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絹谷幸二

《日月春春湖上富士》 2018年 ミクストメディア 130.3×162.0cm

若くして頭角を現した絹谷幸二は、長きにわたり日本画壇を牽引し続けてきた。一昨年は京都国立近代美術館で大規模な個展を開催、昨年は日中平和友好条約締結40 周年を記念した個展を北京の清華大学芸術博物館で開催するなど、近年ますます活動の幅を広げている。本特集では絹谷幸二の秀作を、画壇からの信頼も厚い土方明司氏と画家本人との対談とともに紹介する。

絹谷幸二×土方明司 特別対談

土方明司(以降「土方」):絹谷先生は、ご自身の天空美術館のほか、京都国立近代美術館や北京清華大学での個展、髙島屋での展覧会、北海道立近代美術館での展覧会など、本当に目覚ましい活躍をなさっていますが、先生の次から次へと新しいものを生み出していく創造力は、いったいどこから生まれるのでしょうか。

絹谷幸二(以降「絹谷」):やはり、私が生まれ育った奈良という街が関係しているように思います。奈良という古い都にいらっしゃる仏様たちの教えを自分なりに咀嚼して考えることは、私の創造の糧であると言えます。また、私は歴史というものは輪廻・循環しているように思うのですが、そうした「時の循環」について思いを馳せることも私の創造力の一助となっています。例えば私のライフワークの一つであるフレスコ画ですが、大変古い画法でありながら、現代にこそ必要なヒントが隠されていると思います。フレスコ画の原料である石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とし、その中に地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を抱え持っています。地球造山活動の頃に生まれた石灰岩が、何十億年も隔てた現代の地球環境問題を指し示し、また私たち人類に生存を保障しているのです。古くからの画法でフレスコ画を描くにしても、ただ漫然と絵を描くのではなく、石灰岩という画期的な物質とともに人類は生かされていること、呼吸していることに感謝しながら、私は絵を描かなければならないと思います。また、私が描いている赤富士にも実は大きな意味があります。そもそも富士山がなぜ赤く見えるかというと、山の中に存在する砂鉄が太陽に輝いて赤く見えるからなのですが、この砂鉄が野山でフルボ酸鉄と合体して、最後には海に流れていく。これをプランクトンが食べ、エビやカニが食べ、それを魚が食べて、最後は人間が食べる。富士山の鉄分が最終的に私たちの血の中に入るという命の循環がそこにはあるのです。つまり、ふるさとの自然と、そこに暮らす私たちは不可分な存在であるということになります。そういった事実一つひとつと向き合いながら、私たちが生かされている現代社会において、どのように人類は進んだらいいのだろうかという問題に思いを馳せ、絵を描いていこうと思っています。

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《絹谷幸二・香菜子》 生命輝く 2017年 194.0×259.0cm