清川あさみ×名和晃平、初の二人展「Invisible Garden」開催
見えないものたちが息づく、新たな「にわ」へ
文・撮影=藤田博孝(ONBEAT編集部)
私たちが見ている世界は、本当に世界のすべてなのだろうか。
現代美術家の清川あさみ(Asami Kiyokawa)と彫刻家の名和晃平(Kohei Nawa)が、初の二人展「Invisible Garden」を2026年9月16日(水)より東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開催する。会期は11月8日(日)まで。
本展は、清川の新刊『みえないにわ – Invisible Garden』の刊行をきっかけに構想されたものだ。
情報が絶えず流動し、現実と仮想、自然と人工の境界さえ曖昧になりつつある現代。そのなかで二人が立ち上げるのは、滴や胞子、微生物、動植物といった生命の痕跡から、人の記憶や時間、夢、想像力まで、有形無形の存在が息づく風景としての「にわ」である。

Asami Kiyokawa Sep.14 (Detail) 2026 photograph acrylic thread Photo by Nobutada OMOTE
写真や布、書物などに刺繍を施すことから独自の表現を拓き、「見えないものを可視化すること」をテーマに、記憶や神話、自然、そしてAI時代の想像力へと領域を広げてきた清川。
一方、名和は彫刻の「表皮」に着目し、「Cell(細胞・粒)」という概念を機軸に、素材とイメージ、身体と知覚の関係を問い続けてきた。

Asami Kiyokawa Kohei Nawa Metamorphosis Garden (full bloom) (Detail) 2021 mixed media Photo by Nobutada OMOTE
異なる方法によって「見えるもの」の向こう側へと眼差しを向けてきた二人。その表現がひとつの空間で出会うとき、そこにはどのような風景が立ち現れるのだろうか。
本展の中心をなすのが、二人による全幅約9メートルの大型新作《PixCell-Our New World》だ。風景写真や生成AI画像の断片を用いて清川が構成した画面「Our New World」を、名和が透明なセルで覆う。無数のセルを通過することでイメージは分割と統合を繰り返し、その輪郭を揺らめかせながら、新たな風景へと変容していく。

Asami Kiyokawa Kohei Nawa PixCell-Our New World (Detail) 2026 mixed media Photo by Nobutada OMOTE

Asami Kiyokawa Kohei Nawa PixCell-Our New World (Detail) 2026 mixed media approx.1300×9000×85mm Photo by Nobutada OMOTE
さらに会場では、名和の代表的な「PixCell」の近年の展開である「PixCell-Random」や、清川の「Serendipity」などの新作も展示。
それぞれの作品は独立した存在でありながら、白で統一された空間のなかで静かに呼応し、ひとつの有機的な「にわ」を形づくっていく。

Asami Kiyokawa Kohei Nawa PixCell-Random (Detail Series reference) 2026 mixed media Photo by Nobutada OMOTE

Asami Kiyokawa Serendipity (Diverge) 2025 mixed media Photo by Nobutada OMOTE
興味深いのは、この「にわ」が作家によって完成された風景として提示されるのではないことだろう。鑑賞者がその間を歩き、断片的なイメージを自身の記憶や感覚と重ね合わせることで、作品の間に潜む生命の気配を拾い集めていく。その体験を通して、一人ひとりの内側に異なる「みえないにわ」が生まれていく。
さらに会期中は3階ギャラリーだけでなく、1階「POLA GINZA」にも作品を展示。植物や滴をモチーフとしたインスタレーションによって二つの空間が結ばれ、来場者は文字通り「にわ」を散策するように作品世界を巡ることになる。
刺繍によって記憶や物語を紡ぐ清川と、セルによって世界の表皮を変換する名和。
二人の視線が交差する「Invisible Garden」は、普段は意識することのない生命や記憶、時間、そして私たち自身の知覚へと目を向けるための場所となるかもしれない。
銀座の一角に出現する「みえないにわ」。その風景の続きを描くのは、そこを歩く私たち自身である。
プロフィール

清川あさみ
現代美術家/アートディレクター
兵庫県淡路島生まれ。東京を拠点に活動。写真や雑誌、布、書物に刺繍を施す独自の表現を出発点に、「見えないものを可視化すること」をテーマに作品を制作。近年は、記憶・神話・自然・AI 時代の想像力を主題に、平面作品、インスタレーション、公共アート、映像、出版など領域を横断して活動している。代表作に「Our New World」「Dream Time」「Serendipity」シリーズ。
虎ノ門ヒルズ駅の大型パブリックアート《Our New World (Toranomon)》をはじめ、国内外で多数の展覧会を開催。また教育活動にも力を注ぎ、大阪芸術大学で特別講義を行うほか、子どもたちとの創作プロジェクトや地域文化事業にも取り組む。
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』をはじめとした書籍の絵を手がけるほか、著書に『千年後の百人一首』など。2026 年、新刊『みえないにわ – Invisible Garden』刊行予定。

名和晃平
彫刻家/Sandwich Inc.主宰/京都芸術大学教授
1975年生まれ。京都を拠点に活動。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。2009年「Sandwich」を創設。感覚に接続するインターフェイスとして彫刻の「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸に創作を続ける。彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。
近年では、アートパビリオン《洸庭》など、建築のプロジェクトも手がける。2015年以降、ベルギーの振付家 ダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品《VESSEL》《Mist》《Planet [wanderer]》《Mirage》を制作。2018年にフランス・ルーヴル美術館 ピラミッド内にて彫刻作品《Throne》を特別展示。2023年、フランス・セーヌ川のセガン島に屋外彫刻作品《Ether (Equality)》を恒久設置。
近年の個展として、「Sentient」(SCAI THE BATHHOUSE、東京、2025)、「Photon Camp」(Pace Gallery、ロサンゼルス、2026)がある。
清川あさみ|名和晃平「Invisible Garden」
会期:2026 年9 月16 日(水)- 11 月8 日(日) ※会期中無休
開館時間:11:00 – 19:00 (最終入場は18:30 まで) ※11 月6 日(金)~8 日(日)のみ10:00 開館
入場料: 無料
会場:ポーラ ミュージアム アネックス (〒104-0061 中央区銀座 1-7-7 ポーラ銀座ビル3 階)
公式サイト: http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/
※諸事情により内容が変更になる場合がございます。ギャラリーHP で最新の情報をご確認のうえ、ご来場をお願い致します。
主 催: 株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
協 力: ASAMI inc., Sandwich Inc.
■関連企画: 2026年の「アートウィーク東京」に参加いたします。
詳細は、アートウィーク東京の公式サイト https://www.artweektokyo.com/ をご確認ください。