2025年大阪・関西万博の象徴《大屋根リング》の設計者、初の大規模個展
藤本壮介の建築:原初・未来・森
文、写真=ONBEAT編集部(一部プレスリリース等参照)
本展は、藤本壮介にとって初の大規模個展だ。活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで8セクショ

写真:ONBEAT編集部
環境への配慮、人と人との変わりゆく関係性、

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無名の新人建築家だった藤本は、2000年の《青森県立美術館設計競技案》で建築家・伊東豊雄などから高い評価を受け2位に選出され、一躍建築界の注目を集める。

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その後、「書物の森」をコンセプトに渦巻き状に書架が並ぶ《武蔵野美術大学美術館・図書館》、白色のスチール・パイプを立体格子状に組み合わせたパビリオン《サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013》、樹木から葉が広がるように大きなバルコニーが多数配置された集合住宅《ラルブル・ブラン(白い樹)》、公園の中の緑に溶け込み自然と建築物との境界を曖昧にする音楽複合施設《ハンガリー音楽の家》などのプロジェクトを次々と手掛けてきた。

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現在も《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》(2031 年竣工予定、宮城)、ヨーロッパでの複合都市計画など、多数のプロジェクトが進行している。本展では、活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで、約30年の活動の歩みを8セクション構成で網羅的に紹介する。

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藤本が会場デザインプロデューサーを務める2025 年大阪・関西万博の象徴ともいえる、《大屋根リング》のプロジェクトを紹介している。5分の1部分模型や外観写真、構想から竣工までの関連資料のほか、大型インスタレーション《思考の森》(2025 年) に含まれる模型など、展示室内の各所でさまざまな角度からリングのコンセプトに迫る。

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ONBEATが注目するポイント
■建築家のルーツを探る:「森」という原風景
本展の副題にもなっている「森」は、建築家・藤本壮介氏の創造の核となるコンセプトだ。 注目すべきは、その着想源が、北海道で育った頃の雑木林という「原風景」にある点。 さらに藤本氏は、東京の入り組んだ路地や雑多な風景にも「乱雑さの中にゆるやかな秩序がある」として「森」の要素を見出している。
■伝統と未来の融合:世界最大の木造建築《大屋根リング》
藤本氏が会場デザインプロデューサーを務める2025年大阪・関西万博の《大屋根リング》は、本展の大きな見どころの一つだ。特に注目したいのは、これが日本の伝統的な「貫(ぬき)」接合技術を駆使した、世界最大の木造建築物であるという点。 まさに日本の伝統技術を、万博という未来的な舞台で、かつてないスケールの建築として花開かせる試みと言える。
■「表現に境界はない」を体現する、ジャンル横断のコラボレーション
本展は、建築という枠組みを軽やかに超えていく試みに満ちている。異分野の専門家との協働:建築史家の倉方俊輔氏、ブックディレクターの幅允孝氏、データサイエンティストの宮田裕章氏といった、多様な分野のプロフェッショナルとコラボレーションしている。知性が交差する展示空間:幅氏が選書した「あわいの図書室」 や、宮田氏と考案した「未来の森」の都市像など、建築家の思考が他分野の知性と交わることで、より豊かで複層的な空間体験を生み出している。
■建築を「体感」する新しい試み:五感で楽しむインスタレーション
本展は、従来の建築展のイメージを刷新する、現代美術館ならではの体験的な展示方法も大きな魅力だ。ユニークな展示:藤本建築を擬人化したぬいぐるみが対話するインスタレーション や、人の動きを可視化する映像を投影した模型 など、ユーモアとテクノロジーを交えた展示は、専門知識がない読者にも建築の面白さを直感的に伝える。

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開催概要
藤本壮介の建築:原初・未来・森
主催:森美術館
会期:2025年7月2日(水)~11月9日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー53階)
開催時間:10:00-22:00(火曜日のみ17:00まで)
*入館は閉館時間の30分前まで *会期中無休 *ただし、8月27日(水)は17:00まで、9月23日(火)は22:00まで
入館料:公式サイトをご覧ください(https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/)