開催10回目を迎え、旧東京高速道路にメイン会場「AUTOBAHN」が出現。
小林健太がキービジュアルを手がけ、4つのエリアで多彩なクリエイションを展開

 

2017年にスタートした国内最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2026」が、10月30日(金)から11月8日(日)まで開催されている。

記念すべき10回目のテーマは「Hibiki」。デザインやアートが人々の感性に響き、異なる価値観や創造性が共鳴することで生まれる、新たな可能性を探る。世界各国のクリエイターが参加し、銀座、東京、日比谷、六本木、外苑前、表参道、原宿、渋谷、代官山、池尻など、都内各所のギャラリーや商業施設を舞台に、アート、建築、インテリア、ファッション、工芸、テクノロジーなど、ジャンルを横断した多彩な展示やイベントが繰り広げられている。

小林健太が表現する「Hibiki」の世界

Photography Ko-ta Shouji

今年のキービジュアルを手がけたのは、写真を起点に多様なメディアを横断する表現活動を展開するアーティスト、小林健太(Kenta Cobayashi)だ。

1992年神奈川県生まれ。東京と湘南を拠点に活動する小林は、自ら撮影した写真の一部を画像編集ソフトによって絵画の筆致のように変容させる「#smudge」シリーズで知られる。写真というメディアが本来持つ記録性や再現性に揺さぶりをかけ、デジタル技術を介してイメージそのものを再構築する独自の表現を追求してきた。

その活動は写真にとどまらず、立体、パフォーマンス、CG、VR、NFT、ファッションなど、多岐にわたる。異なるメディアや技術を自在に往来しながら、写真表現の領域を拡張し続けている。

今回のキービジュアルでは、フェスティバルのテーマ「Hibiki」をイメージソースに、視覚を通じて感覚やイメージが響き合う世界を提示。既存のイメージを変容させ、新たな視覚体験へと導く小林のアプローチは、異なる領域の創造性が交わることで新たな価値を生み出そうとする「DESIGNART TOKYO」の理念とも重なる。Kenta Cobayashi https://www.kentacobayashi.com/

旧東名高速道路が創造の拠点「AUTOBAHN」に

AUTOBAHN-_-KK-Line-1- ©Nacasa-Partners

今年の大きな見どころは、銀座の旧東京高速道路(KK線)に出現したメイン会場「AUTOBAHN(アウトバーン)」だ。

かつて東京の高度経済成長を支えた都市インフラの約4,000㎡を、期間限定の創造と交流の拠点へと転換。数寄屋橋交差点から銀座一丁目に至る、かつて自動車が行き交った道路空間が、デザインとアートの舞台へと生まれ変わった。

AUTOBAHN_KK_Line_KENTA_KOBAYASHI

会場名の「AUTOBAHN」は、速度制限のない区間があるドイツの高速道路に由来する。既存のジャンルや常識にとらわれず、自由な発想によって創造の可能性を広げていこうという思いが込められている。

会場構成を手がけたのは、建築家・津川恵理が率いる建築デザインスタジオ「ALTEMY」。
アスファルトやコンクリートといった都市インフラの記憶を残しながら、「EXHIBITION」「AUTOBAHN – The Design Store」「PARK & CAFÉ」「STAGE」という4つのエリアを有機的に結びつけ、来場者が自由に回遊できる空間を生み出している。
https://www.alt-emy.com

 

 

「AUTOBAHN」でのオープニングセレモニー

10月30日(金)には「AUTOBAHN」でオープニングセレモニーが開催され、DESIGNART TOKYO代表の青木昭夫らが登壇。開催10回目という節目を迎えたフェスティバルの幕開けを告げた。

©Takuya-Yamauchi

 

JEAN-LUC COLONNA D’ISTRIA  ©Takuya Yamauchi

 

AUTOBAHN – The Design Store ― デザインとの出会いを日常へ

「AUTOBAHN – The Design Store」は、パリのコンセプトストア「Merci」の共同創業者、ジャン・リュック・コロナ・ディストリアがキュレーションを手がける期間限定のデザインストアだ。

往年の名作から最新のコレクティブルデザイン、日用品、革新的な新素材を用いたプロダクトまで、独自の審美眼で選ばれたアイテムが並ぶ。

AUTOBAHN-The-Design-Store-2- ©Nacasa-Partners

空間デザインを担当するのは、建築コレクティブ「GROUP」。展示空間とは異なるアプローチから、プロダクトの造形や素材、機能性を体感できる場を創出している。

ここで提案されるのは、単にデザイン性の高いものを購入するという行為だけではない。つくり手の思想や素材の背景にある物語を知り、自らの暮らしに取り入れることで、デザインと日常生活との関係を見つめ直す機会にもなる。

EXHIBITION ― 世界のクリエイションが交差する展示空間

「EXHIBITION」エリアには、国内外から約65組のクリエイターやブランドが集結。ミラノデザインウィークやコペンハーゲンの「3daysofdesign」で発表された作品の日本初公開や、最新コレクション、新作プロトタイプなどが展示されている。

家具や照明、工芸、先端技術を用いたインスタレーションなど、展示内容は多岐にわたる。素材や技術への新たなアプローチを通して、機能性と美しさの関係、伝統と革新の融合、さらには環境や社会とデザインの関わりについて考える機会を提供している。

RANGE-ROVER-SV-ULTRA-x-Klein-Dytham-architecture-Design-Installation-Hibiki-©Nacasa-Partners

なかでも注目されるのが、英国のラグジュアリーSUVブランド「RANGE ROVER(レンジローバー)」の最上級モデル「RANGE ROVER SV ULTRA」だ。

10月30日(金)に開催されたオープニングセレモニーでは、DESIGNART TOKYO代表の青木昭夫らが登壇し、開催10回目という節目を迎えたフェスティバルの幕開けを告げるとともに、同モデルが日本初披露された。

会場では、建築設計事務所「Klein Dytham architecture(クライン ダイサム アーキテクツ)」とのコラボレーションによるデザイン・インスタレーション「響き」として展示されている。今回のテーマ「Hibiki」に呼応し、日本の風鈴から着想を得た空間演出によって、車両の造形美と周囲の環境との関係性を表現している。

かつて自動車が走行していた高速道路の跡地に、最先端の自動車デザインが展示されるという構図も興味深い。都市の過去と未来が交差する「AUTOBAHN」ならではの光景といえるだろう。

黒田卓也のライブが彩ったオープニングパーティ

10月30日(金)の夜には、開催10回目を記念したオープニングパーティが開催された。

会場にはデザイン、アート、建築などの分野で活動するクリエイターや関係者が集い、ジャンルを超えた交流が繰り広げられた。

©Takuya-Yamauchi-

パーティを彩ったのは、ニューヨークを拠点に国際的に活躍するジャズトランペッター、黒田卓也(Takuya Kuroda)によるスペシャルミニライブ。ジャズを基盤としながら、ファンクやヒップホップ、アフロビートなど多様な音楽的要素を融合させてきた黒田の演奏は、異なる文化や表現が響き合う今回のテーマとも重なる。

デザインとアートの展示空間に音楽が加わることで、「AUTOBAHN」は作品を鑑賞する場所から、人々が感性を共有し、創造的な交流を育む場へと広がりを見せた。

Takuya-Kuroda-©Takuya-Yamauchi-

PARK & CAFÉ ― 人々が集い、交流する憩いの場

「PARK & CAFÉ」は、展示を巡る来場者が飲食を楽しみながらくつろぎ、自由に交流できるエリアだ。

アートやデザインのイベントにおいて、作品を鑑賞することと同様に重要なのが、そこで生まれる人々の出会いや対話だろう。来場者同士が感想を語り合い、クリエイターと交流することで、新たなアイデアや創造的なつながりが生まれる可能性が広がる。

かつて車が行き交っていた道路空間に、人々が思い思いに時間を過ごす場所が生まれたことも、今回の「AUTOBAHN」を象徴する試みのひとつといえる。

©Takuya-Yamauchi-

 

STAGE ― 第一線のクリエイターが語る、デザインとアートの未来

「STAGE」エリアでは、10月31日(土)から11月3日(火・祝)まで、デザイン・アート業界のトップランナーたちによるトークセッションが連日開催されている。

10月31日(土)には、クリエイティブディレクターの川上シュン、DESIGNART TOKYO代表の青木昭夫、ラジオパーソナリティのクリス智子によるトークを皮切りに、建築家の津川恵理とキービジュアルを手がけた小林健太、さらにジャン・リュック・コロナ・ディストリアと横川正紀が登壇した。

翌11月1日(日)には、アートユニット「A.A. MURAKAMI」とデザインジャーナリストの土田貴宏による対談のほか、柴田文江、パトリック・ノルゲ、永山祐子によるトークが行われた。

そして、11月2日(月)15:00〜16:00には、クリエイティブディレクターの齋藤精一、武田悠太、青木昭夫が登壇。最終日の11月3日(火・祝)13:00〜14:00には、出村光世と池田爽によるトークが予定されている。

また、ステージでは、クリエイティブカンパニー「Konel」と「X Vision」が共同開発する透過型LEDビジョンシステムを用いた新作インスタレーションも披露されている。

10月31日(土)の夜には、建築家やデザイナー、アーティストなどが短いプレゼンテーションを通してアイデアを共有するイベント「PechaKucha Night vol.200!」も開催された。

展示を見るだけでなく、つくり手自身の言葉に耳を傾け、そこから新たな視点を得られることも、今回のフェスティバルの魅力のひとつだ。

都市の日常に、新たな創造の風景を

デザインやアートを美術館やギャラリーの内部だけにとどめず、都市のさまざまな場所へと開いていく「DESIGNART TOKYO」。とりわけ今年の「AUTOBAHN」は、かつて都市の交通を担っていた場所を、文化と交流のための空間へと転換することで、都市の新たな可能性を提示している。

「EXHIBITION」で世界のクリエイションに触れ、「AUTOBAHN – The Design Store」でデザインを暮らしへとつなぎ、「PARK & CAFÉ」で人々が交流し、「STAGE」で創造の最前線に立つ人々の言葉に耳を傾ける。4つのエリアがそれぞれ異なる役割を担いながら、ひとつの文化的な体験を形づくっている。

写真をデジタル技術によって変容させる小林健太の表現、既存の都市インフラを創造の舞台へと転換する「AUTOBAHN」、そして音楽や対話を通して異なる領域のクリエイターが交流するプログラム。そこには、既存の枠組みを超えて新たな価値を生み出そうとする、共通の姿勢が見て取れる。

10年という節目を迎えた「DESIGNART TOKYO 2026」。東京の街を歩きながら、作品と出会い、クリエイターの言葉に耳を傾け、さまざまな表現が響き合う瞬間を体感してみてはいかがだろうか。

DESIGNART TOKYO 2026

会期:2026年10月30日(金)~11月8日(日)
開催エリア:銀座、東京、六本木、外苑前、表参道、原宿、代官山、池尻
メイン会場:AUTOBAHN / KK線(旧東京高速道路)数寄屋橋交差点~銀座1丁目
メイン会場会期:10月30日(金)~11月3日(火・祝)
メイン会場開場時間:10:00~19:00(初日12:00~、最終日17:00まで)
公式サイト:https://www.designart.jp/designarttokyo2026/

 

 

 

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