1. 作品販売

  2. プロデュース

  3. アート支援

  4. 地方創生

  1. 国内大型書店

  2. ミュージアムショップ

  3. 空港

  4. 豪華客船

  5. ホテル

  6. ライブラリー

  7. セインズベリー日本藝術研究所

  8. ジャパン・ソサエティー

このグローバリズムの時代にあっても、大変悲しいことに国家間の諍いがなくなることはありません。しかしながら、市民レベルでの相互理解は益々進んでおり、アートもそこで大いに役立っています。

アートには「日本画」というジャンルが存在します。アーネスト・フェノロサが日本で目にした絵画を「ジャパニーズ・ペインティング」と呼び、「日本画」と訳されたことから「日本画」という概念が定着しました。

それ以降、日本の近代化のなかにあって、日本画の画家たちは、西洋画に対しての、という位置付けから、近代とは、西洋とは、国家とは、といった課題と向き合ってきました。さらに第二次世界大戦後、日本画滅亡の危機に直面しながらも、近代日本画を超克し「新しい日本絵画の創造」をやり遂げることで、日本画は新しい表現を獲得してきました。

翻って、グローバリズムが加速する中にあって、「新・日本画(シン・ジャパニーズ・ペインティング)」は何を意味するのか、何を成し得るのでしょうか?

ポーラ美術館で開催中の『シン・ジャパニーズ・ペインティング―横山大観、杉山寧から現代の作家まで』展では、明治以降の日本画画壇の注目すべき作家、作品を紹介。日本画がどのように進化し、新しい表現を獲得してきたか、その歴史が展観できます。普段、日本画に触れる機会があまりない、という方にとっては好機と言える展覧会になっています。

しかし、本展の真価はそこにあるのではありません。歴史を振り返るばかりではなく、さらにこれまでの日本画の表現を超越し、過去の日本画ばかりを見てきた目には「これが日本画?!」と目を丸くして見てしまう、新しい日本画の表現を獲得した、現代の作家たちの注目すべき作品の数々が展示されています。

画面から飛び出した作品、塩を使った作品、フィギュアやジオラマにしか見えない作品、過去の名品に新しい解釈を与える作品などなど。その挑戦的、独創的な作品のなかには、「ええっ!この人も日本画?」と、これまで日本画家として見たことのなかった作家も多く、お堅くアカデミックな日本画のイメージを打ち砕いてくれます。新しい日本画は海外の人々にとって、どのように見え、どのように新しい日本人像をイメージさせてくれるのでしょうか?

まさにそこが本展の見どころと言えます。ぜひ、この夏は箱根でゆったり、新しい日本画に触れていただき、日本画の未来に想いを馳せていただくことをお勧めします。

杉山寧《慈悲光》(1936年・昭和11 福田美術館) © Ken KATO
本展の最初に登場する作品。展示中盤「第3章 戦後日本画のマティエール」でフィーチャされている戦後の杉山の画風とは大きく異なる、若き日の杉山の作。ここからはじまり戦後へ、そして現代へと連なる「日本画」の軌跡の第一歩と言える

三瀬夏之介《日本の絵》(2017年・平成29 作家蔵)ほか
《慈悲光》のすぐ後に登場するのが三瀬夏之介の作品群。《日本の絵》は逆さに見た日本がモチーフになった作品だが、「21st DOMANI・明日展(2019年)」で見た時も俄になにを描いたかわからなかったが、またしても、これなに?と思ってしまった

展示風景:「第1章 明治・大正期の日本画」景

展示風景:「第2章 日本画の革新」

杉山寧《洸》(1992年・平成4 ポーラ美術館)
「第3章 戦後日本画のマティエール」より
冒頭の杉山寧《慈悲光》との違いに注目してほしい。岩絵具による絵画のマティエールを重視し、キャンバスに岩絵具や砂を使った抽象的な表現などが注目を集めた

山本基《時を纏う》(2023年・令和5 YUKIKOMIZUTANI)
塩を使って描くインスタレーションで知られる山本基。7月22日(土)、23日(日)に公開制作が行われた

山本基《時を纏う》(2023年・令和5 YUKIKOMIZUTANI)※部分

マコトフジムラ《波の上を歩むー氷河》(2020年・令和2 作家蔵)

野口哲哉《Energy Notch》(2023年・令和5 個人蔵)

野口哲哉《Clumsy h eart》(2018年・平成30 個人蔵)
鎧兜を身に着けた武士が現在的なモチーフとともに描かれた平面や立体を制作している野口哲哉。彼は本来は日本画の人なのだが、フィギュア関係の人からはそう見られていないかも

深堀隆介《方舟2》(2015年・平成27 個人蔵)

深堀隆介《緋ノ魚》(2020年・令和2 作家蔵)
アクリルの中を金魚を自在に泳ぎまわらせる作風が人気の深堀隆介。立体制作が中心だが本展では二曲一双の屏風作品も。実は深堀は日本画は学んだことがないそうだ

吉澤舞子《エルピスの花冠》(2023年・令和5 作家蔵)

谷保玲奈《蒐荷》(2020年・令和2 高橋龍太郎コレクション)

半澤友美《生々流々》(2023年・令和5 作家蔵)

長谷川幾与《l`effervescence IV》(2022/2023年・令和4/5 作家蔵)

左:山本太郎《紅白紅白梅図屏風》(2014年・平成26 個人蔵)、右:杉本博司《月下紅白梅図》(2014年・平成26 作家蔵)
この尾形光琳《紅白梅図屏風》をモチーフに制作された2作品は琳派四百年を機に、図らずも2014年に双方知らずに制作されたもの。その後、山本の作品は個人蔵となり、2作品は相まみえることはなかったのだが、今回、はじめて並んで展示されることとなった。これは山本の悲願だったそうだが、実は今回、並んで展示していることを杉本はまだ知らないらしい

荒井経《樹象》(2017年・平成29 作家蔵)

春原直人《Underneath》(2020年・令和2 作家蔵)

永沢碧衣 《山景を纏う者》(2021年・令和3 作家蔵)。最後に展示されているのは今年の「VOCA賞」を受賞した、マタギにしてアーティストの永沢が描いた熊の山

文・写真 / チバ ヒデトシ

開催概要

主 催: 公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
会 期: 2023 年 7 月 15 日[土] -2023 年 12 月 3 日[日]
会 場: ポーラ美術館 展示室1、2、3、アトリウム ギャラリー

詳細はこちら