2023年9月12日（火）～2023年12月3日（日）、東京国立博物館 表慶館にて「横尾忠則 寒山百得」展が開催中。
本展は、現代美術家・横尾忠則が寒山拾得を独自の解釈で再構築した、「寒山拾得」シリーズの完全新作102点を一挙初公開。
このシリーズは寒山と拾得という中国、唐の時代に生きた伝説的な2人の詩僧をテーマとしたものだ。
彼らはその奇行ぶりから「風狂」ととらえられ、日本、中国では伝統的な画題となった。
新型コロナウィルス感染症の流行の下、横尾は寒山拾得が達した脱俗の境地のように、俗世から離れたアトリエで創作活動に勤しみ、まさに時空を超越し、あらゆる世界を縦横無尽に駆け巡った。
描き出された寒山拾得からは、めくるめく物語が紡ぎ出されている。
画家活動の最大のシリーズとなる「寒山拾得」は、百面相のように観る人にさまざまな問いを投げかけることだろう。
▼寒山拾得（かんざんじっとく）とは
寒山と拾得は、霊地・中国天台山を背景に生まれた伝説的な人物で、奇妙な笑いを浮かべ、常軌を逸した振る舞いで知られ、仏教では真理を目覚めさせる「散聖」ともされた。古く多くの知識人を惹きつけ、東洋においては伝統的な画題となっている。
日本でも鎌倉時代から近代に至るまで、経巻を開く寒山と箒を持つ拾得の姿など、さまざまな姿かたちで多くの絵画に表されている。また国清寺に住む2人の師ともされる豊干禅師と、彼が連れていた虎とともに寒山拾得が眠る「四睡図」が古くから描かれている。
その世俗にとらわれない暮らしぶりは、森鷗外や夏目漱石といった日本の近代文学にも取り上げられている。高い教養を持つにも関わらず、洞窟の中に住み、時には残飯で腹を満たすといった脱俗的な寒山拾得の振る舞いは、世俗世界の現実からの逃避に憧れを抱いた知識人たちを魅了したのだろう。
▼横尾忠則
美術家。1936年兵庫県生まれ。
72年ニューヨーク近代美術館で個展。
その後もパリ、ヴェネツィア、サンパウロなど各国のビエンナーレに出品し、ステデリック美術館（アムステルダム）、カルティエ財団現代美術館（パリ）、ロシア国立東洋美術館（モスクワ）など世界各国の美術館で個展を開催。
また、東京都現代美術館、京都国立近代美術館、金沢21世紀美術館、国立国際美術館など国内でも相次いで個展を開催し、2012年神戸市に兵庫県立横尾忠則現代美術館、13年香川県に豊島横尾館開館。
95年毎日芸術賞、11年旭日小綬章、朝日賞、15年高松宮殿下記念世界文化賞、令和2年度東京都名誉都民顕彰、23年日本芸術院会員。
著書に小説『ぶるうらんど』（泉鏡花文学賞）『言葉を離れる』（講談社エッセイ賞）小説『原郷の森』ほか多数。
開催概要
開催日：2023年9月12日（火）～2023年12月3日（日）
時間：09:30～17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日：月曜日、9月19日（火）、10月10日（火） ※ただし、9月18日（月・祝）、10月9日（月・祝）は開館
会場：東京国立博物館 表慶館
住所：東京都台東区上野公園13-9
入館料：一般 1,600円（1,400円）、大学生 1,400円（1,200円）、高校生 1,000円（800円）
※本展は事前予約不要
※（）内は前売料金
