会える点に注目しています。
注目ポイント3:技術の融合が生んだ「横浜写真」の色彩
西洋伝来の写真技術と、日本の伝統技術である絵付けや蒔絵が結びついて花開いた「横浜写真」も展示されます。美しく彩色された当時の日本の風景や風俗は、横浜を訪れた西洋人たちを魅了しました。異なる技術が出会い、融合することで生まれた新たな視覚表現は、まさに横浜という土地が生んだアートフォームです。
注目ポイント4:横浜の文化を未来へ繋ぐコレクターの情熱
これらの貴重な品々が、老舗洋菓子店「横浜モンテローザ」の代表であり、「宮川香山 眞葛ミュージアム」の運営も行う山本博士氏 という、一人のコレクターの情熱によって集められた点も見逃せません。横浜の歴史と文化を深く愛し、その継承に尽力する氏のコレクションを通じて、私たちは横浜の文化的な「ルーツ」の豊かさを再発見することができます。

「横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで」展示風景 写真:ONBEAT編集部
開催概要
横濱 東西文化のランデブー 眞葛焼、横浜写真から横浜彫刻家具まで
会期:2025年10月11日(土)~2026年1月12日(月・祝)
開館時間:9:30~17:00(券売は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は次の平日が休館)/年末年始(12月28日~1月3日)
会場:横浜ユーラシア文化館3階企画展示室・2階常設展示室(一部)
観覧料:一般 800円、小・中学生、横浜市内在住65歳以上 400円
・11月15日(土)・16日(日)は第5回横浜スタチュー・ミュージアムのため、観覧無料。
・本企画展の観覧券で2階常設展示室、4階横浜都市発展記念館もご覧いただけます。
・毎週土曜日は小学生・中学生・高校生は無料です。
・「身体障害者手帳」などをお持ちの方は無料です。入館の際に手帳をご提示ください。
公式サイト:http://www.eurasia.city.yokohama.jp/exhibitions_yamamoto/