「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」において、ジェームス・モリソン「子どもたちの眠る場所」が京都芸術センターにて開催中!(2024年4月13日[土]~2024年5月12日[日」)
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭だ。一千年の長きにわたって伝統を守りながら、その一方で先端文化の発信地でもあり続けてきた京都。その京都がもっとも美しいといわれる春に開催される。
日本および海外の重要作品や貴重な写真コレクションを、趣のある歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展開し、ときに伝統工芸職人や最先端テクノロジーとのコラボレーションも実現するなど、京都ならではの特徴ある写真祭を目指す。
KYOTOGRAPHIEの共同設立者/共同代表のルシール・レイボーズと仲西祐介は、2011年の東日本大震災を受け、日本と海外の情報交換の稀薄さを目の当たりにした。それはおのずと双方の情報を対等に受信発信する、文化的プラットフォームの必要性への確信となった。日本はカメラやプリントの技術において世界を先導しているにもかかわらず、表現媒体としての「写真」はまだまだ評価されていない。二人はここに着目し、「写真」の可能性を見据えるべく国際的フェスティバルを立ち上げた。
2024年は「SOURCE」をテーマに、12の会場で13の展覧会を展開。
二人は今回のテーマについて、以下のメッセージを寄せている。「源は初めであり、始まりであり、すべてのものの起源である。それは生命の創造であり、衝突が起きたり自由を手に入れたりする場所であり、何かが発見され、生み出され、創造される空間である。人生の分岐点にかかわらず、私たちは岐路に立っており、原点に戻るか、 新しいことを始めるかの間で揺れ動いている。 生命、愛、痛みのシンフォニーが響き渡るのは、この神聖な空間からなのだ。 その源で、無数の機会が手招きし、何か深い新しいものを約束してくれる(プレスリリースより一部抜粋)」。 SOURCEを探求し、オルタナティブな未来を望む。
ジェームス・モリソン「子どもたちの眠る場所」
ジェームス・モリソンの幼少期のベッドルームは、イギリスの実家の屋根裏部屋にある小さな部屋で、成長するにつれてそのときどきの好きなものが飾られていた。アクションマンのフィギュア、バットマンの車、マムジーとディドル・ダッシュという2匹のネズミのために木製の果物箱で多層階の遊び場を作ったものから、デュラン・デュランやマドンナが掲載された『スマッシュ・ヒッツ』誌のページ、軍隊のポスター、サーファーのポスター、ジミ・ヘンドリックスやザ・ローリング・ストーンズ、そして最後はレイヴパーティーのポスターまで。ベッドルームは彼にとって自分だけの王国だった。
それから何年も時が経ち、子どもの権利に関わる仕事を依頼されたモリソンは、自分の幼少期の部屋、ベッドルームについて考えた。子ども時代に寝室がいかに重要であったか、そしてその部屋がいかに自分の持っているものや自分という存在を投影していたか。そこで彼は、今日の子どもたちに影響を及ぼしている複雑な状況や社会問題を考える方法として、さまざまな境遇にある子どもたちの寝室に目を向けることを思いつく。彼は当初、このプロジェクトを『ベッドルーム』と名付けたが、やがて、彼自身が経験した『ベッドルーム』が、多くの子どもたちには当てはまらないことに気がつく。世界中の何百万という家族がひとつの部屋で一緒に寝ていたり、何百万という子どもたちが自分の部屋と呼べるような場所ではなく、むしろ簡易的な空間で寝ていたりすることを知る。彼は、自分が眠り、成長するための自分だけの王国を持っていたことが、いかに特権的であったかを理解するようになった。
モリソンは現在、5大陸40カ国で「Where Children Sleep(子どもたちの眠る場所)」のプロジェクトのために子どもたちを撮影している。一人ひとり異なる境遇に生まれた子どもを紹介するこのプロジェクトは、貧困、富、気候変動、銃による暴力、不平等、教育、ジェンダー、難民危機など、現代の複雑な問題について考えるための手段になるのではないだろうか。
エバレット 4歳
エバレットは一人っ子。アメリカ・ミシガン州リボニアの一軒家に両親と住んでいる。ここは住民間の結びつきが強いコミュニティで、彼にはたくさんの友達がいる。この地域はもともと、デトロイトから移り住もうとする自動車産業労働者のために開発された。リボニアは長年、白人以外の住民を歓迎せず、アメリカで最も白人の多い街のひとつとして知られていた。エバレットの母親を含む何人かの住民は最近、この地区の差別的な過去を糾弾し、多様性を促進する名声を発表した。エバレットの両親は、骨董品、美術品、バーボン、時計など、さまざまな品を収集するコレクターである。エバレットは、大好きなスーパーヒーロー、スパイダーマンのおもちゃを何百個もコレクションしている。ターゲット(アメリカのスーパーマーケット)で売られているスパイダーマンのおもちゃを片っ端から買った後、ヴィンテージのフィギュアを集め始めた。エバレットは、スパイダーマンが宿敵ヴェノムと戦う夢を見る。大人になったら、マーベルでスーパーヒーローを作る仕事をするか、消防士になるのが夢だ。
ガントゥルガ 11歳
ガントゥルガの家族は、モンゴルのフブスグル湖の近くでトナカイを飼う遊牧民である。彼らは200頭以上のトナカイを飼い、先祖の霊が宿ると信じてトナカイを大切にするスピリチュアルな民族、ドゥガ族に属している。ガントゥルガは午前9時から午後2時まで学校に通い、モンゴル語、英語、数学の追加授業を受けている。友達と遊ぶのも好きだが、釣りとトナカイに乗るのが一番好きだ。彼はトナカイの角を彫るのが得意で、旅行者に角細工を売っている。夏には、大人の男たちや年長の少年たちと一緒にタイガの森へ行き、トナカイの群れを率いて緑豊かな牧草地を探す。夏の間はティピーに住み、すきま風は入るが、夜になると羊の皮を床に敷いて寝る。スマートフォンを充電するためのソーラーパネルもある。彼は大きくなったらトナカイ飼いになりたいと思っているが、父親は彼が都会に移り住むのではないかと心配している。
シャルミン 8歳
シャルミンはバングラデシュの首都ダッカ郊外のモハマドプールに住んでいる。家は、竹と編んだ葦で作られた小さなワンルームで、母親と姉と3人で暮らしている。父親は6年前に彼女たちを捨て去った。シャルミンと姉は、オフィスの清掃員として働く母親の賃金を補うため、毎朝、靴底を作るための革を裁断する。シャルミンは1日3時間学校に通い、出席を奨励するパンとバナナをもらっている。手を痛める革の祭壇作業から解放されるので、シャルミンは学校にいる方が好きだ。放課後は遊んだり、テレビを見たりして楽しむ。自宅のテレビは壊れているので、姉と一緒に近所の家に行って見ていたが、叔父に見つかって殴られた。シャルミンは海外に行くのが夢で、縫製工場で働いてお金を貯めようと思っている。
アリヤ 7歳
アリヤはモンゴルの首都ウランバートルにあるヤルマグの高級マンションで両親と妹と暮らしている。寝室は妹と共有しているが、2台の机とパソコンがある勉強部屋も持っている。学校は歩いて10分のところにあるが、冬は気温がマイナス28度にまで下がるため車で通学している。絵を描くことが好きで、大きくなったら医者になりたいと思っている。パンデミックの間、アリヤは5カ月間学校に行かず、家でコンピューターゲームをしていた。公害から身を守るためにパンデミック以前からマスクしていたが、マスクをすると苦しいので嫌だという。政府が「よりクリーンな」石炭を使うよう勧告して以来、大気汚染のレベルは最近低下している。
ミリー 8歳
ミリーは、両親と2匹の犬とともにウェールズで自給自足の生活をしている。家は古いファームハウスで、暖房も水道もないが、太陽光パネルで電気をまかなっている。父親は近くの小川から水を引いてきて、居間にちょっとした滝を作った。2階では、2台のダブルベッドをくっつけて全員が一緒に寝ている。同じ部屋には、トイレ用のバケツと汚れた紙を入れるゴミ箱がある。彼らは無駄使いをせず、捨てることを好まないので、家の中はとても散らかっている。ミリーは母親からホームスクーリングを受けており、その一日は遊びやお絵かき、想像力豊かなゲームをすることで占められている。算数や読書は優先されない。父親は他の車の部品を集めて自動車を作り、地元のフィッシュ・アンド・チップス店から出る廃油で走らせている。家族は全員ベジタリアン。
ジャスミン 4歳
ジャスミンはジャジーというニックネームで呼ばれることを好む。彼女はアメリカのケンタッキー州の大きな家に両親と3人の兄弟と住んでいる。彼女の家は農地に囲まれた田舎にある。彼女の寝室は、チャイルド・ページェント(子ども美人コンテスト)で勝ち取った冠やタスキでいっぱいだ。ジャジーはすでに100以上の大会に出場している。彼女の余暇はすべて大会の準備とリハーサルに費やされている。トレーナーに新しいステップを教えてもらいながら、毎日ステージの練習をしている。週末ごとに異なるページェントに参加するため、金曜日の午後に現地入りし、土曜日にパフォーマンスを行い、日曜日は受賞式に出席する。ショーが終わるころには、かなり疲れ果てている。ジャジーは、髪をセットしてもらい、きれいな服を着てメイクをし、つけ爪やフェイク・タンをして、お姫様のようにちやほやされるのを楽しんでいる。それはとてもお金のかかる趣味で、彼女がページェントに参加するたびに、彼女の両親は1,000ドル費やすこともある。ジャジーは大きくなったらロック・スターになりたいと思っている。
ダニエル 13歳
ダニエルはホンジュラスのキミスタンで生まれ、兄弟と両親とともに、頻繁に命の危険にさらされる暴力的な地域に住んでいた。両親は、彼と兄弟がギャングに勧誘され、拒否すれば殺されるかもしれないと怯えていた。一家は7カ月前に家を出て、現在はメキシコのティフアナにある亡命希望者のためのシェルターに滞在している。彼らはジョージア州の親戚の家に滞在することを望んでいる。兄弟と母親は共同寝室で一緒に寝ており、父親は他の男性たちと隣の部屋で寝ている。シェルターでは午前8時に1日が始まり、午後9時に消灯する。それ以降に話をする者は修道女に叱られる。シェルターに滞在できるのは5週間だけで、申請が通らなければホンジュラスに戻るバス代が支給される。しかし、彼らはティフアナに留まり、アメリカへの別の道を探すつもりだという。
インディラ 7歳
インディラはネパールのカトマンズ近郊で両親、弟、妹と暮らしている。彼女の家には部屋ひとつしかなく、そこにベッドとマットレスがひとつずつある。夜、子どもたちは床のマットレスで一緒に眠る。インディラは3歳から地元の花崗岩の採石場で働いている。一家はとても貧しいので、全員が働かなければならない。採石場では他にも150人の子どもたちが働いているが、そのうちの何人かは、石の破片から目を守るゴーグルを持っていないため失明する。インディラは1日5、6時間働いた後、掃除や料理などの家事を手伝う。彼女の好きな食べ物は麺類だ。学校は歩いて30分のところにある。採石場で働くのは嫌いではないが、できれば遊んでいたいと思っている。大きくなったらネパールダンスのダンサーになりたいという。
ウィラ 13歳
ウィラは一人っ子。彼女はイギリスのエセックス州で、両親とともに農場にある納屋を改造した家に住んでいる。納屋を大規模な住まいとアーティストのアトリエに改装した様子は、テレビ番組で紹介された。彼女の寝室にはバスルームと穀物貯蔵サイロを改造したリビングスペースがある。猫が3匹いるが、うち1匹は足が3本しかなく、彼女のベッドの下で眠る。農場に住んでいながらも、ウィラは室内での時間を好み、SF小説を読んだりギターを弾いたりして過ごしている。父親は、歩道のない危険な幹線道路を娘に歩かせるのを避けるため、学校までの短い距離を車で送っている。彼女はクラスの女の子たちと一緒に、ゴミのポイ捨てをやめさせることを使命とするグループを作った。会員証を作り、運動場でポイ捨てをする他の子どもたちに大声を上げる。ポスターも作ったが、何度もはがれ落ちてしまい、さらにゴミを増やすことになったので、今はただ友達と遊んでいる方がいいという。
サントゥサ 7歳
サントゥサはボリビアのチュキサカという辺境の地に住んでいる。彼女の家は平屋の小さな建物で、両親、4人の兄弟、2人の祖母、祖父、そして曽祖母と一緒に暮らしている。建物の壁は泥でできており、強風が頻繁に吹くため天井はとても低い。一家は小作農で、豚、羊、鶏、モルモットなどを食用に飼っている。地元の野草で染めた羊の毛を使って美しい織物を織ることで地元の女性たちはよく知られている。サントゥサは1日3時間を家事に費やす。チュキサカに車はなく、道路は15年前に造られた1本しかない。サントゥサは、起伏の激しい500mの道のりをつまずかないように気をつけながら歩いて学校に通う。学校はコミュニティで唯一トイレがある場所だ。サントゥサは大きくなったら教師になりたいと思っている。
ロアシー 8歳
カンボジアのプノンペン郊外に住むロアシー。彼の家はハエが群がる巨大なゴミ捨て場にある。彼らはあらゆるものを再利用している。たとえば、ロアシーのマットレスは古いタイヤでできている。家の中は腐敗したゴミの悪臭が充満し、柔らかくて弾力のある地面は一歩間違えれば有毒な黒い液体が滲み出す。ここには5千人が住み、働き、家賃を払っている。毎朝6時、ロアシーをはじめとする数百人の子どもたちは、地元の慈善センターでシャワーを浴び、朝食をとってからゴミをあさり、缶やペットボトルをリサイクル業者に売る仕事をする。朝食がその日の唯一の食事になることも多い。ロアシーの兄がゴミ捨て場で見つけた鶏肉を食べた家族が食中毒に苦しんだこともあった。
ドン 9歳
ドンは中国南西部の雲南省で両親、妹、祖父と暮らしている。ドンは、妹と両親と部屋を共有している。彼らは、自分たちの米とサトウキビを栽培するのに十分な土地しか持っていない貧しい世帯だ。ドンの学校は歩いて20分のところにある。彼はとりわけ書くことと歌うことが好きだ。夜はたいてい宿題に1時間費やし、テレビを1時間観る。彼の両親は教科書代と制服代を支払わなければならないが、地方から通っているため授業料は無料である。ドンの母親は自身が受けたことのない教育を息子が受けられることを喜んでいる。ドンの好きな食べ物は豚肉、お菓子、アイスクリームだが、家族は他の肉、魚、野菜も食べる。ドンは大きくなったら警察官になりたいと思っている。なぜなら「泥棒を捕まえて走り回る」ことができるからだ。
アレックス 12歳
アレックスはアメリカ、ケンタッキー州ハーランのトレーラーで母親、祖母、兄、2人の妹と暮らしている。唯一の暖房手段であるキッチンの石炭ストーブのすすが、室内の壁を覆っている。彼の祖母はソファで眠り、残りの家族は床のマットレスで眠る。兄弟で一部屋、母親と妹たちでもう一部屋という具合だ。バスルームの床は陥没し、寝室の床の穴はビニールで覆われている。昨年、アレックスの父親はオピオイドの過剰摂取で亡くなった。鎮痛剤の過剰処方とフェンタニルのような合成オピオイドの密売が蔓延したことによるオピオイド危機は、アメリカ全土で依存症と過剰摂取の割合を増加させている。父親が亡くなる前、社会福祉サービスは父親が家から出て行くまでアレックスを祖母のもとに預けた。アレックスは、その複雑な関係にもかかわらず、いまだに父を恋しがっている。彼は祖父の足跡をたどって軍隊に入りたいと考えている。
ジョーイ 11歳
ジョーイはアメリカのケンタッキー州で両親と姉と暮らしている。彼は定期的に父親の狩猟に同行する。ショットガン2挺とクロスボウ1挺を所有し、7歳のときに初めて鹿を仕留めた。銃を使うことに飽きたので、次の猟期にはクロスボウを使いたいと思っている。彼はアウトドアライフが大好きで、大人になっても狩猟を続けたいと思っている。彼の家族はいつも、撃った動物の肉を料理して食べる。ジョーイはスポーツのためだけに動物を殺すことには賛成しない。狩猟に出かけていないときは、ジョーイは学校に通い、ペットのフトアゴヒゲトカゲのリリーとテレビを楽しんでいる。
シンタロウ 13歳
シンタロウは横浜で父親と妹と暮らしている。彼の母親は1年前、米農家である高齢の父親宅へ物を届ける途中に交通事故で亡くなった。その遺灰は、子供達が母の存在を感じ続けられるよう、家に置かれている。シンタロウは週3回サッカーをし、身長を伸ばすために毎晩10時間は寝るようにしている。昨年、父親と姉は6週間のオーストラリア旅行に出かけたが、シンタロウはサッカーの練習を休みたくないと断った。家に誰もいない寂しさはあったが、自分で食事を用意し、学校にも行くことができた。最近ではアルゼンチンで5週間トレーニング合宿に参加し、寮で他の少年たちと寝泊まりしたが、寂しさを感じることはなかった。彼の夢は世界一のサッカー選手になることだ。
ネミス 9歳
ネミスはカナダ、モントリオールのアパートの1階に両親と15歳の姉と住んでいる。着飾ることが好きで、その情熱は2歳のときに始まった。7歳のとき、姉が『ル・ポールのドラァグ・レース』を見始めたパフォーマーたちの優雅さに魅了された彼は、その真似をしたいと思い、メイクをしたり、新しいルックスを試したりした。彼は自分にラクテイシアという芸名をつけたが、機嫌が悪いときはメンストレイシアに変える。また、ヴォーギングのレッスンを受け始め、ヴォーグ・ボールに出場し「初めてのドラァグ」部門で優勝した。「ル・ポールのWerq the Worldツアー」がモントリオールで開催されたとき、ネミスは完全なドラァグ姿で参加し、ステージに迎えられた。ネミスは、大きくなったらドラァグクイーンになるか、ドラァグの格好をする教師になりたいと思っている。クラスメイトの中には彼を「超かっこいい」と思っている者もいるが、彼がなぜドラァグが好きなのか理解できない者も多い。
アレックス 9歳
ブラジルのリオデジャネイロに住むアレックスは、学校には行かず、街の路上で物乞いをして過ごしている。生きていくためには、物乞いをするか、盗むしかないということを受け入れているのだ。老人や信号待ちの運転手から盗みをすることもある。運転手が窓に腕をもたせかけると、アレックスは彼らの手首から腕時計をひったくる。彼は接着剤の匂いを嗅ぐことにハマっている。夜、空いているベンチや捨てられたソファが見つかればそこで寝るが、そうでなければ歩道で寝る。アレックスはまだ家族と連絡を取り合っており、時折会いに行って食事を共にする。
ニルト 15歳
ニルトはもともとソマリアのアフマドーの出身。ニルトの両親は、飢饉と干ばつ、そして対立する氏族による暴力から逃れるため、10人の子どもを連れてソマリアから脱出した。彼らはロバ車と家畜を引き連れて、他の30人とともに旅をした。旅の途中、ギャングに襲われ、金品を渡すことを拒否すれば殴ると脅された。一家がようやくたどり着いたのは、ケニア北部の砂漠地帯にある世界最大級の難民キャンプ、ダダーブだった。このキャンプは1991年に設立され、現在では3つのキャンプに分かれ、30万人以上の避難民が暮らしている。ニルトと彼女の家族は、破れたビニール袋とシートで木の棒を覆った小さなドーム型の家に住んでいる。彼らは土の床で寝ている。食事はトウモロコシが中心で、ごくたまにしか肉を食べない。ニルトは学校に行ったことがなく、ほとんどの時間を兄弟の世話に費やしている。
コニー 9歳
コニーはオーストラリアのノーザン・テリトリーにある人里離れた先住民コミュニティ、カルトゥカットジャラ(別名ドッカー・リバー)に住んでいる。仕事を持っている大人はほとんどいないが、父親はゴミ収集の仕事をしている。夜、コニーは3人の兄弟と1台のベッドで眠り、他の兄弟は隣の部屋のベッドで一緒に寝ている。母親が亡くなってダーウィンから引っ越してきた彼女は、昔の友だちが恋しいが、新しい友だちも何人かできた。コニーは、新しい学校では靴を履く必要も、帽子をかぶる必要も、カバンを持つ必要もないことを喜んでいる。足が熱くなるので、裸足の方が好きなのだ。ここでの教育は、以前通っていた学校より数年遅れていると感じているが、大きくなったらアリス・スプリングスの全寮制の学校に行くつもりだ。アボリジニの血を引く彼女の父方の祖母は「盗まれた世代」の一人で、「普通のオーストラリア社会」に溶け込ませることを目的に、家族から引き離され、施設に入られた。
マリア 15歳
マリアはイタリアのヴィチェンツァで、祖父が建てた大きな家に住んでいる。この家は、彼女の祖母と叔母が共有している。彼女は2人の兄妹が大好きだが、しょっちゅう言い合いをしている。マリアは熱心な環境活動家で、ソーシャルメディアで出会った「Fridays for Future(未来のための金曜日)」という団体に所属している。この団体は、グレタ・トゥンベリがスウェーデン国会の外で3週間にわたる抗議活動を行ったことをきっかけに結成され、若者が主導となって気候変動対策を推進している。地球の未来に対するマリアの不安は、母親が彼女の精神状態を心配するほどにまで高まっている。彼女は以前、拒食症に苦しみ、母親はすぐに彼女に心理カウンセラーをつけた。それはとてもつらい1年だった。現在、マリアのエネルギーは抗議活動に注がれており、ついこの間はエネルギー会社の敷地内に赤いペンキを塗りつけて警察から警告を受けた。彼女はヴィチェンツァとヴェネツィアが完全に水没すると考えており、まもなく世界規模の戦争が起こるのではと恐れている。
カイリ 13歳
カイリはグランド・バハマ島のフリーポート近郊の家で両親と2匹の犬と暮らしている。彼女の兄は大学進学のために家を出た。彼女の寝室にはピンク色の壁、キングサイズのベッド、テディベアと本があり、ハリケーン・ドリアンが襲来する前には、兄の寝室を縮小して彼女の寝室を広げる予定だった。ハリケーンによる被害をすでに体験していた一家は、その場しのぎの足場を作って、できる限り地面から高い位置にあらゆるものを置いた。しかし、今回の洪水はかつてないほど水かさが増し、家具は天井に叩きつけられた。家にあったものはすべて破壊され、廃棄しなければならなかった。カイリはもうそこには戻りたくないという。彼女はずっと学校が好きで、いつか会計士になりたいと思っていたが、本や学用品はすべて破壊されてしまった。一家は、家が潰れずに家族の命が助かったことを幸運に思っている。
リアノン 14歳
リアノンは両親と弟とともに、スコットランド南部のダーベルという、かつてはレース作りで有名だった風光明媚な町のテラスハウスに住んでいる。この地域は現在、ヘロイン中毒とギャングの暴力に悩まされている。彼女の学校は、グラスゴー近郊の学校から追放された生徒でいっぱいだ。リアノンは6歳のときから両親と同じモヒカンカットの髪型をしている。彼女とその家族、友人たちはパンクのサブカルチャーの中に身を置き、互いに助け合うコミュニティを形成している。彼らは近所の人々からの虐待行為にも慣れっこだ。リアノンは、その外見のせいで学校でいじめに苦しんだが、反撃し、今では放っておかれている。彼女はギター、ドラム、ベースを演奏し、歌も歌う。父親は自分のバンドを組んでいる。
ジェームス・モリソン / James Mollison
ケニア生まれ、イギリス育ち。ニューポート・スクール・オブ・アートで映画と写真を学んだ後、イタリアに渡り、ベネトンのクリエイティブ・ラボ、ファブリカで働く。現在ヴェネツィア在住。社会的・文化的テーマに独自のコンセプトを適用した作品を発表している。KYOTOGRAPHIE 2024で発表する「Where Children Sleep」は世界中の子供たちとその寝室をテーマにした進行中のプロジェクトで、子供たちの生活の複雑な現実を探求している。2010年に第1巻、2023年に第2巻を出版。これまで刊行した写真集に、『Playground』(子どもたちが遊ぶ校庭の風景写真)、『The Disciples』(コンサートの前後に撮影された音楽ファンのパノラマポートレート)、『The Memory of Pablo Escobar』(「史上最も裕福で最も凶暴なギャング」の驚くべき物語を、モリソンが集めた何百枚もの写真で語る)、『James and Other Apes』(類人猿の「パスポート」写真)などがある。これらのプロジェクトは、世界中の美術館やギャラリーで広く展示されている。
開催概要
ジェームス・モリソン「子どもたちの眠る場所」
会期:2024年4月13日(土)~2024年5月12日(日)
時間:11:00~19:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:無休
会場:京都芸術センター
住所:京都市中京区山伏山町546-2
アクセス:地下鉄烏丸線「四条」駅または阪急「烏丸」駅22・24番出口から徒歩5分
入場料:大人 800円、学生 600円(学生証の提示)