146年の時を超え、琴平に響く新たな脈動。アートが紡ぐ「関係人口」の未来
関係人口型アートフェス『琴平山博覧会』
文、写真=ONBEAT編集部(一部オフィシャルサイト等参照)
「一生に一度は、こんぴらさん」。多くの日本人が憧れたその門前町が今、146年の時を経て、新たな文化の交差点になろうとしている。2025年9月、香川県琴平町で開幕する『琴平山博覧会』。 これは単なるアートの祭典ではありません。土地の記憶という「ルーツ」を深く掘り下げ、アートを触媒に人と町の新たな関係性を創造する、未来に向けた壮大な社会実験です。人口減少という現代日本の課題に対し、彼らが鳴らそうとしている脈動とは何なのでしょうか。
琴平山博覧会実行委員会(琴平町)は、町の象徴であり国の重要文化財である金刀比羅宮をはじめ町内各所を舞台に、関係人口型アートフェス『琴平山(ことひらやま)博覧会』を2025年9月1 日(月)から12月25 日(木)まで開催します。町に新たな“関わりしろ”を生み出し、人びとが当事者として関わり続けられる仕組みを用意するのが最大の特徴です。なお、本博覧会は1873 年(明治6 年)に初回、1879年(明治12 年)に第二回が催され、今回が146年ぶりの開催となります。

書家 紫舟(説明会にて)/写真:ONBEAT編集部
■ 琴平山博覧会の原点
“こんぴらさん”の愛称で親しまれる金刀比羅宮の門前町・琴平町は、「一生に一度は、こんぴらさん」と庶民憧れの地として多くの参拝者を迎えてきました。明治期に催された琴平山博覧会では、美術・工芸品に加え、蒸気機関による精米機や製糸機などの先端技術が披露され、作家・発明家・技術者らが集結。全国から訪れた人々が歴史・文化に加え“文明”を目の当たりにし、大きな賑わいを生み出しました。このように「多様な人々が集い、新たな“関わりしろ”を生み出す場」こそが、琴平町の活気の原点だと私たちは考えています。

写真芸術家 林育良 Makoto Lin(説明会にて)/オフィシャルより引用
■ 146年ぶりの復刻へ
こうした活動をさらに発展させるべく、地元事業者有志が集まり実行委員会を組成。アーティストやクリエイターと共に、かつて町に大きな活気をもたらした「琴平山博覧会」を146 年ぶりに復刻することとなりました。金刀比羅宮をはじめ、町内各所でのアート展示や演劇・音楽ライブなどを展開。来訪者は観客として楽しむだけでなく、クラウドファンディングや運営ボランティアを通して参画できる“関わりしろ”を数多く用意します。さらにNFT を活用したデジタルチケットで、来町後もオンラインを通じて町とつながり続けられる仕組みも導入します。

書道詩人 何景窗 Ching Chwang Ho(説明会より)/オフィシャルより引用
■ 未来への願い
琴平山博覧会は、単なるイベントではありません。地域住民や来訪者、企業や自治体が互いに“関わりしろ”を見出し、当事者として参画することで、新たな関係人口を生み出していく取り組みです。この「人と人とのつながりを起点にしたまちづくり」の姿勢は、人口流出や担い手不足など、全国の地域が直面している共通課題に対するひとつの解決モデルとなり得ます。私たちは本博覧会を通じて、琴平を「一生に一度ではなく、何度も訪れたくなる町」へと進化させるとともに、全国の地域に希望を届ける先進事例となることを願っています。

イラストレーター Viga(説明会にて)/写真:ONBEAT編集部
ONBEATが注目するポイント
■伝統の再解釈が生む、革新的な表現
本博覧会の最大の魅力は、日本の伝統文化を現代の視点で再解釈し、新たな価値を提示しようとするアーティストたちの挑戦にあります。
■アートが創り出す「祭り」と「関わりしろ」
本博覧会は、鑑賞するだけの一方的なイベントではありません。来訪者一人ひとりが「当事者」として関わるための「関わりしろ」という仕組みが、町の未来を創るリズムそのものです。
『琴平山博覧会』は、明治期に多様な人々を集め、新たな文明の息吹を伝えた精神を受け継ぎ、 アート、テクノロジー、そして「人とのつながり」を駆使して、現代の課題に立ち向かおうとしています。これは、琴平という一地方の物語ではありません。日本の多くの地域が未来を模索する中で、文化芸術がいかにして希望の光となりうるかを示す、重要なケーススタディとなるでしょう。ONBEATは、この新たな“脈動”が、日本、そして世界にどのような革新的な表現と豊かな関係性を生み出していくのか、その行方を見届け、世界に紹介していきたいと思っています。
開催概要
琴平山博覧会
会期: 2025 年9 月1 日(月)〜12 月25 日(木)
プレヒート期間:2025 年9 月1 日(月)~10 月3 日(金)
会場: 金刀比羅宮 表書院(紫舟展示)、高橋由一館(宮脇慎太郎展示)、ほか町内各所
入場料: 無料/一部有料エリア設定
主催: 琴平山博覧会実行委員会
協力: 金刀比羅宮、こんぴら観光まちづくり協会、ほか各社・団体
後援: 琴平町 予定 、琴平町商工会、香川大学、せとうち観光推進機構、ほか各社・団体
URL: https://www.kotohira.art/
総合受付: Kotori Coworking & Hostel KOTOHIRA KOTOHIRA(香川県仲多度郡琴平町720 1515)
リアル展示の見どころ:所縁ある“関係人口”アーティストが共鳴
メイン会場のひとつとなる金刀比羅宮では、四国中央市出身で世界的に高い評価を受ける書家・紫舟が作品を発表。かつて門前町の魅力を物語化した町おこしプロジェクト「こんぴら十帖」の題字を揮毫した同氏が、江戸期の艶絵文化である“春画”を現代的に再解釈し、神域での展示という異色の挑戦に臨みます。伝統と革新が交わることで、文化・宗教・芸術が融合する新たな作品を提示します。 また、琴平は台湾・九份と友好都市関係を結んでおり、その縁から台湾を代表するアーティストたちが参加。書道詩人と写真家によるユニット・何景窗(ホー・チンチュアン)× 林育良(マコト・リン)らが来訪し、琴平の町中を展示空間としたインスタレーションを展開し、文化交流の輪を広げます。 更に、昨年度の金刀比羅宮公式カメラマンを務めた宮脇慎太郎は、1年抱えて撮影した金刀比羅宮の写真や町の風景・人々を写した作品を通じて琴平の魅力を未来へ伝えます。 参加アーティストはいずれも「琴平町に所縁を持つ人々」であり、まさに濃密な関係人口として本博覧会に参画します。