過去最大規模の<睡蓮>が集う

「モネ 睡蓮のとき」展が開幕

文=ONBEAT編集部/撮影=藤田紘那

左:クロード・モネ《枝垂れ柳と睡蓮の庭》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館 右:クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館

 

日本でも人気を誇る印象派の画家、クロード・モネの晩年に焦点をあてた「モネ 睡蓮のとき」展が、2024年10月5日(土)より国立西洋美術館で開催されている。
本展では、世界最大級のモネ・コレクションを誇るパリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開となる重要作を多数含むおよそ50点が来日。日本では過去最大規模の《睡蓮》が集う貴重な機会となっている。
今回は本展の第1章~第4章、エピローグに沿って、みどころを紹介する。

みどころ

第1章 セーヌ河から睡蓮の池へ
1890年代後半に、モネが主要なモティーフとして描いたセーヌ河。この頃に描かれたセーヌ河の風景画ではしばしば水面の反映がかたちづくる鏡像に主眼が置かれており、のちの《睡蓮》を予見させる。
その後モネは1893年に自邸の庭を買い足し、セーヌ河の支流から水を引いて睡蓮の池を造成し、その2年後にはじめてこの水の庭が作品のモティーフになった。
この章は、1903年から1909年の間に描かれた80点に及ぶ《睡蓮》連作の中でモネのまなじが次第に水面へ注がれるようになり、周囲の実景描写は影をひそめてゆき水面とそこに映し出される反映像や光と大気が織りなす効果のみが画面を占めるようになったその過程を辿ることができる展示となっている。

クロード・モネ《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出》1897年 マルモッタン・モネ美術館

クロード・モネ《セーヌ河の朝》1897年 ひろしま美術館

クロード・モネ《舟遊び》1887年 国立西洋美術館所蔵

クロード・モネ《睡蓮》1907年 マルモッタン・モネ美術館

 

第2章 水と花々の装飾
1890年代に連作の展示効果を追求する中で、睡蓮という主題からなる装飾画の構想を抱いていたモネ。その構想の中でも重要な役割を担っていたのが、太鼓橋の藤棚に這う藤と、岸辺に咲くアガパンサスの花であった。
この章では、その装飾画の構想において当初は睡蓮のみならず、池の周囲の多種多様な花々をもそのモティーフとして想定していたことが垣間見える作品が展示されている。

クロード・モネ《藤》1919-1920年頃 マルモッタン・モネ美術館

クロード・モネ《黄色いアイリス》 マルモッタン・モネ美術館

 

第3章 大装飾画への道
モネが長年にわたり追い求めていた、睡蓮の池を描いた巨大パネルによる屋内壁面装飾計画「大装飾画(Grande Décoration)」。1914年以降の大装飾画は、その大きさが特徴の一つで、この時期の《睡蓮》の多くは、長辺が2メートルにおよび、面積も1909年までのものと比較して4倍を超える。本展「モネ 睡蓮の時」の中心となるのは、この試行錯誤の過程で生み出された大画面の《睡蓮》の数々である。

クロード・モネ《睡蓮》1916-1916年頃 マルモッタン・モネ美術館

 

第4章 交響する色彩
その色彩の生む繊細なハーモニーゆえに、同時代からしばしば音楽に例えられていたモネの絵画だが、1908年頃からモネの目には白内障の症状が顕在化しはじめ、色覚に少なからぬ変化をもたらした。
この章で展示される作品からは、不確かな視覚に苛まれながらも衰えることのない画家の制作衝動、画家の身振りを刻印する激しい筆遣いと鮮烈な色彩を感じることができる。

「モネ 睡蓮のとき」展示風景

左:クロード・モネ《枝垂れ柳と睡蓮の庭》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館  右:クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館

 

エピローグ エピローグさかさまの世界
大装飾画の制作が開始された1914年は、第一次世界大戦が幕を開けたのと同じ年であり、1918年の休戦時に国家へ寄贈した大装飾がの一部には、涙を流しているような姿をした、悲しみや服喪を象徴するモティーフでもある枝垂れ柳が描かれている。モネは装飾画の構想において、見たものが始まりも終わりもない無限の水の広がりに包まれ、安らかに瞑想することができる空間を意図しており、モネの《睡蓮》は、画家が生きた苦難の時代から今日にいたるまで、人々が永遠の世界へと想いを馳せる寄す処ともなっている。

左:クロード・モネ《枝垂れ柳と睡蓮の庭》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館  右:クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 マルモッタン・モネ美術館

開催概要

会期:2024年10月5日(土)~2025年2月11日(火祝)
休館日:月曜、10/15(火)、11/5(火)、12/28(土)~1/1(水祝)、1/14(火)*10/14(月祝)、11/4(月祝)、1/13(月祝)、2/10(月)、2/11(火祝)は開館
時間:9:00~17:30(金・土曜日は21:00まで)*入館は閉館30分前まで
会場:国立西洋美術館

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