「未来都市シブヤ エフェメラを誘発する装置」が
ジャイルギャラリーにて開催中

文=ONBEAT編集部、写真・動画=藤田紘那

2024年10月17日(木)~11月29日(金)まで、東京・GYRE GALLERYにて「未来都市シブヤ_エフェメラを誘発する装置」が開催されている。
企画はスクールデレック芸術社会学研究所所長の飯田高誉。また、特別協力に建築キュレーターの太田佳代子を迎えている。

「エフェメラ」とは本来、挨拶状やチラシといった役目を終えると捨てられる短命の印刷物のことで、これを空間の文脈で語るとすれば、例えば短期間仮説される装置やインスタレーションなどもエフェメラであると言える。つまり、このような空間的なエフェメラの存在は、都市が社会的多様性・寛容性を育むための空間を確保しているということをも意味するのだ。

70年代ごろの渋谷は、自発的な文化が自由に表現されていた街であり、文化的な余白や自由といったエフェメラが存在していた。この渋谷らしさが今、国家的な経済政策として打ち出された大規模再開発の規制緩和によって実施されている「百年に一度」とも言われる大規模再開発によって、消え去ろうとしている。

こうした都市開発の在り方や、それに対する意思表示に消極的なクリエイターや一般の人々に疑問を呈し、改めてみんなで街の自由を勝ち取っていくためにはどうすべきかを考えていく重要性を訴える展覧会となっている。

▼本展を企画した飯田高誉による解説

多様な年代の6名のアーティスト + KNOW NUKES TOKYO

今回の展覧会の参加アーティストは、操上和美、山口はるみ、畠山直哉、風間サチコ、石川直樹、友沢こたおの6名。年代は違えど共通するのは、失われつつある混沌や闇こそに美しさや欠かせない都市機能を見出す眼差しだ。

石川光陽《渋谷道玄坂の焼け跡》

操上和美《ロンサム・デイ・ブルース》(2016)

操上和美《ロンサム・デイ・ブルース》(2016)

 

▼操上和美の作品について解説をする飯田高誉

山口はるみ《ビー玉の女》(1982)

畠山直哉《アンダーグラウンド》(1999/2001)

風間サチコ《人外交差点》(2013)

石川直樹《STREETS ARE MINE》(2022)

友沢こたお《slime CCVI》(2024)

友沢こたお《slime CXXXV》《slime CXXXI》《slime CXXI》(すべて2022)

 

▼自身の作品について解説をする友沢こたお

 

<アーティストプロフィール>
操上和美
1936年北海道生まれ。1961年東京綜合写真専門学校卒業。1965年からフリーランスの写真家として活動開始。ファッション、広告の分野を中心に、CMフィルムも数多く手掛け、映像表現の世界でもっとも幅広い活動を展開し今に至る。

山口はるみ
松江市生まれ。東京藝術大学油画科卒業。西武百貨店宣伝部デザインルームを経て、フリーランスのイラストレーターとしてPARCOの広告制作に参加。1972年よりエアブラシを用いた女性像を描き、一躍時代を象徴するアーティストとなる。

畠山直哉
1958年岩手県生まれ。1984年筑波大学大学院芸術研究科修士課程修了。その後株式会社SPN(西武セゾングループインハウス広告代理店)に入社、映像制作業務を開始。ヨーゼフ・ボイスの来日記録映像制作デレクターに任命され、その成果《Joseph Beuys in Japan》が世界各地で公開された。現在、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻教授。

風間サチコ
1972年生まれ。1996年武蔵野美術学園版画研究科修了。現在起きている現象の根源を過去に探り、未来に垂れ込む暗雲を予兆させる黒い木版画を中心に制作している。彫刻刀によるシャープな描線、黒一色のみながら濃淡を駆使する多彩な表現、様々なモチーフが盛り込まれた漫画風でナンセンスな画面などが特徴で、際どいテーマを巧みに表現している。

石川直樹
1977年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まで、あらゆる場所を旅しながら作品を発表し続けている。

友沢こたお
1999年フランス生まれ。スライム状の物質と有機的なモチーフが絡み合う独特な人物画を描く。シンプルな構成ながら、物質の質感や透け感、柔らかさのリアルな表現が見る者に強い印象を与える。

<KNOW NUKES TOKYO>
今回6名のアーティストによる作品に加えて展示されているのは、核兵器のない世界に向けて自らの役割を模索することを議論する次世代団体「KNOW NUKES TOKYO」による《KNOW NUKES》。ARやVRが体験できるアプリ「STYLY」を立ち上げたスマートフォンを渋谷駅前のスクランブル交差点からビル群に向けてかざすと、原爆投下によるきのこ雲が画面を通じて間近な空に広がっていくというものだ。
被爆の記憶を覚えておくにはあまりにも忙しなく過ぎていく日常の中で、ショート動画を好み大量のデジタル情報が消費されていることに着目し、限られたリソースの中で試行錯誤を重ねた末にたどり着いた作品だという。

KNOW NUKES TOKYO《KNOW NUKES》 制作:中村涼香(KNOW NUKES TOKYO)/金達也 協力・監修:東京大学情報学環渡邊英徳、長崎大学核兵器廃絶研究センター鈴木達治郎 ARプラットフォーム提供:株式会社STYLY

開催概要

会期:2024年10月17日(木)~11月29日(金)
企画:飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所 所長)
協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社・有限会社キャメル・高橋龍太郎コレクション・ナンヅカ・株式会社パルコ・無人島プロダクション・株式会社サニーズ・KNOW NUKES TOKYO+金達也・渡邊英徳教授(東京大学大学院)・鈴木達治郎教授(長崎大学)・株式会社STYLY
展示資料協力:石川令子
特別協力:太田佳代子(建築キュレーター)