Study:大阪関西国際芸術祭
「サイエンス・アートアワード Supported by ロート製薬株式会社」
文、写真=ONBEAT編集部(一部プレスリリース等参照)
大阪関西国際芸術祭実行委員会が開催する「Study:サイエンス・アートアワード Supported by ロート製薬株式会社」は、サイエンスとアートの融合によって生まれる新たな創造性を探求することを目的としたアワードだ。2025年7月20日17時よりグランプリとロート賞の受賞者を発表、最終審査員である黒澤浩美氏、建畠晢氏、⼭極壽⼀氏、鈴⽊⼤輔氏、協賛企業であるロート製薬株式会社代表取締役会長・山田邦雄氏によるアワード授賞式が行われた。
また、ファイナリストの作品は、2025年7月21日(月)~7月23日(水)の期間、グランキューブ大阪(大阪国際会議場)10階会場にて「Study:サイエンス・アートアワード Supported by ロート製薬株式会社 ファイナリスト展」として展示される。
「Study:サイエンス・アートアワード Supported by ロート製薬株式会社」について
ロート製薬株式会社の協賛により開催される「Study:サイエンス・アートアワード」は、科学技術と芸術表現の融合をテーマに、AI、バイオテクノロジー、映像、音響、プログラミング、生態系など、先端分野を活用した創造的表現を世界に問いかける公募アワードだ。 ファイナリストとして選出された5組は、アートフェア会場にて新作プランを展示し、最終審査によってグランプリやロート製薬特別賞などが授与される。賞金総額は100万円(展示費・制作費・旅費含む)。 「サイエンスとアートの融合による未来創造」をテーマに、アートとサイエンスが出会うことで社会課題への新たな視座を提示し、未来社会の創造に寄与することを目的としている。
「Study:サイエンス・アートアワード」グランプリ決定
グランプリ・EU賞 W受賞:角田 優
ロート製薬特別賞 受賞:森公一+真下武久
【最先端の科学技術が織りなす芸術表現:ファイナリストの作品世界】
「Study:サイエンス・アートアワード」のファイナリストたちは、それぞれが独自の視点と手法で科学と芸術を融合させた作品を発表する。
【ファイナリスト5組について】(敬称略・五十音順)
角田優(Yu Tsunoda):グランプリ・EU賞 W受賞
目に見えない物理現象の可視化をテーマに活動する角田優氏は、放射線や熱、カオスといった現象を扱っている。彼の作品《Moya》では、気体の密度変化を捉えるシュリーレン法を用いて、私たちが日常で行う些細な動きから生じる熱によって揺らぐ空気の様子を映像化している。静かな日常の中に隠されたドラマチックな動きを、まるで触れられるような物質感として表現することを目指している。
- 角田 優
- 《Moya》2023
KUMO (Yuki Morita & Ryudai Misawa & deriba):
2025年にYUKI MORITAとRYUDAI MISAWAを中心に結成されたKUMOのメンバー 現所属:YUKI MORITA(東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻)、RYUDAI MISAWA(慶應義塾大学 環境情報学部環境情報学科脇田玲研究室)、deriba(慶應義塾大学政策メディア研究科博士課程)
活動内容:KUMOは2025年にYUKI MORITAとRYUDAI MISAWAを中心に結成され、アートという活動を通じて世界と戯れ、新たな関係性を構築することを目指している。
メンバーについては、プロジェクトごとに流動的に編成しながら制作を行っている。
- KUMO (Yuki Morita & Ryudai Misawa & deriba)
- KUMO (Yuki Morita & Ryudai Misawa) 《霧》2025
永田一樹(Kazuki Nagata):
情報技術の発展による凡庸さや既視感のある、「いつか見た新しい風景」を考えています。郊外やサイバースペース(を学習したAI)には、それぞれ編集可能な退屈な風景が広がり、情報技術の発展は私たちから新しさや驚きといった世界の「外部」を奪っている。そうした凡庸で退屈な風景を、現実空間と情報空間を往還しながら探求する。
具体的な手法やモチーフとして、AIやファミリーレストランなどを扱い、私たちの生活やメディア環境の中にある凡庸な景観から、あたらしい/いつか見た風景を現前させる。アウトプットの形式として、インスタレーション、映像、写真、テキスト、インターネット、SEAなどさまざまなメディア/手法を用いる。
- 永田 一樹
MANTLE(伊阪柊+中村壮志):
2022年に伊阪柊と中村壮志によって結成されたアートコレクティブMANTLEは、直接見ることができない現象や、人間の時間軸を超えた事象のシミュレーションを行う。その過程で発生する偶然やエラーさえも作品に取り入れながら、現在と未来の時空との接点を見出す遊戯的な手法が特徴だ。
- MANTLE(伊阪柊+中村壮志)
- 《simulation #4 -The Thunderbolt Odyssey-》2023(金沢21世紀美術館、 2023)展示風景 ©Kenji Agata
森公一 + 真下武久(Koichi Mori + Takehisa Mashimo):ロート製薬特別賞 受賞
2002年ごろからメディアアートの共同研究を開始した森公一と真下武久は、鑑賞者の身体生理学的なデータ(脳波、脳血流、姿勢制御、呼吸など)を用いた実験的な作品を発表している。2020年以降は、鑑賞者の呼吸を光や音に変換し、植物や大気といった環境と接続することで、生命の根源に触れる体験を実現することを目指している。彼らの作品は、人間と植物、あるいは生命と環境の間にテクノロジーを介在させ、相互に浸透しあう新しい関係性を示すものだ。
- 森 公一 + 真下 武久
- 《呼吸する空 –breathing sky– 》2025
ONBEATが注目するポイント
ONBEATとして今回の展示で特に注目したいのは以下の点だ。
■ グランプリ・EU賞 W受賞:角田 優
今回「もの」を扱う彫刻家出身の彼が挑んだテーマは、「熱」という目に見えない現象を可視化した作品。
実は200年前までは「熱」が“エネルギー”ではなく“物質”と考えられていた歴史があり「熱」を物質のように扱えるのではという発想から、目に見えないものを“見えるようにする”ための実験・装置作りから始めた。現象がふと“見えた”ときの感動を原動力に「放射線」や「カオスの物理現象」の可視化にも取り組んでいる。
そのプロセスと可視化が評価された作品に続く「見えないものを見せてくれるアート」にも注目していきたい。
■ロート製薬特別賞 受賞:森公一+真下武久
身体のわずかな動きを察知して雲を創造的に動かす作品。
20年くらい2人で作品を作っている彼らは、今回の作品以外にも誰もが当たり前にしている「呼吸」をテーマとしているが、1分、2分止まれば命に関わる――それほど大切な「呼吸」を使った作品を制作している。
一方今回の作品では、医療の現場、特にパーキンソン病の患者さんが呼吸をコントロールすることで、自分自身のリハビリテーションに役立てる、という活用法にも注目しており、ウェルビーイング、人生を豊かに過ごしてほしいというロート製薬の想いとも一致していた。
今後のサイエンスとアートを紐づけた活躍にも目が離せない。
開催概要
「Study:サイエンス・アートアワード Supported by ロート製薬株式会社 ファイナリスト展」
会期:2025年7月21日(月・祝)~7月23日(水)
会場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)10F
時間:11:00 – 18:00(最終日は16:00まで)(最終入場は閉館30分前)
入場料:一般3,500 円、学生3,000 円 中学生以下無料
* チケットについては公式サイト(https://osaka-kansai.art/pages/ticket)をご覧ください。
※大阪・関西万博、各展覧会会場には、本チケットでは入場できませんのでご注意ください。
※中学生以下無料(ロート製薬株式会社様のご協賛により、小中学生は無料でご入場いただけます)
※障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料。
※すべて税込価格です。
主催:大阪関西国際芸術祭実行委員会
運営協力:株式会社アートローグ
パートナーシティ: 松原市
協賛:ロート製薬株式会社