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保科豊巳

保科豊巳インタビュー

ここはそこ、そこはここ―天空に昇る滝を見るための階段―

「芸術文化における“グローバリティ”は“ローカリティ”と表裏一体であり、世界や地域の差異を認めることが芸術のグローバルな在り方だと思う」と語られていますね。

19 8 5 年にアテネのスキロニオ美術館で開催された第3 回国際彫刻ビエンナーレ展に出展した際、石とオリーブの国であるギリシャの地で、僕は日本での制作と同じように木と紙と墨を使って作品をつくりました。すると普段つくってきたものとは異なる、どうしても違和感の残る作品ができてしまった。その理由を考えたところ、僕の作品は「日本の風土と日本の生活の中から発想して生まれたのであり、環境と共在してはじめて成立する作品なのだということに気が付きました。僕はグローバ
ルに活躍できるアーティストを目指していましたが、僕がつくり上げる作品は、ローカルな素材を使う、ローカルな資質を持った作品だったということに思い至ったのです。おもしろいことに、そのローカルな資質を持った作品を、欧米人は個性のある作品だと捉えてくれる。自分たちに無いものを持っている作家だと解釈されるのです。結局、欧米と同じことをやっていてもグローバルになれるわけではなくて、「違いを持つ」ことがグローバル性という意味において成功する秘訣になるのではと考えるようになりました。元々、グローバルという言葉は経済用語です。その言葉が指し示すように、グローバル化した現在の都市に住む人々は経済の渦の中に巻き込まれ、四六時中仕事と情報に追われ、生命や自然を感じることの少ない暮らしを余儀なくされています。したがって、都市で得ることのできない生命感とローカリティに富んだ芸術を都市に「移植」し、共存させていくことが非常に重要だと思っています。地方に継承されている伝統的なものごとも、僕が見ると現代美術のように見えます。新しい芸術を生み出すヒントは、そうしたグローバル社会から取り残されたものの中に潜んでいるのではないかと思います。

総合プロデューサーを務める「天空の芸術祭2 017」のコンセプト“ Life is Art ” についてご説明いただけますでしょうか。

僕は芸術というものは、日常的な生活から生まれることが大切だと思っています。作品が強いリアリティを持った作品になるか否かは、作品が生活と密接に結びついているか否かに左右されます。リアリティが欠如していて思考だけに頼った作品は、力強い作品になり得ませんし、その創作活動は長続きしません。強いリアリティを持った作品をつくり上げるためには、まず自分の体に染み込んだ特質を見定めなくてはならない。自分がどのような環境に生きているのかということをしっかり自覚し、自分の作品と生活とを密接に結びつけていくことが必要なのです。今回の企画においては、その土地にある資源を材料に使い、そこで生活している人たちとコミュニケーションを取る。そうした土地や生活に根差したものを大事にすること、すなわち「生活」に近づくことにしたのです。だから“ L i f e i s A r t ”なのです。
また、芸術には現代性が問われます。現代性といった観点からも、歴史や地域性は非常に重要です。現代に生きる我々は、現代という枠組みの中でだけ生きているのではありません。自分の家族のD N Aであるとか、自分が生まれ育った土地に代々伝承されてきた土着性など、歴史的な文脈があって、その上に現代があるのです。したがって現代について考察することは、歴史や地域性を顧みることでもあるのです。

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ここはそこ、そこはここ―東洋精工松本工場跡地―