2023年4月15日(土)~2023年5月14日(日)まで、京都市内各所で「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」が開催中!

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭だ。千年の長きにわたって伝統を守りながら、その一方で先端文化の発信地でもあり続けてきた京都。その京都がもっとも美しいといわれる春に開催される。
日本および海外の重要作品や貴重な写真コレクションを、趣のある歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展開し、ときに伝統工芸職人や最先端テクノロジーとのコラボレーションも実現するなど、京都ならではの特徴ある写真祭を目指している。

第11回目を迎える今年は「BORDER」をテーマに、京都⽂化博物館別館、⼆条城⼆の丸御殿台所・御清所、両⾜院、出町桝形商店街など19カ所を会場に、15のメインプログラムを展開している。

伊藤佑 町家跡地では、インマ・バレッロ「Breaking Walls」を開催。

陶器や金属を使ってオブジェやインスタレーション作品を制作するニューヨーク在住のスペイン人アーティスト、インマ・バレッロ。これまでの芸術的表現のステレオタイプから解放されることで、バレッロは不完全さを受け入れ、アクシデントを歓迎しながら制作に取り組んでいる。
作品に使われる陶器の破片は、自然や文化の破壊を示唆し、同時に私たちの社会的、個人的、精神的な生活の不安定な側面にも言及。バレッロは、壊れることが終焉であるとは考えず、逆に壊れることに前進の可能性や変容のプロセスを見いだす。

2019年、バレッロは日本の伝統的な陶磁器の修復技法である金継ぎを京都で学ぶ。
金継ぎには金をはじめとする金属の粉が使われる一方で、バレロの故郷、スペインの陶磁器は金属の鎹(かすがい)を用いて修復される。双方の伝統技法に使われる金属は、新しいつながりを作るために使われている。

本作〈Breaking Walls〉に向けて、京都市内の窯元や陶芸家、学生たちなど多くの人々の協力を得て陶磁器が集められた。その破片は金属製のメッシュフレームに詰められ、壁が完成する。このプロセスではスペインと日本の修復技法が呼応し、金属と陶磁器の破片が共に新しいかたちを創造するのだ。会場に立つ二重の壁の間は歩けるようになっており、その空間は人々を迎え入れる。バレッロはこの壁を、何かを区切る境界線としてではなく、コミュニティが集う空間として捉えている。

〈Breaking Walls〉と共に展示される映像作品には、バレッロが制作した繊細で女性的なドレスに見立てた陶器の立体作品が意図的に壊される様子が映し出される。そして〈Breaking Walls〉を制作するために使われたのも、さまざまな理由で廃棄されることになった陶芸作品だ。

誠心誠意を込めて制作した作品を何らかの理由でアーティストたちが手放したのと同様に、バレッロもまた、この映像作品を制作するため、愛する作品を手放さなければならなかった。それは、破壊するという行為の暴力性や女性的なかたちの崩壊、新しいものを生み出すために壊されたドレスの運命を記録している。

繊細な作品を壊すという行為がアートになり、究極の破壊を否定することで、脆さと強さがつながるのだ。壊れた陶磁器の破片から制作されたバレッロの作品は、多様性と共存の意義、伝統や文化、コミュニティの重要性に光を当てることになるだろう。

アーティストプロフィール

インマ・バレッロ / Inma Barrero
スペイン、エストレマドゥーラ州生まれ。
インマ・バレッロは20年以上にわたり、粘土、陶磁器、金属、ガラス、木材を使った大規模な陶芸作品を制作している。
幼少の頃、田舎を散歩していると、バレッロは新石器時代やローマ時代、モレスク様式の陶器のかけらをよく発見した。
その豊かな歴史に触発され、バレッロはこれらの発掘物を神秘的な遺物であり、独立した美のオブジェであるとみなしている。
バレッロの作品の断片は、文化やコミュニティのもろさやレジリエンス(回復力)についてもふれている。
また、バレッロの作品は女性らしさや自然界を体現しており、私たちが共有するもの、目に見えないもの、失ったものについて語り合うための作品ともいえる。
シュルレアリスムの影響が見られる作品は、女性らしさや自然界のあり方についても問いを投げかけている。
バレッロは、ヨーロッパ、アメリカ、そして日本で陶芸および金継ぎで割れた陶器を修理する技術を学んだ。
主にニューヨークで展覧会を開催し、作品が世界中のプライベートコレクションにも所蔵されている。
今春には、自身が家族と暮らすマンハッタンのインスティトゥト・セルバンテスで個展を開催予定。

開催概要

開催日:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
時間:12:00~20:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:4月18日(火)・25日(火)、5月9日(火)
会場:伊藤佑 町家跡地
住所:京都市下京区新町通綾小路下ル船鉾町382
アクセス:地下鉄烏丸線「四条」駅3番出口から徒歩5分
阪急「烏丸」駅26番出口から徒歩5分
入場:無料

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