2023年11月 1日(水)~2023年12月25日(月)まで、国立新美術館にて「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」開催中!
本展は、東日本大震災と福島の原発事故に衝撃を受けた大巻が原子力をテーマに制作した《Gravity and Grace》の最新バージョンから始まる。そして回廊を抜けた先で観客を迎えるのは、今や作家の代名詞となった作品《Liminal Air SpaceーTime》だ。大巻の作品には共通する通奏低音のようなものを感じると大巻本人に伝えると、大巻は生命体が生きるために行う「呼吸」をイメージして、作品ごとに違う呼吸を入れているのだと答えてくれた。例えば、人工による原子力をモティーフにした《Gravity and Grace》と、自然をモティーフとした《Liminal Air Space—Time》では、全く異なる呼吸・時間・世界が存在している。それを大きな呼吸のイメージによってつなげているのだという。
また大巻はコロナ禍を過ごす中で、毎日アトリエから外の風景を見ながらイメージに任せて水彩絵の具を混ぜて垂らし、「現象」としてのドローイング作品を数多く制作したという。今回大巻はそうして出来た100枚以上にもわたる色彩作品を、自分が過ごした時間と行為をつなぐ「時間の言語」として回廊に展示している。
大巻が本展で展示している《Rustle of Existence》のような言語をモティーフに取り入れた映像作品を作り始めたのは、台湾で個展(「存在のざわめき」2020年 関渡美術館 KdMoFA)を開催した際に、台湾の少数民族の消滅言語をリサーチし始めたことがきっかけとのこと。日本の言語学者たちにもリサーチへの協力を仰ぎ、台湾の少数民族の言語から環太平洋の言語の変容までをリサーチしたという。また、大巻はその過程で文学者・埴谷雄高の小説『死霊』や、講演集『精神のリレー』に出合ったことも、宇宙や生命体のリレーションをテーマにした一連の作品の着想の起源になっていると語る。
大作からドローイングの小品までが網羅され、私たちそれぞれが自身の「存在」について見つめ直すきっかけになるような濃密な鑑賞体験を得られる本展「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」は12月25日まで。
アーティストプロフィール
大巻伸嗣(おおまき しんじ)
1971年岐阜県生まれ。現在、神奈川県を拠点に制作。「存在」とは何かをテーマに大巻は、環境や他者といった外界、記憶や意識などの内界、そしてその境界にある身体の問題を探求してきた。大巻が生み出した空間で私たちは、外界と内界の相互作用や、時間と空間におけるその揺らぎを、身体的な感覚とともに多義的に経験する。
近年の主な個展に、「The Depth of Light」(2023年、A4 美術館、成都)、「地平線のゆくえ」(2023年、弘前れんが倉庫美術館)、「存在のざわめき」(2020年、関渡美術館、台北)、「存在の証明」(2012年、箱根彫刻の森美術館)など。「あいちトリエンナーレ」(2016年、愛知)ほか国内外の数多くの国際展にも参加してきた大巻は、近年、「Rain」(2023年、愛知県芸術劇場/新国立劇場)などの舞台芸術でも活躍している。
開催概要
会期:2023年11月 1日(水) ~ 2023年12月25日(月)
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※12月3日(日)・12月10日(日)は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日休館
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
観覧料:無料
関連イベント
「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」展の関連イベントとして、展示空間でダンスパフォーマンスが行われる。
▼振付家/ダンサー 白井剛による展示空間でのパフォーマンス
開催日:12月21日(木)
2回の公演を予定。
① 15:30開始 約20分間
場所:《Gravity and Grace》 の展示空間
② 17:00開始 約20分間
場所:《Liminal Air Space—Time 真空のゆらぎ》 の展示空間
▼振付家/ダンサー 鈴木竜(DaBY)による展示空間でのパフォーマンス
開催日:12月25日(月)
2回の公演を予定
① 15:00開始 約20分間
② 17:00開始 約20分間
場所:① ②とも《Liminal Air Space—Time 真空のゆらぎ》 の展示空間
『ONBEAT vol.18』では大巻伸嗣へのインタビューを掲載!