ONBEAT

  • Facebook
  • RSS

濱野年宏

《Work 2000 ユニティ》 2000年 和紙にアクリル、金泥 60.0×80.0cm 個人蔵

2017 年にフランス政府よりフランス芸術勲章オフィシエを授与されるなど、各国から受章の栄に浴する芸術家・濱野年宏。地元・香川県を拠点に世界を舞台に芸術活動を展開する濱野は、同時にアートを通じた国際交流活動も35 年余にわたり継続してきた。同じく、国際交流をアートの面から推進している多摩美術大学学長・建畠晢と作家の対談がこの春実現。その模様を濱野年宏の作品とともに紹介する。

 

濱野年宏×建畠 晢 特別対談

藤田博孝(以降「藤田」):本日は地元・香川県を拠点に芸術家として長年国際交流活動に尽力されている濱野年宏先生と多摩美術大学学長の建畠晢先生にお話を伺います。まず、濱野先生からお伺いします。活動拠点を地元に置かれているのはなぜでしょうか。

濱野年宏(以降「濱野」):私が香川県で活動をしているのは、文化とは本来「地方的」なものであるべきで、それを掘り起こしていくことが重要だと考えているからです。その考えに基づき、地方でも定期的に展覧会を開催し、著名な作家や批評家を講演に招いてきました。結果として、地方における文化や全体の層の底上げだけでなく、自分自身を磨くことにつながったと思っています。私は長い間、東洋と西洋、伝統と現代、具象と抽象といった二律相反した原理を包摂する精神と美の探求を続けてきました。その過程で日本の伝統的な精神と美の根底には、「慈しみの心」があることを確信しました。慈しみの世界観に裏打ちされた究極の美を探求することは、私にとって終わりのない挑戦だと思っています。

藤田:濱野先生はまた国際文化交流活動に長年携わってこられましたね。

濱野:最初に開催した大規模な国外展は、現在のスロベニアのリュブリャーナ近代美術館での展覧会で、紛争前の1984 年に開催しました。まだユーゴスラビアという国があった時代のことです。ユーゴスラビアでその後、悲劇が起こったことはご承知の通りです。多様な民族、言語、宗教、文化が入り混じった「モザイク国家」ユーゴスラビアならではの悲劇でした。と申しますのも、国家というものは民族、言語、法などを重視して人々の心を内側へと向かわせるものだからです。しかし、これからは国家や国境という壁を取り払い、人と人とが心を通わせ、人類が共有する美意識を互いに認め合うことによって、それまで内側に向かっていたエネルギーを解放させることを目的とすべきでしょう。グローバルな視点による交流こそが求められているのだと思います。旧ユーゴスラビアから始まった活動は、グローバルに展開し、35 年が過ぎようとしています。その間、多くのアーティストの方々や文化機関などと相互理解を深め、交流を持つことができました。

藤田:教育の現場に立たれている建畠先生は、世界に向けて日本はどのように芸術や文化発信をしていくべきだと思われますか。

建畠 晢(以降「建畠」):私が感じるのは、日本の文化はガラパゴス化していっているのではという懸念です。美術館なり美術大学なりで接するたびに、日本の若者の海外動向に対する無関心さに驚きます。自分たちのカルチャーの中に閉じこもったままで、世界で何が起きているのか興味を抱かない。国際交流をして日本の文化を発信するためには、まずこの自閉的な状況を何とかする必要があります。また国際交流をする上で最も重要なことは何かというと、ダイバーシティ、すなわち多様性を認めることです。自分と異なる人やもの、文化、価値基準が存在するということに対して興味を持ち、寛容になり、愛する。濱野先生が先ほど触れられた「慈しみの心」がまさに必要なのだと思います。教育者という立場から申し上げますと、若者には異文化をぜひ肌で体験してほしいと思っています。そのために海外の提携校を積極的に増やしていますし、ダブルディグリー(日本と外国の大学が教育課程の実施や単位互換等について協議し、双方の大学がそれぞれ学位を授与するプログラム)などといったシステムを整備してより多くの学生を海外へ派遣したいと思っています。若者たちをいかに海外へ出していく機運を醸成することができるかということが、私に課せられた使命なのではないかと思っています。また、本来は国内の優れた才能を我々自身で発見していかなければならないのですが、実際のところ傑出するアーティストの多くが、海外で評価された後に初めて日本で認められるという経過をたどっていることも事実としてあります。日本の一種の外国崇拝思想といったことが影響しているのだと思うのですが(笑)。ですから、学生に限らずアーティストは、外国での評価を得るために、どんどん外へ行くべきだと思います。

続きは、こちら

《紅白梅図II―その秘儀》 2018年 金屏風に油彩、アクリル 各180.5×200.0cm