フランス・パリで開催された「Asia NOW 2024」に GO FOR KOGEI が参加
文=ONBEAT編集部、写真=GO FOR KOGEI 事務局提供
多様化するアジアの現代アートを紹介する「Asia NOW」。今年開催10回目を迎えるこの催しは、ゲストキュレーターや招聘団体によってキュレーションされた特別展示を行い、進化を続けるアジアのアートシーンを紹介する場として大きな注目を集めている。
このイベントの今年度大会として2024年10月17日~20日まで開催された「Asia NOW 2024」に、北陸を舞台に工芸の新たな魅力を伝える取り組みを行っている「GO FOR KOGEI」が参加した。
今回展示されたのは、美術家・吉田真一郎とキュレーター・秋元雄史によるアートコレクティブ「Collective Action」が手掛けるインスタレーション作品《民藝スピリット「貧」》。江戸時代から明治時代までに制作された自然布の仕事着を通して、民藝的なスピリットを再評価し、今日的なアートとして再提示する試みだ。
自然布による仕事着
自らを律し、万物に感謝し、ムダを省き、生きる ー かつての日本の生活に見られるそうした貧=ミニマルの美を象徴するものとして、自然布による仕事着がある。
使われた自然布は野山に自生する植物から繊維をとって織られており、その種類は藤布、葛布、紙布、芭蕉布、大麻布、楮布などさまざまだ。これら全ての布は野山に自生する、あるいはそれを栽培した植物を原材料とし、草や茎の皮などから長い時間を掛けて作られた糸で織られている。手に入りやすい自然素材を用い、先人たちの技や知識の積み重ねの中で作られていく仕事着は、環境負荷も少なく実用性を備えており、生活の中に根ざした庶民的な美をたたえている。そうした「貧の美」を提示するのが今回の展示であった。
▲ 自然布による仕事着 Photo: Nadia Ermakova
majotae による白い大麻布
江戸末期から明治にかけて織られた古着のほか、最新技術を駆使して100%大麻繊維の機械織りを実現した日本初のテキスタイルブランド「majotae」の布が展示されたのも見どころだった。
Collective Action のメンバーで、エイベックスをパートナーとして majotae を手掛けている美術家、自然布の蒐集家・研究家の吉田は、大麻布を通じて「白」という色が持つ微妙な違いに注目しており、手仕事と時間が織りなす「白」の豊かさを示唆している。
今回壁面に展示された大麻布の白布は、国際特許まで取得している majotae の技術を提示するだけでなく、「民藝」の特徴である伝統性や地方性、他力性(風土や自然の恵み、伝統といった目に見えない大きな力にささえられていること)を伝えていたのではないだろうか。
[アーティスト] Collective Action
美術家、自然布の蒐集家・研究者の吉田真一郎と、美術評論家、キュレーターである秋元雄史によるアーティストコレクティブ。
[協力] majotae
日本人が古くから使い続けてきた素材「大麻布」が本来持っているしっとりとして柔らかい極上のテクスチャを現代の技術を駆使して蘇らせた、日本発のテキスタイルブランド。19世紀以前の大麻布づくりの手法である「手積み」「手織り」の工程を研究し、さまざまな手作業の工程を最新技術やノウハウに置き換え、これまでは不可能とされていた100%の大麻繊維の機械織りに成功、国際特許を取得している。