北陸から工芸の魅力を発信する取り組み「GO FOR KOGEI」。2020年に開始し、これまでに工芸を、それと隣接する現代アート、アールブリュット、デザインなどとともに横断的に紹介することで、豊かで広がりをもった姿として提示してきた。
第5回目となるGO FOR KOGEI 2024では、アルチザン、クラフトマン、デザイナー、アーティストが集まり、素材、技法、用途、表現といった近代工芸の特徴に改めて着目して、今日の多様な工芸と隣接するアートを紹介している。会場は、昨年からの継続となる岩瀬エリア(富山市)に、新たに金沢市の東山を加えて、二つのエリアで開催。岩瀬エリアでは、工芸と現代アートのサイトスペシフィックな作品展示を行い、今日における工芸の広がりを紹介している。歴史ある町並みを更新し続ける岩瀬に、工芸や現代アートの多様な表現が入り交じる新しい風景が見どころだ。
岩瀬エリアで展示を行うアーティストは、石渡結、磯谷博史、伊能一三、岩﨑努、岩村努、柿沼康二、サリーナ・サッタポン、澤田健勝、釋永岳、五月女晴佳、館鼻則孝、外山和洋、松山智一、安田泰三の全14名。会場は I-1~I-12 の全12会場となっている。
注目の展示作品
① 松山智一
I-1 富山港展望台エリアでインスタレーション作品を展示している松山智一は、ニューヨークを拠点に絵画作品や彫刻を制作しているアーティスト。今回展示されている対の作品《ダブル・ジョパディー!》と《ホールズ・オブ・フォーチューン》は、神道で神の遣いとされる鹿の角に車輪を組み合わせたステンレス彫刻。また、貨物コンテナの中にライトボックスで光る絵画を収めた作品は、絵画をよく見てみると何羽もの鳥が折り重なっている。人の想いをみんなで折る千羽鶴から着想を得た絵画だ。どの作品も、日本人の精神性や忍耐力の強さを現代美術と合わせて表現しているという。
② 五月女晴佳
I-3 Aka Bar、I-7 Ao Bar でそれぞれ作品を展示している五月女晴佳は、自身が大好きな「化粧」と言う行為と、漆という素材の間に、「何度も重ねる」「磨く」という点で親和性を見出し、人間に特有で化粧や欲望の象徴でもあるくちびるをテーマに作品を制作している。鎖に縛られ吊るされている作品《Bondage》は、コロナ禍に制作された作品であり、コロナ禍だけでなく昨今のジェンダー論やルッキズムなど、さまざまな抑圧からくる「苦しみ」が表現されている。背面には鍵の外れた南京錠がついており、動きさえすれば鎖が取れるのだという含みも持たせている。
③ 館鼻則孝
I-5 KOBO Brew Pub、I-10 桝田酒造店 満寿泉には、館鼻則孝のヒールレスシューズと床面絵画作品がそれぞれ展示されている。桝田酒造店 満寿泉での作品は、奥にある神棚から雷が鳴っている様子を描いており、3つに分かれている雷の先端は、龍の爪をモチーフとしている。館鼻による屋内作品としては最大規模で、階下には実際に使われている酒造もあり、この作品が酒造の守り神になればという願いも込められている。
開催概要
会期:2024年9月14日(土)-10月20日(日)
休場日:沙石(火曜)、四知堂(水曜)、SKLo(水曜)ほか会期中無休
時間:10:00-16:30(最終入場16:00)
会場:富山県富山市(岩瀬エリア)、石川県金沢市(東山エリア)