国内外のアーティスト50名約100作品が渋谷に集結!日本最大級のストリートアート展
「Stream of Banksy Effect ストリートアートの進化と革命 -Street Art (R)Evolution-」

文=ONBEAT編集部、写真・動画=ストリートアートの進化と革命 展提供、展示風景写真=藤田絋那撮影

©︎ストリートアート進化革命 

ストリートアートの進化と革命展実行委員会は、ストリートアートの歴史を紐解く「ストリートアートの進化と革命」展を2025年1月22日(水)から3月23日(日)まで、渋谷ストリームホール(東京・渋谷)で開催する。本展では、近年話題を集め続けるバンクシーをはじめとして、ストリートアートの創成期から現在まで、国内外のアーティスト50名による約100作品を一堂に展示。ストリートアートの進化や世界中へ波及した軌跡を紹介する。

©︎ストリートアート進化革命 

本展覧会チーフキュレーターのパトリツィア・カッタネオ・モレシは、開幕にあたり「この展覧会はストリートアートの文化的および社会的影響をさぐります、それは単なる芸術表現の形態でなく 都市空間をどう生き、解釈するのかを考える現象ともとらえてます。本展覧会は現在の都市アートの流派、スタイル、技法などを越えた国際的に活躍するアーティストの作品を展示しています。」と語った。

みどころ

■バンクシー作品を中心に、へリング、バスキアまで。 シーンの軌跡から未来を読み解く

本展は、ストリートアートシーンに革命を起こしたバンクシーを中心に、初期に活躍したアーティストから、コマーシャルギャラリーへ進出したキース・へリング、ジャン=ミシェル・バスキア、そしていま世界から注目されている日本人アーティストなど、国内最大規模の作品群とともにストリートアートの進化の軌跡を追う。また、「Stream of Banksy Effect」として、バンクシーが現代のアーティストに与えた影響に焦点を当てることで、ストリートアートの持つ可能性や意義を再発見するための試みでもある。

Banksy 《Thrower》 2019, Serigraph on paper Private Collection

原点はグラフィティ

ストリートアートの原点をたどると、 1969年のニューヨークに端を発する。この年を境に、ニューヨーク地下鉄の車両や駅には 「タグ」 と呼ばれる難解な署名が一気にあふれるようになった。 当時のニューヨークというと、お金持ちが住んでいたマンハッタンと貧困にあえいでいた人達は郊外に住んでおり、「タグ」はサウスブロンクスに暮らすアフリカ系やヒスパニック系の若者らの仕業だった。地下鉄車両に個性的な“爪跡を残す行為は、単なる反抗心ではなく一種の発露であり、また自らの存在やアイデンティティの主張、マンハッタンの人達へ訴えたいという意識でこういったアートが始まったと伝えられているという。武器を持って戦うのではなくて、スプレー缶をもって自分たちを表現していこう、アピールしていこうという流れで出来上がったものです。

展示風景

展示風景 右:TAKI183《Untitled》

彼らは逮捕されてしまうという危険性があったため、必ず自分たちのニックネームのようなものを使って書いていた。ニューヨークの道は番地になっているが、数字が小さいほど中心街になり裕福な人たちが住んでいるエリア。大きな数字になってくればなるほど郊外になり、貧困にあえいでいる人たちのエリアだった。

展示風景 左から:Crash(John Matos)《Untitled)、Quick(Lin Felton)《Graffiti never dies》、Seen(Richard Mirando)《Multi Tags》

タグは単純な文字の羅列から複雑な形態へと進化していった。ライター (タグの描き手) は、 レタリングや色の彩度、サイズの大きさで個性を主張する方向へと進んでいった。 腕前を主張し合うなかで、 ライティングのスタイルや原則ができあがった。 それが 「グラフィティ」の誕生であり、単なる破壊行為から芸術的表現の原始的形態へと発展する第一歩となったのである。ライター界の先駆者であり、 「ニューヨーク・タイムズ』で初めてライターとして紹介されたタキ183 (TAKI183) をはじめ、この創世記を彩ったパイオニアであるシーン (Seen)、コープ2 (Cope2)、ジョンワン (Jonone)、パートワン (Part One)、 ブレード (Blade)クラッシュ (Crash)、 ポエムワン (Poem One)、 ティー・キッド170 (Tkid 170 )、 クイック(Quik) らが登場した。

展示風景 左から:Blade(Steve David Ogburn)《Untitled》、Cope2(Fernando Carlo Jr.)《NYC Ledgend》、Part One (Enrique Torres) 《Untitled》

そのうち、自らの名前だけでなくキャラクターを入れるスタイルやタグが読み取れないようなスタイルへと変わっていった。

展示風景 左上:Poem One《Magic Mickey》、左下:Tkid 170(Julius Cavaro)《Bubbles Ricle》、右:Jonone(John Andrew Perello)《Da Good Times》

ストリートからアートギャラリーへ

80年代に入るとストリートアートは、アートの世界で主流に食い込む正当性を獲得するという重要な瞬間を迎えている。キース・ヘリング(Keith Haring) とジャン=ミシェル・バスキア (Jean-Michel Basquiat)という非常に有名なアーティストが出てきた。
ヘリングは、それまでの自己流のグラフィティやストリートアートを、 特定の意識が感じられる明らかに独自の芸術様式へと進化させた草分けとされる。 一方バスキアは、都市文化のエネルギーをキャンバスにのせることに尽力し、 グラフィティアートを都市という限定された文脈から解放し、従来の美術館での展示へと道を切り拓いた。

とりわけバスキアに関してはスイスのブルーノ・ビショーフベルガー(GALERIE BRUNO BISCHOFBERGER)という画廊が気に入って、画廊に展示するというところから始まった。

展示風景 左から:Keith Haring《Swing (Vert)》、《L’attirance des opposés》

展示風景 Jean-Michel Basquiat《Supercom》

ストリートアートの特徴は、見るためにお金を払う必要がなく、全国民全市民のためのアートであること。また、ストリートアート同士がコラボすることあげられる。それぞれの技術を1つの作品の中に落とし込み、大きな作品が誕生するという流れが出てきた。

展示風景 Osgemeos (Otavio and Gustavo Pandolfo)《Contrafiction》

ストリートアートに目覚めたヨーロッパ

1980年代初期になるとグラフィティアートはアメリカを飛び出し、 大西洋を渡った。先駆者たちの行動が映画に描かれたことも影響し、ヨーロッパでもグラフィティアートという表現様式が人気を集めた。 最も活発な中心地として即座に浮上したのが、 ベルリンとパリである。 特にダイナミックな動きを見せたのは、フランスのグラフィティシーンだ。フランスには、ヒップホップカルチャーとグラフィティアートが根付くだけの豊かな土壌があったのである。ニューヨークと同じようにパリという大きな街があって、郊外に行くと貧困層が増えていく。

展示風景 Speedy Graphito (Oliver Rizzo) 《Urban Karma》

フランスから始まったヨーロッパのグラフィティアートは、次々他の街に飛び火しミラノの街、つまりイタリアに達し、イタリアでも花開いていった。イタリアは屋根のない美術館と呼ばれており、芸術作品に常に囲まれてきた歴史がある。イタリアのグラフィティアートの特徴はブロンズ像やフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》など芸術作品をベースにストリートアートを組み立てていったこと。最終的にはジオメトリーな作品にも行き着いている。

Ozmo 《Medusa》 2018, Acrylic on PVC
©Artrust – Courtesy of the artist

展示風景 左から:Andrea Ravo Mattoni《Untitled (Water)》、《Ragazza con orecchino di perla》

Truly Design 《Akira》 2023, Acrylic and spray on canvas
©Artrust – Courtesy of the artist

バンクシー効果

バンクシーは世界中で誰もが知り、賞賛を集め、ストリートアートにあまり縁のない人々さえも、彼の名を口にする。バンクシーの人気や世界的な認知度は、ストリートアートというジャンルが台頭する起爆剤となり、一種の大衆現象となった一方、投資先としての可能性にも光が当たっている。バンクシーの成功を受け、 多くのアーティストが世界のアート市場で有力作家として浮上する道が開かれた。 バンクシー作品がオークションで記録破りの実績をあげていることもあって、 あらゆるアーティストの価値が高められている。 

彼の作品がこれほどまでに注目を集めたのは、彼の真骨頂である独創性と文化性にある。
バンクシーは作品を通して「批判」を掲げている。消費主義について啓蒙する作品をイギリスの大型スーパーに制作したり、多くの作品が反戦をモチーフとしている。

展示風景 Banksy《Morons》

展示風景 Banksy《Girl with Balloon》

《Morons》ではオークションの様子を描いているが、実際オークションにおいて《Girl with Balloon》が非常に高額で落札された瞬間に、作品をシュレッダーにかけるという事件を起こし、彼なりのプロテスト抗議を行った。

Banksyの作品は社会に対する風刺や批評がメインだが、《Girl with Balloon》にように心を届けることによっていろんなものが解決していくんだよというようなポジティブな形で訴えかけてくる作品もある。

展示風景 Banksy《Flying Copper》、《Bomb Love》

Banksyは基本的に平和主義者であり、反戦、戦争をテーマに描いた作品を数多く制作している。パレスチナにも赴いてホテルの壁に作品を描き上げたことも。
戦争というテーマを扱いつつ、柔らかい優しい色パステル調の色を使っているという特徴がある。《Bomb Love》では本当は少女にはぬいぐるみ等を抱いていてほしいが現実には爆弾を抱いているような状況であることを示したり、《Happy Choppers》では戦闘ヘリにリボンをつけて平和でいてほしいが現実はそうはなっていないという矛盾を訴えかけたりしている。

展示風景 Banksy《Happy Choppers》

Banksyは母親から「なんでこんな怖い絵ばっかり描いて花とか可愛い綺麗なものを描かないの」と言われたことを受け、2022年にパレスチナ行って描いたのが《Thrower》だ。実際にはあの手の中に爆弾や手榴弾を持っているのが現状で、そこに花を描いたアンチテーゼである。

展示風景 Banksy《Thrower》

展示風景 Banksy《Greenpeace, Save or delete》

また、WWFやGreenpeaceといった、事前団体とのコラボも行っており、弱い人たちを助けたいというような気持ちが強く出ている。こういった作品だけでなくて金銭的な面においても色んな援助を行っている。例えば、ウクライナ戦争時に切手を制作し、ウクライナ政府がこれを販売することによって得た収益を経済的に活かせせるように送っている。

展示風景 Banksy《FCK, PTN!》

展示風景 Banksy《Paroi Walled Off Hotel》《Key Fobs (Walled Off Hotel)》

また、パレスチナのホテルに描かれている作品をキーホルダーにしたものも。彼が作品を描いたホテルに宿泊してくれた人にプレゼントしており、たくさん泊まった人にはこのバンクシーのこのキーホルダーを渡し、それを収益に変えていけるような仕組みができている。

展示風景

その他にも、Banksyは音楽への興味もあり、ブライトンの近くにあるブリストルという街に住んでいた際に、当時のLPのカバーをデザインしており、このように多くのBanksy作品が本展では展示されている。

■日比野克彦から読み解くストリートアートが紡ぐ地域と社会の未来

更に、アーティスト・日比野克彦氏も出展。これは、パブリックアートや公開制作を通じて、地域の魅力発信や社会課題の解決に貢献し続けている日比野氏の活動から、ストリートアートの新たな可能性を来場者に感じてもらいたい、という実行委員会の想いに同氏が賛同して実現した。
本展では「脳はダマせても⇄身体はダマせない#01」(日比野克彦/2024年制作)を展示している。 本作品は、VRゴーグルを装着した日比野氏がリアルなギャラリー空間にライブペインティングをしながら、観客はモニターでも仮想空間に描かれた作品を楽しむことができるという実験的な試みのもとに作られた。

Gallery & Restaurant 舞台裏にて制作風景/2024年

日比野氏は、ストリートアートが世界的に盛り上がりを見せる1980年代初頭にアート活動を開始。身近な素材である「段ボール」を用いた作品が注目を集め、国内外での展覧会開催や舞台美術の制作など、幅広い活動を行ってきた。近年では、地域特性を活かしたアートプロジェクトを各地で開催し、一般参加者と共に新たな表現を追求している。かつてはタグと呼ばれるグラフィティ(落書き)から始まり、破壊行為とみなされていたストリートアートも、現在では許可を得て都市に制作される作品が増え、景観創造にも貢献している。さらに世界においては、公共空間での作品制作を通じて、不特定多数にメッセージを発信できるため、文化や地域、社会に大きな影響を与える存在へと成長しつつあり、このような進化は日比野氏独自のプロジェクトと通じるものがある。アートを通じて地域とつながりながら、彩り豊かな社会を生みだす日比野氏の活動は、日本におけるストリートアートの未来の可能性の一つとも言える。

展示風景

■日本人ストリートアーティストらも出展

日本社会特有の厳格で秩序ある空気をものともせずに、少しずつアートの本流に食い込みつつある日本のストリートアートシーン。 本展覧会では、多彩なスタイルや技法を駆使し、世界で注目を集める日本人ストリートアーティスト 5名(AITO KITAZAKI、CHOB-ONE、JIKKENRAT、Roamcouch、SUIKO)が出展。会期中は、会場にて出展アーティストらによる公開制作も行われる予定。

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

■公式テーマソング

「ストリートアートの進化と革命」展は、シンガー・ソングライタ一、堂本剛氏のクリエイティブワールド、.ENDRECHERI. (エンドリケリー)による新曲「.ENDRECHERI. Brother」を公式テーマソングとし、共に展覧会を盛り上げます。ジョージ・クリントンに感銘を受けながら、この日本では希少なファンクミュージック作品を日本の音楽シーンと向き合い作り続けてきた.ENDRECHERI.。名前の中にある“END RE” には、ポジティブな終わりとポジティブな始まりという意味が込められており、本展覧会の公式テーマソングにも、参加するアーティスト達のメッセージとも呼応する、ポジティブで力強いメッセージが込められている。

©︎ストリートアートの進化と革命 展

開幕に先立ち行われたプレス内覧会ではオープニングセレモニーにも登場し、「普段触れらない感覚に向きあえました。今すぐにでも曲を書き出したくなる程の刺激を受けました。」と展覧会の感想を話した。セレモニーでは堂本氏同席のもと、本展覧会出展アーティストJIKKENRAT(ジッケンラット)氏による公式テーマソングをイメージして制作されたステンシルアートを完成させるという特別企画も行われた。

開催概要

会期:2025年1月22日(水)~3月23日(日)
会場:渋谷ストリーム ホール (東京都渋谷区渋谷3丁目21-3)
開館時間:10:00〜19:00 (最終入場 18:30) ※会期中無休
入場料:一般 2,400円/大学・専門・高校生1,800円/中・小学生800円
※未就学児無料
※障がい者手帳をご持参の方(付き添いの方1名を含む)は当日料金の半額。当日証明できるものをお持ちください
※学生は学生証または年齢のわかるものをご提示ください

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