6会場で現代アートの「いま」を多角的に発信
TENNOZ ART WEEK 2025
文=ONBEAT編集部(一部オフィシャルサイト等参照)、写真=ONBEAT編集部
TENNOZ ART WEEKは、アートシティ天王洲に国際水準のアートコンテンツを誘致し、国内外のアート関係者が集う場を創出することで、日本と海外のアートシーンをつなぎ、国際文化観光の活性化を目指すイベントです。

ナイル・ケティング「Blossoms – fulfilment」展示風景 写真:ONBEAT編集部
3回目の開催となる今回は、ナイル・ケティングによる倉庫空間に着想を得たパフォーマティヴ・インスタレーション、諏訪敦の約3年ぶりとなる大規模個展、複数ギャラリーによるグループ展、伝統画材を使ったワークショップなど、多彩なプログラムを寺田倉庫の全6施設で展開します。ジャンルや世代を超えた作品を通じて、現代アートの“いま”を広く紹介します。

「諏訪敦|きみはうつくしい」展示風景 写真:ONBEAT編集部
舞台となる天王洲は、ギャラリー、ミュージアム、画材ラボ、保税倉庫などが複合的に集まるエリアで、アートの展示・制作・保存・流通といった多様な機能を支える環境が整っています。倉庫街としての面影を残しながら、アートを軸としたまちづくりが進んでいます。国際的なアートフェアとアートシティ・天王洲が連携することで、アートを通じた文化観光の促進と、日本の現代アート市場のさらなる発展を目指します。

諏訪敦「Untitled」2007 写真:ONBEAT編集部

「諏訪敦|きみはうつくしい」展示風景 写真:ONBEAT編集部
ハイライトプログラム
1.寺田倉庫G3-6F:ナイル・ケティングによる、日本初公開のパフォーマティブ・インスタレーション
パフォーマティブなインスタレーション作品で国際的に注目されるアーティスト、ナイル・ケティングが、日本で約10年ぶりとなる大規模な作品を発表します。本作は2024年にリスボンで発表された「Blossoms」のシリーズとして、天王洲の倉庫空間に合わせて展開される新作です。今日における鑑賞という行為の意味や価値の可視化といったテーマを扱いながら、「鑑賞すること」や「鑑賞者」とは何かを問いかけます。作品は会場内にとどまらず、都市空間へと広がる構成です。
2.TERRADA ART COMPLEX:入居ギャラリーとパートナーギャラリーによるグループ展示
国内最大級のギャラリーコンプレックス「TERRADA ART COMPLEX」では、入居ギャラリーとパートナーギャラリーによるグループ展示を開催します。国内外で活躍する作家やギャラリーが集い、現代アートの「いま」を伝えます。
3.WHAT MUSEUM:諏訪敦による約3年ぶりの大規模個展
現代アートと建築のミュージアム「WHAT MUSEUM」では、諏訪敦にとって約3年ぶりとなる大規模個展を開催します。新作の静物画や肖像画を含む約 80 点を展示し、現在に至るまでの制作活動の変遷を多角的に紹介します。
4.PIGMENT TOKYO:絵絹(えぎぬ)を使い、江戸時代の技に触れるワークショップ
画材ラボ「PIGMENT TOKYO」では、東洋美術で伝統的に用いられてきた「絵絹」に花を描くワークショップを開催します。透けるほど薄い絵絹を使い、裏彩色や柔らかなグラデーションの表現に挑戦します。日本の伝統色を重ねながら、江戸時代の絵師たちが用いた繊細な技法に触れていただけます。
5.WHAT CAFE:「自分らしさ」をテーマに、19名の作家が多様な表現で問いかける企画展
アートギャラリーカフェ「WHAT CAFE」では、板橋令子をゲストキュレーターに迎え、若手からベテランまで、アーティスト約15名の作品を紹介します。シーソーのようにあらゆる価値観がゆらぎ動く現代社会において、多様な作品群との出会いにより「自分らしさ」について再考する時間を提供します。会期中には、出展作家による体験型イベントも予定しています。
6.BONDED GALLERY:伝統技法と現代アートを融合する3作家による展示
BONDED GALLERYでは、日本の伝統技法と現代アートを融合させた気鋭の作家、奈良祐希、能條雅由、久野彩子の3名による作品を紹介します。彼らは、建築と陶芸、写真と記憶、金属と都市といった異なる領域を横断しながら、私たちが無意識に認識している「境界」という概念に揺らぎをもたらします。あらゆるものが数値化され、明確に定義されがちな社会において、三者三様の表現からは、そのはざまに潜む「曖昧さ(Blurred)」の美しさが立ち現れます。陶芸、箔、鋳金など、日本の伝統的な技法を現代的に再構築した作品を通じて、明確な境界のあいだで揺らめく作品世界をご体感いただけます。
ONBEATが注目するポイント
「TENNOZ ART WEEK 2025」は、現代アートの「いま」を多角的に体感できる、非常に刺激的なイベントです 。国際的なアートフェア「Tokyo Gendai」と連携し、アートの制作、保存、流通の拠点である天王洲の街全体が舞台となります 。ONBEATとして特に注目したいポイントを3つご紹介します。
1.日本のルーツと現代表現の交差点
最も注目すべきは、日本の伝統的な技法を現代アートへと昇華させる試みです。
企画展「Blurred: 交錯する境界」: 鋳金、陶芸、箔といった日本の伝統技法を現代的に再構築する、久野彩子、奈良祐希、能條雅由の3作家による展示です 。彼らの作品は、伝統という我々のルーツを土台に、いかに新しい表現を生み出せるかというテーマと深く共鳴します。異なる領域が交錯する「曖昧さの美しさ」を体感できる貴重な機会となるでしょう。
2. ジャンルや空間の境界を越える多様なアート体験
本イベントは、絵画からインスタレーション、パフォーマンスまで、あらゆる境界を越えた表現に出会える点も魅力です。ナイル・ケティング氏の日本初公開インスタレーション: 国際的に注目されるアーティスト、ナイル・ケティング氏が、天王洲の倉庫空間を舞台に、日本初公開となるパフォーマティブ・インスタレーション「Blossoms – fulfilment」を展開します。作品が会場を越えて都市空間へと広がる構成は、「鑑賞とは何か」という根源的な問いを私たちに投げかけます。諏訪敦氏の約3年ぶりとなる大規模個展: WHAT MUSEUMでは、現代日本のリアリズム絵画を牽引する諏訪敦氏の個展「きみはうつくしい」が開催されます。新作を含む約80点の作品群から、氏の制作活動の変遷をたどることができます。このほかにも、国内外のギャラリーが集う「Tennoz Contemporary」や、「自分らしさ」をテーマに19名の作家が多様な表現を見せるWHAT CAFEの企画展「Seesaws」など、多彩なプログラムが揃っています。
3. アートの「いま」を世界へ発信する国際的な連携
「TENNOZ ART WEEK 2025」は、横浜で開催される国際アートフェア「Tokyo Gendai」のオフィシャルパートナーとして連携しています 。この連携は、天王洲というアートシティから日本の現代アートシーンの熱気を国内外に発信し、市場のさらなる発展を目指すものです 。日本の芸術文化を世界に紹介するという活動とも軌を一にする重要な取り組みです。伝統と革新、国内と国外、そして多様なジャンルが交差するこのアートウィークは、豊かで新しい表現が生まれる瞬間を目撃できる場所となるでしょう。

写真:ONBEAT編集部

写真:ONBEAT編集部

写真:ONBEAT編集部
開催概要
TENNOZ ART WEEK 2025
会期:2025年9月11日(木)~9月15日(月・祝)
公式サイト:https://taw.warehouseofart.org
会場:寺田倉庫 G3-6F および 周辺施設
主催:寺田倉庫株式会社
協力:一般社団法人 天王洲・キャナルサイド活性化協会
後援:品川区